令和7年7月3日、令和7年度第6回入院・外来医療等の調査・評価分科会が開催された。今回は、令和6年度診療報酬改定結果検証に基づく資料をもとに急性期入院医療と救急医療について議論されるとともに、DPCに関する分析をしているDPC/PDPS 等作業グループと、急性期の指標・高齢者の入院に関する指標・看護必要度に関する分析をしている診療情報・指標等作業グループからの報告という、大きく3部構成で行われている。ここでは、急性期機能に関する議論と救急医療に関する議論について確認していく。DPCと看護必要度等については、また改めて解説をする。


急性期機能を「拠点的な急性期機能」と「一般的な急性期機能」として考える

 新たな地域医療構想では、医療機関機能報告を新たに設け、医療機関そのものの機能を明確にすることとなる。今回は、急性期という名称がつく急性期拠点機能と高齢者救急・地域急性期機能と診療報酬の整合性について議論されている。
 今回の議論に当たって、厚生労働省から拠点的な急性期機能(急性期拠点機能と考えられる)と一般的な急性期機能(高齢者救急・地域急性期機能と考え有れる)というように分類し、診療報酬の算定項目および算定実績での線引きについて、「救急搬送」・「全身麻酔手術」・「総合性(診療科のバラエティなど)」の3つの評価指標で示された。そして、診療情報・指標等作業グループにおいて検討されており、その状況報告が行われている。




 救急搬送についてみてみると、単純に件数だけで考えているのではなく、地域の実状にあわせた柔軟な対応として、人口20万人以下の二次医療圏では地域シェア率を踏まえた評価の在り方などを検討することが考えられる。例えば、人口20万人以下の二次医療圏で一定の地域シェア率があれば、急性期充実体制加算もしくは総合入院体制加算の算定を可能とするなどだ。
 また、人口20万人以上の二次医療圏にある医療機関においても同様に受入れ件数は少ないが、地域で高いシェア率を誇っている病院もある。しかし、こうした病院の場合は件数が少ないために急性期充実体制加算や総合入院体制加算を算定できていないこともある。地域に貢献していることは間違いないので、ここでも急性期充実体制加算等の算定を可能とすることも考えられるだろう。
 人口減少のスピードは地域によって差がある。こうした地域差を反映して、地域で必要な急性期機能を確実に維持していくための評価はとても良いことだと思う。













 また、時間外(深夜)の受け入れ実績にも着目していることは重要だ。





 全身麻酔手術についてだが、件数について着目されている一方で、拠点的な急性期機能を有する医療機関に対しては、難易度の高い手術の実績について検討される模様だ。どういった手術などが該当するのかも含めて、今後注視していきたい。





 総合性については、拠点的な急性期機能と一般的な急性期機能のいずれにおいてもDPCのカバー率指数や地域医療係数を用いた基準値の設定が考えられそうだ。





 なお、拠点的な急性期機能については、診療科のバラエティなどもポイントになる。特に、総合入院体制加算及び小児・周産期・精神科充実体制加算を届け出ている病院では、施設要件の影響もありすべての診療科の入院医療を提供している病院の割合が高い。






 他にも、医療機関の専門性や地域の特性をどのように反映させるか、救急搬送の地域シェア率は低いものの手術実績は多い傾向にあるこども病院に対してはどうするかなど、今後改めて検討されていくこととなる。










下り搬送を評価する「救急患者連携搬送料」、対象となる医療機関の17%が届出


 前回の診療報酬改定の議論から、高齢者救急や下り搬送といったキーワードが地域医療構想においても重要になってきている。前回の診療報酬改定で新設された救急患者連携搬送料はその象徴ともいえるもので、直近まで届出数は増加の傾向にあるが、対象となる医療機関の中では17%という状況だ。そのため、算定回数自体は多いとは言い難い。届出ができない理由としては、件数が要件に満たないことや搬送の際に同乗するスタッフの確保ができないこと、自院や連携先の医療機関が緊急自動車を保有していないこと、などがあげられている。






 
 自院や連携先の医療機関が緊急自動車を保有していないこと、については、総務省消防庁の「救急業務のあり方に関する検討会」において、増加する救急需要への対策に関する検討として、「転院搬送等での病院救急車や患者等搬送事業者の活用」が挙げられ、地域の実情に応じた患者等搬送事業者を活用する体制の整備が望まれている。そして、つい先日「転院搬送における救急車の適正利用の推進について」が発出されたところ。
 消防機関で使用を終えた救急車の引渡しの機会を得ることや消防機関が認定する患者等搬送事業者の活用などによる対応など押さえておきたい。



救急医療管理加算、届出と算定回数の増加傾向が続く

 救急外来応需体制に関する議論では、「夜間休日救急搬送医学管理料」の算定回数が令和2年以降増加傾向であること、「救急搬送看護体制加算」の届出医療機関数は、令和2年以降ほぼ横ばいである一方、算定回数は増加傾向であることなどのデータが示された。あわせて、救急車等の救急受入患者数が少ない医療機関でも、相当数のウォークイン救急患者を受け入れている医療機関が多数存在していることが示され、地域医療に貢献していることに対する評価の在り方など改めて検討が必要になるだろう。
 合わせて、在宅医療関係者と救急医療関係者による協議の場の設置やACPについての情報共有についても紹介されている点に注目したい。

 さらに、診療報酬改定の都度議論され、見直しが行われてきた「救急医療管理加算」についても取り上げられている。届出と算定回数はわずかながら増加の傾向が続いている。減算対象数もわずかながら確認できる。



 今回は、救急搬送件数との関係性について、以下のことが明らかとなっている。

・救急医療管理加算の算定が年間10件以上ある医療機関(n=2,255)において、救急車等の受入患者数が500件以下である医療機関は約27.7%、ウォークインの救急受入患者数が500件以下である医療機関は約33.8%であった。

・ウォークインを含む救急入院患者の54.4%(n=2,433)が救急医療管理加算を算定している、とのデータが今回示されている。





 患者状態などさらに精緻に見ていくことや入院に至る経路など、今後さらなる分析と検討が進められ、救急医療管理加算の見直しに反映されていくことなど考えられる。