24時間往診体制の確保の在り方、医師と薬剤師の同行訪問に関する医療機関側の診療報酬上の評価の新設の検討。地域医療情報連携NWに参画する訪問看護STの評価を新設へ
令和7年11月12日、第626回中央社会保険医療協議会 総会が開催され、在宅医療に関る議論が行われている。主に、24時間往診体制に関すること、精神科及び小児領域といった訪問看護の専門領域・各論に関する議論となっている。
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24時間往診体制の確保、在宅療養後方支援病院とDXを活用して連携推進を
積極的に在宅医療を行う医療機関とされる在宅療養支援病院・診療所においては、単独もしくは近隣の複数医療機関と連携して24時間往診体制を確保することが求められ、実践されている。しかし、今回の議論で取り上げられたのは、24時間連絡体制のために利用しているコールセンターに登録している医師とその場で非常勤医師として雇用契約を結び、往診が行われているケースがあるということ。
24時間往診体制の確保に当たっては、往診担当医及び担当日等を文書により患家に提供することがルールといなっていることから、今回のケースをどのように扱っていくべきか今後検討されることとなるが、こうした対応を全く否定するものではない。重要なことは、患家に理解と納得を得ることが大事である点だろう。あらかじめ、提携する企業名を提供することなどが考えられると共に、提携する企業に対しても何らかの認定制度や当該医療機関の医師と同じ領域の診療以外のことはできないようにするなどの制限を設けることなども必要になってくるだろう。
また、在宅療養後方支援病院と共同して実施する訪問診療・往診についても議論されている。在宅療養後方支援病院とは、200床以上で在宅医療を行う医療機関をバックアップする機能を有する病院だ。昨今の病床削減の影響もあり、やや減少傾向にあり、地域によっては存在しないこともある。
そのためか、共同で実施する訪問診療・往診の実績(在宅患者共同診療料)はあまり多くない。
そこで今回議論されたのが、遠隔連携診療料であるD to P with Dにおいて、在宅患者共同診療料の方式でも算定可能とする考え方だ。現行では、指定難病とてんかんのみが対象となっているところ。前回の中医協でもこのD to P with Dについては、対象疾患の拡大など期待される議論もあったが、更なる拡充が期待される。
参照:療養・就労両立支援指導料の対象を拡充へ。オンライン診療を適正に推進するための見直し、そして短期滞在手術等基本料3の対象となっている手術等を入院で実施した場合の評価の引き下げを検討へ
さらに、薬剤師が医師に同行する場合の評価についても期待される議論が行われている。薬剤師が医師の訪問に同行した場合、同行していない場合に比べ、特に「患者の状況に合わせた処方提案」、「薬物治療に関する助言」の薬学的管理がより多く実施されているといったデータが示され、充実した薬剤管理につながる期待がある。
現行では、薬局において「在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料」があるものの、医療機関側には該当する評価は無い。そこで、医療機関側にも評価を新設し、在宅における適正処方・服薬管理を推進していくこととなりそうだ。
そのほか、在宅療養指導管理材料加算の算定ルール(2か月に2回とか3か月に3回など)がバラバラになっていることから統一すること(3か月に3回?)、在宅療養を行っている患者が使用する衛生材料及び保険医療材料の提供に関して、医師からの指示を受けた企業等からの患者宅への直送することに関するルールの明確化についても今後検討される。
精神科訪問看護、小児訪問看護等の在り方の検討。訪問看護STも地域医療情報連携NWの加算を
精神障害者の地域移行も進み始めていることやそもそもの精神疾患患者の増加もあり、精神科訪問看護の需要と提供も増えてきている。とりわけ期待されるのが、精神科重症患者支援管理連携加算の利用者数が実績要件の対象となっている機能強化型訪問看護管理療養費3だ。
しかしながら。精神科重症患者支援管理連携加算とは、医療機関が精神科在宅患者支援管理料を算定した場合のみとなっており、そもそもの対象となる患者が少ない。
また、医療的なケアが必要なった場合に対応が困難となり、日ごろから積極的に連携をしていくことが必要だ。
こうした状況から、機能強化型訪問看護管理療養費3の要件を見直す方向性は固まったようにもみえる。まずは、実績要件の対象の見直し(緩和)、そして他の機能強化型訪問看護との連携や一般内科等との平時からの連携などを要件に組込むことなど考えられそうだ。
この連携については、地域医療情報連携NWに訪問看護STも積極的に参加・利活用している状況があるにも関わらず、評価の対象になっていないことが指摘されており、加算の対象となる可能性が高いだろう。
精神科と同様に、近年訪問看護でも増加傾向にあるのが小児領域だ。医療技術の進歩に伴い、医療的ケア児は多く、在宅等での対応が増えている。今回の議論では、妊産婦及び乳幼児の利用者への質の高い訪問看護の推進について主に議論が求められている。具体的には、育児支援を主な目的とした訪問看護は診療報酬の対象とならないことを明確化する一方で、傷病を原因として在宅で療養する妊産婦や乳幼児の利用者本人の訪問看護を行う場合に、その一環として、本人へのケアと併せて、子の育児の支援や、母の育児指導等を行う場合に、こうした時間が訪問看護の提供時間に含まれることを明確化することについて、今後議論されていくことなる。
その他、今回の中医協で訪問間に関して論点として挙げられたものは以下の通り。
(難治性皮膚疾患を持つ利用者への訪問看護について)
○ 訪問看護師による手厚いケアのニーズがある重症な難治性皮膚疾患の利用者の状況を踏まえ、在宅難治性皮膚疾患処置指導管理を別表第8に追加することについてどう考えるか。
(訪問看護指示書の交付に係る取り扱いについて)
○ 訪問看護指示書の交付に係る郵送代について、訪問看護指示書を交付する保険医療機関が負担することを明確化することについてどう考えるか。
(訪問看護に係る安全管理体制について)
○ 訪問看護において事故やインシデントが一定発生していることや保険医療機関では医療安全に関する研修の受講が義務づけられていることから、訪問看護ステーションの従事者が医療安全に係る研修を受講することについてどう考えるか。
(訪問看護の記録等について)
○ より質の高い訪問看護の提供の実現に向け、指定訪問看護において求められている記録等に、実施した看護に係る看護過程の評価と当該評価に基づくアセスメントや、実際の訪問開始時刻と終了時刻を記載すること等を明確化することについてどう考えるか。
(過疎地域等の訪問看護について)
○ 特別地域訪問看護加算について、移動時間のみによる評価となっているが、移動及び訪問看護の提供の合計にかかる時間が極めて長い場合も含めて評価することについてどう考えるか。










