療養・就労両立支援指導料の対象を拡充へ。オンライン診療を適正に推進するための見直し、そして短期滞在手術等基本料3の対象となっている手術等を入院で実施した場合の評価の引き下げを検討へ
令和7年11月7日、第625回中央社会保険医療協議会 総会が開催されている。今回は、療養就労の両立支援・オンライン診療・入院食事療養費等・短期滞在手術等基本料についての議論となっている。
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医療政策ニュースのつぶやき
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療養・就労両立支援指導料、対象となる患者の拡大へ
令和7年度通常国会で成立した「労働施策総合推進法」の見直しに伴い、職場における治療と就業の両立を促進するため必要な措置を講じる努力義務を課すこととなり「治療と就業の両立支援指針」を新たに策定することとなった。そこで、料料・就労両立支援指導料もさらなる活用を促進する意味で見直しが図られることになったとえいる。
参照:治療と就業の両立支援ガイドラインを指針に格上げ。令和8年度診療報酬改定で、療養・就労両立支援指導料やかかりつけ医機能に関する評価にも注目を
療養・就労両立支援指導料の算定実績については、年々増加はしているものの、相対的に診ると低調の域を脱していない。そこで、その原因を探り、活用を促す必要がある。
ポイントは2つ。まず、対象疾患が限られていることに原因があるのではないか、ということだ。対象疾患以外でもうつなどの精神疾患を併存しているケースも有り、両立支援に関わるケースも多いことがわかっている。そうしたことから、精神疾患等も対象疾患に含めていくことなど考えられそうだ。
2つ目のポイントしては、2回目以降指導については、算定上限について。上限である3月以上の期間に渡って指導が継続されている実態があることから、算定上限を見直すこととなりそうだ。
医療機関においても人手不足は課題だが、それは他の業界においても同じだ。業界を超えて、社会問題としての人手不足を解消するための取組が重要だと言える。
オンライン診療を適正に推進していくための見直し。注目は、D to P with Dの拡充にあり?
外来医療に関する令和8年度診療報酬改定の5つのポイントの一つにも挙げられていたオンライン診療の適正な推進について議論されている。
参照:外来医療に関する令和8年度診療報酬改定、5つの論点が示される
やはり課題となるのが、「距離」の問題。専門領域等によってはやむを得ないこともあるのかもしれないが、東京都にある医療機関に東京都以外の居住者がオンライン診療受けているケースが多いことや、オンライン診療での対応が困難と判断された場合に他の医療機関の受診を連携なく指示するケースなどあることがわかった。
他にも、あからさまにルール違反ともいえる広告も散見されている。まずは、こうしたルール違反に対する対応策が必要といえる。オンライン診療の指針を遵守していることを対外的に示し、定期的なチェックや報告を求めることなど考えれられるのではないだろうか。
一方で、オンライン診療の推進において、今回の一連の議論で大きく取り上げられているのが、D to P with DとD to P with Nの形式だ。
D to P with Dは、対象疾患が指定難病とてんかんに限られているが、かかりつけ医が患者と同席の上で専門医のコンサルテーションを受けるというもので、有用性が高い。しかしながら、算定実績は低調な状況が続く。
私自身もこのD to P with Dについては、助言をさせていただく機会が増えている。算定するのはかかりつけ医で記録・処方も担当する。専門医側は、コンサルテーション後にかかりつけ医に請求書を発行し、算定された点数を按分してもらう、ということになる。難病診療連携拠点病院は都道府県に一つしかないことが多いし、てんかんも同様だ。日常診療の延長で専門医療を受けられるメリットは大きいので、個人的にも広がってほしい。
今回の議論では、この遠隔連携診療料の対象を拡充することが論点となっている。医療的ケア児や、在宅医療場面における皮膚科などとの連携など考えられそうだ。
D to P with Nについても議論されている。こちらは、医療資源が限られた地域で有用性が高く、看護師が同席することで患者も安心して受診できる。しかしながら、以前から指摘されているように、せっかく同席する看護師の処置行為等は診療報酬上での評価がない。私も数か所D to P with Nの現場に同行したことがあるが、処置行為が必要になる場面もあり、そうした時は自費診療に切り替えて対応するなど現場では苦慮されている場面を幾度となく見た。こうした処置行為等については、令和8年度診療報酬改定では前向きに対応する方針も規制改革会議では明確にされていることから、今回対応されることとなりそうだ。
参照:医師偏在対策とD to P with N、令和8年度診療報酬改定での対応方針が明らかに
その他、外来栄養食事指導料のオンライン・電話対応が低調となっていることに対する対応なども議論されている。生活習慣病管理料Ⅱを算定する診療所との連携などで病院のオープン栄養外来などに取り組む病院もあるが、外来栄養食事指導料のオンライン・電話対応ができることなどをもっと周知していくことが必要に感じる。
入院時食事療養費・生活療養費の引上げへ
入院辞職療養費及び生活療養費について、食材費・光熱水費の高騰に合わせて引き上げる方針となりそうだ。ただし、食事に関しては既知の課題解決も図り、質と妥当性についても検討していくこととなる。
既知の課題解決とは、これまでの議論でもあったように嚥下食を特別職加算の対象に加えること、特別の食事メニューにおける17円という標準額の見直しだ。
参照:賃上げに向けた評価の整理、回復期リハビリテーション病棟入院料・療養病棟入院料に関する要件の見直し、嚥下調整食に対する評価の可能性など課題の明確化と整理が行われる
その一方で、食堂加算については実際に食堂を利用していないケースも少なくないことから議論される可能性もある。
入院から外来に移行できるものを促進するべく、短期滞在手術等基本料の見直しを
現行の医療費適正化計画では、入院から外来に移行できるものを推進していくことが目標に掲げられ、化学療法と白内障手術が具体的に掲げられている。
参照:医療費適正化に向けた議論を確認 ~後発医薬品の推進、入院から外来診療への移行の促進など~
令和6年度診療報酬改定では、この医療費適正化計画の方針を踏まえ、重症度、医療・看護必要度における抗悪性腫瘍剤の入院での使用割合に応じて評価を見直しすと共に、外来腫瘍化学療法診療料3を新設し、外来対応できる環境整備を行ったところ。
短期滞在手術等基本料についても、先の重症度、医療・看護必要度の対象に加えたり、地域包括ケア病棟における在宅復帰割合の対象から除外するといった対応、麻酔の有無での評価の見直し(短期滞在手術等基本料1)が行われた。こうして、入院から外来への移行促進策が行われているところだが、診療報酬点数で考えると、外来での実施よりも入院での実施とすることにメリットがあるのも確か。
当然ながら、外来での実施に支障があるため、やむなく入院で対応せざるを得ないこともある。私は医療資源が少ない地域での業務が多いが、高齢者であることや医学的な問題、離島などであれば船も含めて交通ダイヤ(週に2回とか、1日に2便など)の問題もあり、やむなく入院せざるを得ないこともある。
今回の議論では、まずは外来と入院の点数差と短期滞在手術等基本料1で算定した場合と算定しなかった場合の点数差を見直すことが検討されていく方針がわかる。前者については、対象となる手術等を入院で実施とした場合の評価の引き下げを、後者は点数差が大きくなく包括していることの効率化の効果が得られていないためにこちらも点数の引き下げが検討されることとなりそうだ。
しかしながら、先に紹介したように、地域の状況・医学的な問題を無視するわけにはいかない。例えば、患者の所在地や医療機関の立地・地域の医療環境に応じた要件の設定なども考える必要もあるだろう。病床稼働率や病床数にも影響を与える可能性が大きいので今後の議論に注目をしておきたい。
また、短期滞在手術等基本料3については、算定方法が複数あり、複雑になっている。
そこで、病院がDPC対象病院であるかどうかにかかわらず、すべての病院において短期滞在手術等基本料3を算定するように見直すことが厚生労働省から提案されている。














