令和6年12月26日、令和6年第16回経済財政諮問会議が開催された。この会議では、例年12月に公表されていた「改革工程表」を新たに「改革実行プログラム」として今後のタイムラインを明確にしたもの。同時に重要政策目標の達成度・進捗度等の検証方針についてまとめた「EBPMアクションプラン2024」も公開されている。
参照:「改革工程表2023」より、医療機関・薬局の経営と実務、健康寿命延伸・医療費適正化に関するポイントを整理しました。
「改革実行プログラム2024」より医療分野、特に医療機関の経営に係るものと思われるものを個人的に選んで整理したものをベースに紹介をしたい。
【お知らせ】医療政策ニュース解説ブログroute"hckn"の更新情報をBlueskyでお知らせします。よろしければ、フォローをお願いいたします。
医療DX関連~標準型電子カルテは2027年度から本格稼働を目指す~
医療DXに関連する項目を確認すると、電子カルテ情報共有サービスの運用開始が間近に迫っている。しかしながら、このサービスを活用するには文字通り電子カルテが必要となる。諸事情で電子カルテの導入が困難な診療所・200床未満病院を対象に標準型電子カルテの提供が行われることとなっているが、2027年度からの実施を目指す方針だ。
もう一つ注目したいのは、支払基金の抜本的改組。ローカルルールや社保・国保毎に異なる審査の是正などに期待が集まる。
医療提供体制とサービス提供体制の見直し~薬局機能の見直しに注目~
2025年度は新たな地医療構想のガイドライン策定、届出と協議が2026年度から本格的に始まるかかりつけ医機能報告の準備の年になる。また、薬局についても対人業務の時間を創出するための薬局機能分化や一包化の外部委託など薬機法改正を踏まえて、順次施行されることとなっている。この後説明するが、今後人口減少や政策誘導に伴い通院する患者数や通院回数は減少していくことが考えられる。これまで通り、処方箋を持ってくる患者を待つのではなく、積極的に地域に出ていくことや、服薬フォローを行うこと、専門性を高めて1人当たり単価の高い患者を確保することが薬局にも求められるようになることを意識して、備えておきたい。
外来診療の転換点が近づく~外来患者数減少時代への対応を検討を急ぐ~
先日、医師偏在対策総合パッケージが公表されたところ。2027年度からの実施に向けて、粛々と進めていくことが記載されている。
参照:医師偏在対策とD to P with N、令和8年度診療報酬改定での対応方針が明らかに
患者の自己負担割合の見直し~急速に狭まる保険の範囲が受診抑制と後発医薬品メーカーの業界再編に~
2025年8月から段階的に高額療養費が見直され、自己負担上限額が引き上げられることが明らかになっている。
参照:高額療養費制度 来年8月から上限額引き上げの方針 厚労省(NHK)
その他、サ高住に対する過剰サービス問題も注目のテーマだ。特に、訪問看護については次回改定での厳しい内容が想像できる。
医療費適正化の視点~地域別診療報酬の提案、外来定額制の可能性~
注目したいのは、受診時定額負担と定額制の拡大の検討について。退院患者調査、病床機能報告と外来機能報告など医療に関するデータが収集され、蓄積されてきた。データが情報となり、制度設計に活かされる。財務省がかねてから主張しているように、かかりつけ医の紹介無しに他の医療機関を受診した場合の受診時定額負担や選定療養など、本買う敵に議論ができる環境が整ってきたいということだろう。
そして、地域別診療報酬についても、国から積極的な情報提供が都道府県にお紺われることが想定されている。地域別診療報酬については度々議論に出るが、医療費適正化計画の推進のために必要あれば実施できることになっている。
参照:医療費適正化に向けた議論を確認 ~後発医薬品の推進、入院から外来診療への移行の促進など~
改革実行プラン2024では、2025-2027年を集中取組期間としている。2026年の診療報酬改定を挟んで、さらなる改革が進められていく。個人的に感じることを一言で表すと「外来の受診抑制」ではないかと思う。重症な方は保険診療を積極的に使っていただき、軽症な方は市販医薬品や自費の健康支援サービスなどを利用して健康維持に努めてもらう方が経済的な負担が軽く済む、そういった世の中創りを目指しているように思う。医療機関・薬局としてそうした世の中創りに向けて、どういった役割を担い、発揮できるかを本格的に考えていかなければならない時期に来ているように思う。