医師偏在対策とD to P with N、令和8年度診療報酬改定での対応方針が明らかに

12/29/2024

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 令和6年12月25日、医療資源が限られた地域での医療提供体制を維持する施策に係る2つの重要な資料が公表されている。1つ目は「医師偏在対策総合パッケージ<厚生労働省 医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ>」、2つ目は「規制改革推進に関する中間答申(案)<内閣府 第22回規制改革推進会議>」だ。令和8年度診療報酬改定での対応方針も明確にされている。ポイントを確認していこう。

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外来医師過多区域での新規開業、要請に対応するように負の動機付けとなる診療報酬上の対応を

 医師偏在対策については、新たな地域医療構想に関する議論の中でも行われ、取りまとめが行われたところ。今回のパッケージでは医学部の定員の見直しなどの養成課程も含めた総合的な対応が示されているもの。重点医師偏在対策支援区域と医師偏在是正プランを前倒しで進めること、外来医師過多区域での新規開業希望者への不足する医療の要請、経済的インセンティブなどはこれまで伝えてきた通りの内容だ。



参照:総数の確保から適切な配置へ ~新たな地域医療構想における医師偏在対策に関する取りまとめ案を確認する~


 個人的に着目したいのは診療科の偏在に関する記載。

 「診療科偏在は、地域ごとの取組のみでは十分でなく、国全体として取り組むべき課題である。労働環境の改善や今後の医療需要の見込み等を踏まえ、新たな地域医療構想等を通じた一定の医療の集約化を図りつつ、女性医師・男性医師を問わず、必要とされる分野が若手医師から選ばれるための環境づくり等、処遇改善に向けた必要な支援を実施する。」


 新たな地域医療構想の中で、外来診療の議論・かかりつけ医機能報告における協議の場などで議論されていくことになるだろうが、その前に国から公表される新たな地域医療構想のガイドラインで確認をしておきたい。

 資料の最終ページにある大臣折衝の内容について、令和8年度診療報酬改定に向け、ある意味「きわどい」内容が確認されている。
 

 「令和8年度診療報酬改定において、外来医師過多区域における要請等を受けた診療所に必要な対応を促すための負の動機付けとなる診療報酬上の対応とともに、その他の医師偏在対策の是正に資する実効性のある具体的な対応について更なる検討を深める。併せて、重点医師偏在対策支援区域における医師への手当増額の支援については、当該事業と診療報酬を給付費の中で一体的に捉える観点から、当該事業の財源について、給付費や保険料の増とならないようにする形で、診療報酬改定において一体的に確保する。」


 あくまでも要請に応じない新規開業に対してのペナルティのようなもののようだが、既存の診療所には影響はなさそうに見える。要請に応えられなければ、保険医療機関としての期間は3年になる予定だが、要請に応えられなければ少なくとも3年間はペナルティを受ける形になる。一方で、医療資源が限られた地域では補助金なども含めた複合的な対応となりそうということ。医療資源が限られた地域では外来診療は包括評価にして、地域ごとに補助金等で調整する、なども考えられそうだが(勝手な予想です)、今後の議論に注目していきたい。

D to P with N、処置行為等に対する診療報酬上の評価を令和8年度診療報酬改定で対応へ

  毎年6月に取りまとめが行われる規制改革推進のとりまとめだが、12月25日にその中間とりまとめが行われ、公表されている。医療に関する分野としては、地方創生のカテゴリで地域におけるオンライン診療の普及のための規制緩和、投資大国のカテゴリで医療データの利活用と物資輸送のためのドローン運航などが盛り込まれている。



 特に注目したいのは、地方創生のカテゴリにあるオンライン診療について。地方創生のカテゴリにあるので、基本的には医療資源が限られた地域での普及・促進という考え方だ。すでにお伝えしているように、オンライン診療については令和7年医療法改正で明確化を図ることとなっている。

参照:オンライン診療を行う医療機関、都道府県への届出を求める方針。オンライン診療が実施できる通所介護施設等を「特定オンライン診療受診施設」として届出も。
参照:医療法改正に向け「2040年頃に向けた医療提供体制の総合的な改革(案)」が示される

 
 今回の中間とりまとめでは、オンライン診療専用車両の利活用も含めたD to P with Nに関する規制の緩和だ。ポイントは以下の通り。

「特に離島や山間地などの医療アクセスが限られた地域等の患者に必要な医療を提供する観点から、特定オンライン診療受診施設において、看護師等による診療の補助行為を可能とするべきとの指摘があること等を踏まえ、特定オンライン診療受診施設における看護師等による診療の補助行為の実施可否の検討(実施可能な診療の補助行為の内容についての検討を含む。)を行うこと。また、急変時の体制確保において事前に関係医療機関との合意を行うことについては、少なくとも現行のオンライン診療指針と同様に、離島など、急変時の対応を速やかに行うことが困難となると想定される場合とすること。」


 令和6年度診療報酬改定では、「看護師等遠隔診療補助加算(50点)」としてD to P witn Nの評価が創設されたところ。しかしながら、処置については算定ができないことが課題となっている。私は、12月25日、山口県山口市にある徳地診療所で稼働しているオンライン診療専用車両に同乗させていただき、D to P with Nの診療場面を視察させていただく機会に恵まれたが、やはりその場面でも処置については算定ができないことから、患者の確認を取った上で、患者負担による処置を行わざるを得ない状況を目にした。保険あってサービス、という状況に陥らないためにも、中間年改定としての前倒しでの対応が必要ではないかと感じる。


 なお、D to P witn Nの場面を通じて、感じたこととしてはクラウド型の電子カルテの必要性とプライマリ領域の診療看護師(NP)もしくは特定行為研修を受けた看護師の養成に対する支援の必要性だ。
 クラウド型電子カルテについては、遠隔での医師・看護師との連携になるため、タイムリーな情報共有が必須だということ。また、オンライン資格確認も必要だ。マイナ保険証では不安があるかもしれないが、あわただしい外来診療よりもスタッフのサポートは手厚く、便利に感じてもらえる。
 診療看護師、特定行為研修を受けた看護師の配置については、やはり処置を行う観点からも重要だということと、医師からの包括的な指示を受けて臨機応変に対応していく創造性が求められる場面も考えられるからだ。今回視察させていただいたD to P with Nでは、遠隔で心音等を確認するようサービスは使われていなかった。医師と看護師で日ごろから診療を一緒にしていることもあり、どういった聴診を行い、どのように判断しているのかを感覚的に医師が理解しているため看護師の判断を信頼しているということ、それから中山間地といった離れた地域での活動となるので、通信環境と電源確保の問題がある(電子カルテ、オンライン診療はJackeryポータブル電源で稼働。患者一人当たり約30分の診療を実施。オンライン服薬指導まで含む。Jackeryポータブル電源708の55%ほどを消費)。現行の第8次医療計画では特定行為研修修了者の従業目標値を設定しているので、現任者の養成に対する支援と教育研修中の人材確保など自治体としての積極的な支援など検討が必要だろう。また、養成機関としては、プライマリ領域の人材育成プログラムなども求められるところだ。もう一つ付け加えることがあるとしたら、婦人科との連携だ。男性よりも女性が長生きということもあり、専門性も求められるところ。


 医師偏在対策が本格的に稼働していく。都心部での新規開業に対する規制的手法や直美への対応に注目が集まるが、元を辿れば、ユニバーサルサービスとしての医療提供体制の確保に辿り着く。対策には時間がかかるので、将来に向けた取組と同時に今起きていることに対する緊急的な対応をセットにして速やかに実施していくことが求められる。

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