東京都民の医療に関するマインド

2/22/2023

ニュース解説 患者 経営

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 令和4年9月の1か月間にわたって、東京都において「保健医療に関する世論調査」が行われ、このほどその調査結果が取りまとめられた。令和6年度から新たに始まる医療計画の策定に向けた住民意識を確認するための調査だ。4,000人に対してのアプローチで。有効回答数は1,846という結果。個人的に興味深く見た回答結果を確認していきたいと思うが、こうした調査については、結果とあわせて質問形式も合わせて確認しておきたい。選択肢が設定されている場合など、ある程度確証バイアスがかかっていることを踏まえておく必要がある。


〇医療機関の情報収集について

 医療に関する情報の入手について、テレビがやはり多い。ただ、よく見ると、前回調査よりもポイントは下がり、SNS・インターネットによる入手が増えているのが分かる。SNSについては、インターネットというよりも、家族・友人・知人からの情報に近しいとおもうが、この2つを合わせると50%をやや上回る結果になる。また、薬局も選択肢にあり、10%程度だが選択されているところに注意したい。また、意外なところだが、広報誌というメディアも注目したい。新型コロナに関するワクチン接種情報や休日夜間対応の情報など掲載され、意識的に目にする方が増えているように思う。



 欲しい医療情報についてでは「どこに・どのような医療機関があるか」という項目が2位となっている。実際にどうやって調べているかという項目を続けてみると、東京消防庁が最も多く、次いで医療情報ネットという結果になっている。かかりつけ医となる医療機関を探す、という目的で調べることは少なく、危機的状況での対応策としての検索になるのはある意味当然ともいえるが、今後のことを考えると、かかりつけ医探しの必要性を喚起することも大事だと思う。何より、利用したことがあるものはない、という意見が多いことから、まだまだ広報・利用促進の余地はある。





〇かかりつけ医の有無

 実際にかかりつけ医がいる、という回答は前回調査と横ばいの状況。ただ、かかりつけ医というものをどう考えているかが課題だ。続いての項目ではかかりつけ医を選んだ理由に関する結果が掲載されているが、自宅から近い、というのが圧倒的に多い。かかりつけ医とは、住まいの近くの医療機関、ということに認識かもしれない。





診療報酬における地域包括診療料/地域包括診療加算や機能強化加算などが有する24時間対応や介護事業所との連携などをかかりつけ医機能としているが、地域住民にとってはそうしたことよりも、「身近である」、ということの方が優先順位が高い。身近だからこそ、すぐに対応してくれるという安心感もあるのだろう。今年は医療法改正でかかりつけ医機能の明確化と医療機能情報提供制度(医療情報ネット)を利用した地域住民に対する情報発信・周知について盛り込まれる見通しだが、現在検討されているように、どこか特定の医療機関だけにかかりつけ機能を集約させることとは別に、地域住民にとって身近な「行きつけ」の医療機関をHUBにして、近隣医療機関同士で24時間対応などの相互補完・負担を分散していくというのが現実的なようにも思える。当初、かかりつけ医の認定・登録制も検討されていたが、こうした調査結果をみると、現在の方向性は正しいようにも思える。

ところで、弊社(HCナレッジ合同会社)は葛飾区SDGs宣言事業に参画し、地元葛飾区の地域振興及び地域医療に貢献する取組を「かつしか地域医療研究所」というネーミングで行っている。この度、令和5年1月1日時点の施設基準情報を基に、地域住民の視点で葛飾区内の医療機関情報を検索・地図情報を確認できるコンテンツを制作したので、ご紹介しておきたい。



〇関心のある保健医療問題

 医療計画の参考に、ということもあり脳卒中・循環器疾患・糖尿病などの生活習慣病が1位となった。その他注目しておきたいのは、ホスピス・在宅緩和ケアに関する関心が下がっていることだろう。在宅においては同居者への負担と遠慮もあるだろうし、急変時の対応の不安もあってのことだろうか。そう考えると、医療機関だけではなく、訪問看護・薬局のかかわりが在宅緩和ケアでは今後ますます重要になると思われる。なお、在宅療養に関する希望も下がっていることが分かる。2025年の医療提供体制のあるべき姿を創るための地域医療構想は、現状では入院医療の適正化が中心となっているが、積極的に患者さんを在宅へ帰していくことも目的の一つ。これからの地域医療構想は、今回の地域住民の声を踏まえると、退院後も病を持ちながらも安心して生活し続けることができる在宅/通院環境の整備にクローズアアップしていくことになる。それは、在宅医療/外来だけの整備というわけではなく、地域包括ケア病床を有する医療機関との連携の深化ではないだろうか。




〇COPDと心不全の緩和ケアに注力?

 最後に、COPDと心不全の緩和ケアについての項目もあった。特に後者、緩和ケアといえががんのイメージが強いが、2020年の世界保健機関の報告では、成人において緩和ケアを必要とする疾患別割合の第1位は循環器疾患であり、悪性新生物(がん)は第2位という結果であった。診療報酬でも緩和ケアに関して末期心不全が追加されたところ。東京都医療計画では、COPD及び心不全の緩和ケアに関する取組に注目が必要かもしれない。




令和6年度から第8次医療計画が始まるが、各都道府県では令和5年中に策定に向けた取り組みを開始する。今回は東京都における医療計画策定に向けた調査を紹介したが、各地でも同様の取組が行われることも考えられる。そして、令和6年度は、診療報酬・介護報酬の同時改定もあり、医療費適正化計画、勤務医の働き方改革もスタートし、地域医療構想もゴールをむかえる重要な年となる。令和5年はその重要な年に向けた備えの年。本年6月に閣議決定される予定の骨太方針2023に向けた議論を特に注目し、備えるべきことを確認していきたい。

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