<令和5年度>医療費の動向を読み解く~診療報酬改定実施後の患者負担の変化、医療提供体制の地域差なども~

9/07/2024

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令和6年9月3日、厚生労働省より令和5年度の医療費の動向(速報値)が公表された(労災や自費診療は除かれている)。その内容は、過去最大となる47兆3000億円。なお、前年度より1兆3000億円(+2.9%)という内容。新型コロナ感染拡大からの反動などがまだ続いていることを感じさせる。個人的に気になるポイントに焦点を当てて確認してみる。



後期高齢者と未就学者の医療費

制度別の概算医療費の割合を確認すると、75歳以上後期高齢者医療費が39.8%(対前年比+4.5%)を占めている。国保からの移行が進んでいるようにも見える。また、公費負担医療の増加も顕著だ。全体では約5.0%程度だが、対前年度では+3.6%となっている。今後、生活保護の医療費を国保に統合することも検討されていることから、地域における医療費適正化の取組みより重要になってくる。


年齢階層別の一人当たり医療費をみてみると、75歳以上の後期高齢者医療費における一日あたり医療費の伸びが+1.4%となっていること、その一方で一人当たり受診延日数が-0.5%となっている。これは、2022年10月からの後期高齢者の窓口負担割合が2割に引き上げられた影響(受診頻度を下げるなど)が考えられる。その結果、75歳以上の後期高齢者医療費は+0.9%の伸びとなった。後発医薬品の使用割合が高まっていることなどの影響で、やや伸びは鈍化している、とも見えなくはない。またここで注目したいのが、未就学者の伸びだろう。新型コロナ感染拡大の反動の一つとして、未就学者・小児の感染症等の治療などが増えていると考えられる。一人当たり受診延日数の増加は、各自治体で取り組まれているこども医療費無償化などの施策も関係しているのではないだろうか。そこで、医科診療科別の状況を見てみると、小児科と耳鼻咽喉科の受診延べ日数が大きく伸びているのがわかる。なお、一日当たり医療費は対前年比でマイナスとなっている。診療報酬上だけではなく、受診行動の変容を促すような広報活動もあわせて取組むことで、限られた資源の有効活用をしていくことが求められる。



診療種類別に確認。調剤医療費の伸びが大きい。

調剤医療費が8兆円を超えた。しかも、対前年比で5%を超える伸びとなっている。


薬剤料の伸びが大きいことから、高額薬剤などが影響していると考えられる。後発医薬品の使用促進とトレードオフの関係になるような取り組みは今後も引き続き必要だ。

一方で、処方箋1枚当たり薬剤料は対前年比でマイナスとなっている。医科の入院外は回復基調を見せているものの、まだ戻り切っていない(過去のマイナス分を取り戻せていない)ことや長期処方による受診頻度の減少などが影響していると思われる。オンライン診療+オンライン服薬指導+アマゾンファーマシーなどの配送機能などの対応を業種業態を超えて連携して対応していくことなど必要だろう。

訪問看護の医療費も大きく増えているが、ここ最近、多く報道されている訪問看護の不正請求問題などを考えると、気になる点も多々ある。

ところで、令和6年度診療報酬改定実施後の8月、私は定期受診のため受診し、薬局で医薬品を受け取ってきた。私は、6年ほど前に健診で異常値が見つかり、すぐに紹介状をもらって受診、治療開始となった。幸いにも病状は安定している。病名がわかる情報を除外したここ3年間の診療報酬と調剤報酬の明細書を整理したものをご紹介しよう。



医療機関では、外来診療料の引き上げやベースアップ評価料や医療情報取得加算などがあった一方で、処方箋料が8点引き下げられており、その結果として、自己負担については変化はない。薬局では、技術料は上がっているものの、毎年の薬価改定が影響して年々負担は減っている。病状が安定した状況が続き、現在使用している先発医薬品の後発医薬品が登場してくるタイミングで分割調剤で一剤ずつ後発医薬品への切替に挑戦していくことで、さらに患者としての負担は下げられる(参照:後発医薬品のある長期収載品の選定療養の準備に向けて「特定薬剤管理指導加算3 ロ」と「分割調剤」の活用を再考)。医療機関としては、病状が安定している患者の対応は、長期処方・リフィル処方を推進し、いわば薬局の服薬フォローに任せ、重症者への対応に人員を割いたり、新しい事業を検討する時間を創出する、そうした経営を考えていくことが求められる時代になっている(参照:生活習慣病管理料への対応を改めて考える)。慢性疾患の患者がこれからも増えてくることを考えると、重症化予防を長期にわたって実現し続けることが、人口減少時代においても患者を確保し続け、経営を維持継続できることになる。患者が重症化することで、自院から他院へとかかりつけが移行することもありうる。

地域差を読む

都道府県別の医療費、平均在院日数の動向も公表されている。高知県と山口県では平均在院日数が40日を超えている。最も平均在院日数が短い東京都と最も長い高知県の医療提供体制(人口10万人当たり施設数と病床数)をJMAPで比較してみる。




交通環境や年齢構成などの諸条件にも原因があると思われるものの、医療機関・病床機能の効率的な活用の余地がまだまだあるように感じられる。在宅療養支援病院の拡充や在宅医療を行う医療機関との連携強化なども。患者だけではなく、医療従事者も年を重ね、これまでできていたことができなくなってくる。特に医療資源が限られた地域では、人的資源を集約した病院が近隣の開業医と連携して在宅までフォローアップする機能と、地域住民に情報発信をして受診行動に協力を求めることもこれからは必要だ。議論が始まっている新しい地域医療構想(勝手にnext地域医療構想と呼んでいます)は、これまでの入院医療だけではなく、外来・在宅を含めた地域を挙げて対応することになっている。

本年10月からは後発医薬品のある長期収載品の選定療養が始まり、医療費にも影響を与えることが考えられ、患者の受診行動の変容にも着目していきたい。医療を提供する側としては、医療従事者の働き方改革・負担軽減と収益増を考えると、軽症患者に対するアプローチと新たな事業への挑戦(在宅医療や専門外来、自費診療なども)を絶えず意識しておきたい。

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