2040年に日本経済を支えていただいた団塊の世代の皆さんが90歳を迎える。介護保険のデータからわかるのは、90歳を超えるあたりから介護保険サービスの利用者が増えるということ。利用者が増えるということは、サービスを提供する人も増える必要があるが、今の日本では急激に人口が増えることは考えにくい。そこで、現有戦力を維持しながら、少子高齢社会時代を迎え、生き抜くための取組が必要であり、少なくとも2040年を迎える前までにその環境作りを終えなければならない。毎年6月に閣議決定される骨太方針は、その2040年に向けて、この1年間をどのように取り組むのかを明確にするものであり、政府と国民との思い「約束」ともいえる。骨太の方針2024は6月21日(金)に閣議決定される見通しだ(6月23日、閣議決定された内容を解説しています)。ここでは、6月11日に公表された原案より医療に関連する注目したいポイントをピックアップして紹介する。

賃上げ、働き方改革などについては、医療に限らず、すべての業種・業界に関連するものとして記載がある。医療についていえば、令和6年度診療報酬改定で新設されたベースアップ評価料の実施と検証がポイントとされている。そのほか、医療に関連するものとしては、目次にある以下の箇所に集約されている。


第2章 社会課題への対応を通じた持続的な経済成長の実現 ~賃上げの定着と戦略的な投資による所得と生産性の向上~

3.投資の拡大及び革新技術の社会実装による社会課題への対応

(1)DX >(医療・介護・こどもDX)

6.幸せを実感できる包摂社会の実現

(1) 共生・共助社会づくり > (女性活躍)

(2)安全・安心で心豊かな国民生活の実現 > (安全・安心)


第3章 中長期的に持続可能な経済社会の実現

3.主要分野ごとの基本方針と重要課題

(1)全世代型社会保障の構築

 > (医療・介護サービスの提供体制等)、(医療・介護保険等の改革)、(予防・健康づくりの推進)、(創薬力の強化等ヘルスケアの推進)


それぞれ該当箇所をピックアップしてみてみる。

DXの推進については、保険証の新規発行の原則終了を見据えての対応、また全国委医療情報プラットフォームや診療報酬改定DXの着実な推進がうたわれている。そのために、医療DXの推進主体となる社会保険診療報酬支払基金の体制強化など記載されている。審査の厳格化と標準化、後発医薬品使用促進など医療費適正化のとりくみの強化を意味する。


女性活躍の視点についても注目をしたい。多くの地域で人口減少が進むとされているが、地域の人口減少に歯止めをかける一つのポイントが女性の働く場の確保であり、活躍できる環境整備にあるといえる。女性がその地にとどまることで、出生率が高まる可能性があるからだ。また、医療業界は女性の活躍が期待されるところ。女性の健康ナショナルセンター(仮称)による支援など今後注目されるところだ。



安心・安全の観点の中で、花粉症対策や新型コロナ罹患後症状、ワクチンの副反応に関する実態把握についても記載がある。新型コロナ感染流行期の経験をどのように生かしていけるか。


持続可能な社会保障を実現するための医療提供体制について、来年度から新たに始まるかかりつけ医機能報告制度、地域医療構想を実現する手段の一つとなる地域医療連携推進法人や社会福祉連携推進法人の活用について記載されている。今年度で現在の地域医療構想は終わりを迎えるが、次なる地域医療構想に向けた話し合いはすでに始まっている。地域全体で取り組むものとなることを考えると、医療法人も理事となれる社会福祉連携推進法人という選択肢も有効な手段の一つとなる。自治体の権限強化と合わせて注目したい点だ。また、医師の地域偏在に関する取り組みとして医学部定員の適正化や診療報酬に地域差を設けることを検討する経済的インセンティブの考え方など、閣議決定に向けて、今回の記載内容が残ることとなるのか注目したい。


また、がん対策や循環器病対策、慢性腎臓病対策などについての記載と並び、昨年の骨太方針にもあった、栄養・口腔管理に関する記載が今回もある。今回は特に歯科領域に関する記載が手厚い。

先にDXの推進の中で、医療費適正化の推進について言及したが、保険者に対する医療費適正化計画の取組を推進する内容もある。保険者機能の強化がキーワードになっているが、今後は、後発医薬品に関する通知と合わせて、リフィル処方に関する通知など患者へのダイレクトアプローチによる行動変容など保険者努力支援制度などで推進されることなど考えられる。あわせて、コラボヘルス(保険者と事業主の連携による予防事業)やPHRの活用など保険者に期待されている。今後、地域医療連携の重要のステークホルダーの一人と考える必要があるのではないだろうか。



最後に医薬品関連について。革新的な医薬品の開発を促す環境整備と同時に、バイオシミラーを含む後発医薬品の使用促進、そしてスイッチOTC等セルフメディケーションの推進、そして薬剤自己負担の見直しについて記載されている。市販品類似薬に対する選定療養など考えられるのではないだろうか。本年10月からの長期収載品に対する選定療養の動向が間接的に今後の議論に影響を与えることになるだろう。


あくまでも、まだ原案だ。例年、原案と閣議決定されたものとでは、言い回しであったり、記載内容そのもののも異なることがよくある。閣議決定後、原案との違いを確認することでいろんな動き、傾向も見えてくる。閣議決定後に改めて確認しよう。

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