令和7年6月13日、第8回経済財政諮問会議にて骨太の方針2025(案)が示され、閣議決定された。「今日より明日はよくなる」と実感できる社会へ、という原案にはなかった副題がつけられている。




 医療分野についてざっと目を通したが、余剰病床の削減の目標値やOTC類似薬の具体的な品目など原案以上に踏み込んだ修正とはなっていないように見える。ゆえに、骨太の方針2025における医療分野については、以前本ブログの記事で全体像を確認していただきたい。


参照:”賃上げこそが成長戦略の要”の骨太の方針2025、原案が示される~病床数の適正化、保険外併用療養の拡大、地域フォーミュラリの普及など明記~


 個人的に気になった原案との違いの箇所を確認しておきたい。


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OTC類似薬の保険給付の見直しや地域フォーミュラリの全国展開、病床削減については2025年末までに検討を行い、早期実現が可能なものについて、2026年度から実行する。

 「(1)全世代型社会保障の構築」の最初の文章に、上記小見出しにあるような取組を本年末までに検討して結論を出し、2026年から実行するというタイムラインが設けられた。



 なお、病床削減については具体的な数値目標は盛り込まれず、次のように脚注で解説されている。

「人口減少等により不要となると推定される一般病床・療養病床・精神病床といった病床について、地域の実情を踏まえた調査を行った上で、2年後の新たな地域医療構想に向けて、不可逆的な措置を講じつつ、調査を踏まえて次の地域医療構想までに削減を図る。」



腎疾患対策 → 慢性腎臓病対策、

ワクチン接種 → 科学的根拠に基づく予防接種

 細かなことだが、上記のように言い回しを変えている。なお、慢性腎臓病対策には脚注として次の補足説明がある。


「腎不全患者の緩和ケアを含む。」


 今年に入ってから腎不全患者への緩和ケア拡大に関する機運が高まっている。私も刊行後にすぐ読んだ書籍「透析を止めた日(著:堀川恵子氏)」が契機になっているのではないかと思う。壮絶ともいえる実体験と丁寧な取材の積み重ねが多くの人を動かした。骨太の方針に盛り込まれたことで、令和8年度診療報酬改定では何らかの対応が考えられるだろう。書籍の中では腹膜透析についても言及があり、「PDラスト」といった言葉が印象的だった。「PDラスト」とは、人工透析患者が終末期になり通院が難しくなったりする場合に、腹膜透析に切り替える、というもの。診療報酬では、この腹膜透析に対する評価はあるものの、実際にはあまり普及していないのが現状だ。腹膜透析の普及を後押しする評価の在り方にも注目をしておきたい。




 骨太の方針2025が閣議決定されたことで、令和8年度診療報酬改定の議論がいよいよ本格化していく。一方で、今国会での成立が難しくなっている医療法改正(医師偏在対策、新たな地域医療構想など)は年内成立に向けて仕切り直しつつ、骨太の方針2025に記載された取組を粛々と進めていくことになる。