令和7年度のDPC対象病院の現況から読み解けること
令和7年5月14日、第608回中央社会保険医療協議会 総会が開催され、その中で、令和6年度診療報酬改定後のDPC対象病院の現況等について資料が公表されており、23病院が退出していることが分かっている。
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一般病床を有する病院の病床規模別にDPC対象病院数・割合は以下の通り。当然ながら、200床を超える病院からDPC対象病院となる割合は高くなる。
100床未満病院(N=2,136)の17%
100床以上200床未満病院(N=1,908)の23%
200床以上300床未満(N=545)の57%
300床以上400床未満の病院(N=480)の47%
400床以上500床未満病院(N=271)の56%
500床以上の病院(N=348)の71%
これまでのDPC対象病院数の推移を見ると、令和4年度からはほぼ横ばいといえる状況にあること、新規でDPCに参加する病院も減少の傾向にあり、特に200床以上の病院においては大きな変動がない状況といえる。これは、DPCに参加する医療機関数がそろそろ頭打ちになってきているとも受け取れる。
100床未満病院(N=110,237)の22%
100床以上200床未満病院(N=209,947)の30%
200床以上300床未満(N=103,262)の74%
300床以上400床未満の病院(N=139,751)の55%
400床以上500床未満病院(N=106,640)の62%
500床以上の病院(N=213,025)の78%
令和6年度診療報酬改定後、DPC対象病院の要求水準が引き上げられたこと、また高齢者救急や内科領域の急性期入院を評価する「地域包括医療病棟」が新設された影響もあり、23病院がDPCからの退出を決めている。
地域包括医療病棟に転換する病院が多いが、人口減少が進む同一自治体内での転換もあり、同じ地域包括医療病棟でも、下り搬送に寄せるか、在宅・介護保険施設等からの受入れに寄せるのかなどの緩やかな役割分担が必要になってくるのかもしれない。また、人口減少は2030年から本格的に起きてくることを考えると、医療計画の見直し(6年周期。次回は2030年スタート)の周期に合わせて、規模の縮小や地域包括ケア病棟の検討などある意味で撤退・縮小戦略も用意しておくことが必要に感じる。
参照:令和8年度診療報酬改定に向けたスケジュール案が示される。DPCから退出する病院、地域包括医療病棟への移行が増える
DPC対象病院として維持するために
個人的にも注目しているのが、今後拡充してくる放射性医薬品に対応できる環境に対する比較的高い評価だ。具体的には、放射線治療室もしくは一般病床を一時的に放射線治療病室のように利用できる特別措置病室の運用だ。
参照:特別措置病室の理解とマネジメントを考える
特別措置病室は一般病床としての利用もできることもあり、病床稼働率に大きな影響を与えることなく運用ができる。ただその一方で、RI排水処理がある施設で、室内にトイレがあることなどが求められる。
国内では放射線治療病室が少ないため、来るべき核医学治療の時代に向けては、特別措置病室などの環境整備は急がれるところ。だからなのかはわからないが、DPCにおいては高い評価となっている。がん診療連携拠点病院などの基幹病院としては、地域における役割を改めて考え、運用を検討しておきたい。
DPC対象病院は、医療の質に着目した高度化した見直しへと今後も進んでいく。また、地域への貢献、医療の進展に対応できる環境整備を絶えずおこなっていくことがDPC対象病院を維持していく上では必要になる。今回の中医協では、医療機関別の機能評価係数Ⅱ等の内訳も資料として公表されている。係数の比較を通じて、自院と比較した病院がどういった診療をこなっているのか、どういった環境整備をおこなっているのかを確認し、自院のこれからの経営に活かせるポイントを見つけ出すことに取組みたい。