医療分野における改革実行プログラム2024の現在地、見通しを読む
令和7年5月26日、第6回経済財政諮問会議が開催され、骨太の方針2025の骨子案が提示された。「賃上げを起点とした成長型経済の実現」を柱にしつつ、「 中長期的に持続可能な経済社会の実現 」として社会保障の問題を中心にまとめていくこととなる。例年通りで行けば、6月上旬にも閣議決定される見通し。令和8年度診療報酬改定の議論を控え、医療分野についてどういった内容となるか注目が集まるところだ。
ところで、今回の会議では「経済・財政新⽣計画 進捗管理・点検・評価表 2025」が公表されている。昨年末に公表された「経済・財政新⽣計画改⾰実⾏プログラム2024」と「EBPMアクションプラン2024」の進捗状況を表すものだ。ここでは、医療分野に焦点を当て、注目される項目の現況と見通しについて確認し、医療政策の現在地を把握したい。
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改めて確認、2030年までの主な医療政策のタイムライン
2040年に90歳以上高齢者の割合が人口の10%に達する見通しなど、新たな地医療構想においてもそうだが、2040年までにあらゆる改革をやり切って、2040年以降の時代に備える、というのは中長期的な医療政策の目的だといえる。そして、昨年の骨太の方針2024では、本格的な人口減少がはじまる2030年までに生産性向上、重症化予防を主なテーマとした取組を設定し、目標が作られたところ。その目標が「経済・財政新⽣計画改⾰実⾏プログラム2024」と「EBPMアクションプラン2024」に示されている。
参照:改革実行プログラム2024より、医療分野の主な集中取組の内容を確認・整理する
この図の中にある取組の一部について、現状の実績が明らかにされている。
予防・健康づくりの推進
主には慢性疾患の重症化対策、とりわけ透析予防に向けた糖尿病の重症化対策に多くのKPIが設定されている。令和6年度診療報酬改定では、生活習慣病管理料の見直しが大きな注目点であったが、その理由は透析予防を徹底するためだといえる。
その他、がん患者に対する「治療と仕事と両立プラン」に対するKPIも注目だ。2025年までに40,000件という目標に対し、2023年時点で約29,000件という状況。働くことで社会保険料を負担し、厚生年金の積み立てもできるし、医療費全体に貢献することにもなる。高額療養費の自己負担上限額の議論も大事だが、事業主の意識も合わせて考えていくべきだと感じる。
参照:高額療養費の自己負担上限額の引上げには、事業主の理解・フリーランス保護法の徹底など患者の生活を守る環境整備が必要
医療・福祉サービス改革
地域医療構想、外来医療計画などの医療提供体制に関するものだ。ここで着目しておきたいのは「医療機器・設備等の共同利用計画のうち外来医療に係る医療提供体制の確保に関する協議の場で確認された件数」だ。地域の医療資源を共有し、重複検査などを防ぐこともさることながら、診療所の新規開業における高額医療機器の導入に対して一定の抑制的な対応を促す意味もあるもの。かかりつけ医機能報告の開始に合わせて、外来医療の協議の場も始まることから、地域における共同利用を踏まえた設備投資・環境整備を考えたい。
もう一つ注目したいのは、「調剤後薬剤指導管理料1」の算定件数のKPIだ。糖尿病・慢性心不全患者の服薬フォローを薬局が行うことを評価する調剤報酬だ。かかりつけ薬局機能のバロメーターの一つとなっている。患者減少時代においては、患者を増やすことを考えることよりも、既存の患者の重症化予防に努めることを通じて、薬局の経営インセンティブを高めていく視点と取組が必要だろう。医療機関としても、今後長期処方やリフィル処方が増え、受診回数が減っていく時代に備え、服薬フォローをしてくれる薬局との連携が望ましく、重症化せずに通い続けてくれることにつながる。
医療・介護分野におけるDXの推進、最新技術の活用による生産性の向上
マイナ保険証、電子処方箋については、データに基づく医療・診療報酬設計の観点からも普及促進が必要だ。今回は実績として出ていないが、電子カルテ情報共有サービスに注目が集まる。標準型電子カルテと合わせて、今後の医療DXの推進においては重要なものとなるので、注目をしたい。
改革したい項目とKPI、そして目標とのギャップの「差」に注目して、今後の骨太の方針と診療報酬改定の議論を注視していきたい。