春の建議「歴史的転機における財政」が公表。医療分野のポイントを確認します。

5/30/2023

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 骨太方針2023に対する財務省からの提案である「春の建議」が取りまとめられ、公表された。来年度のトリプル改定にむけたメッセージがふんだんに盛り込まれている。今回の取りまとめを受け、骨太方針2023はどうなるか、注目が集まる。ここでは、医療分野の注目点をご紹介していく。


〇withコロナ時代に向けた病院経営の視点

新型コロナ感染拡大に伴う補助金や診療報酬上の特例もあって、多くの病院の財務状況が改善していることから、人件費や物価高へはこの積みあがった資産を活用していくべき、と記載がある。新たな補助や診療報酬上での支援には慎重な姿勢だ。




また、新型コロナに関連したことではないが公立病院の経営改善についても触れられている個所がある。地域医療構想の進展で、地域の基幹病院となる公立病院に患者も集約されつつあり、医業収入が多きくなっている傾向にある反面で、地域医療の医療費増加と医療費適正化の問題も表面化してきているとのこと。そこで、共同購買や委託の効率化、人件費の抑制までコストの適正化を促す内容もある。



こうした病院経営に関する話題としては、昨年来、経営状況の見える化となる「経営情報データベース」の取組が始まっているところ。ただし、一般公開されるにあたっては医療機関個別の情報ではなく、カテゴリ別に傾向を示すものとなる。また、職種別の給与などが必須項目となっていない。春の建議では、その点を厳しく指摘し、介護事業者の経営情報も同様に職種別給与などの公表を求めてていく姿勢だ。






〇地域医療構想をさらに推進する視点

ゴールを間近に控えて、ようやく顕著な動きが見えてきている地域医療構想。しかしながら、都道府県知事等の意向がおよびにくい民間病院等の協力が得られにくい。そこで、さらなる強制力を持たせる意味で、法制の見直しを提言している。また、医療機能の集約化・連携強化に向けた具体策も提示しているのは注目される。まずは、地域医療連携推進法人の促進についてだ。医療機能の集約化や人材育成と確保、地域フォーミュラリの推進の効果をうたい、医療法改正での法人化していない医療機関の参画を促進していくことを記している。



また医療機能集約化の観点で、看護配置基準の考え方にまで切り込んでいる。地域での人材の偏り・人材不足の解消ととともに、収入の集中から分散で地域医療を守るという考えだろう。そこで、看護師の数ありきの評価から、重症者の受け入れ実績に応じた評価への大胆な転換を提言している。全国一律での対応は難しい内容と思われるので、地域医療構想調整会議や医療費適正化の推進ための施策として、地域の実状に応じた話し合いで決めていくことなどは可能性として十分にありうるのではないかと思う。


集約化の観点では、特定集中治療室を有する医療機関への人材の集約化についても記載がある。医療機関が多いことで、人材も分散してしまい、低密度医療になっているとよく言われている。今回の新型コロナ感染拡大に伴う医療逼迫がまさにその実例だ。人が急に増えることはない。今あるリソースを有効活用するためには、集約化と連携強化は必須だ。




〇地域医療構想は、入院医療の適正化から外来医療の適正化へ

医師偏在対策の一環として、外来医療計画はすでにスタートしている。これは、外来医師偏在指標を基に新規開業にあたって、外来医師多数地域とされる地域での開業にあたっては当該地域で不足する医療を担ってもらうことを都道府県から要請するもので、なるべく、医師不測の地域での開業を促す性格のものだ(参照:リスタートとなるか?外来医療計画 ~これからの新規開業、高額医療機器の導入で注意したい視点~)。しかしながら、そもそも要請すら行われていない実態が明らかになっている。そこで、新規開業に関してもう一歩踏み込んだ取組を提言している。地域医療構想で入院医療の適正化はある程度進みつつある。そうなると、受け皿となる外来/在宅の整備とかかりつけ機能と専門医療が必要な患者を担当する役割分担が必要になる。今回、医療法改正でかかりつけ医機能が明確化され、間もなく紹介受診重点医療機関も明確化されていく。地域医療構想は新たな展開に入っていく。



〇医薬品をめぐる提言

後発医薬品の安定供給問題の原因の一つとされている量多品目生産について、その解消を目指す方針を明らかにしている他、ポリファーマーシーをさらに一歩進めて、少ない処方薬数を高く評価する韓国の事例を参考にすることを提言している。医療費適正化計画も新たに始まることから、電子処方箋の有効活用もセットでの提案となっている。



また、リフィル処方箋についても更なる活用促進に向けた提案がなされている。昨年の春の建議に記載されていたが、保険者による広報な度積極的な推進を後押しする取組を評価することが引き続き掲載さ入れている。さらに、一般医薬品の類似薬などであれば薬局薬剤師が自身の判断でリフィル処方箋への切り替えることを提案することや薬局薬剤師からの処方医へのリフィル処方箋への切り替えを提案することを同じく診療報酬で評価することなども盛り込んでいる。いづれも薬局薬剤師にとっては心理的ハードルが高いもので、実効性には疑問符が付くが。さらには、リフィル処方箋の実績が少ない場合の減算まで提示している。



そして、今回の春の建議の中でも強いメッセージが込められているのが、薬剤費の自己負担だといえる。高額薬剤が増えている一方で、一般医薬品類似品については患者の自己負担を求めていくもの。骨太方針2023においても注目しておきたいポイントになる。
なお、この薬剤自己負担が導入されると、後発医薬品メーカーの多くは苦境に立たされると考えられる。一般医薬品は先発医薬品メーカーが多くを市場に出していることから、自己負担を理由に受診が減少したとしても先発医薬品メーカーは一般医薬品も含めると売り上げはある程度確保できるが、後発医薬品メーカーの場合は受診が減少することで処方も減り、売り上げが減少すると考えられる。先に記載した後発医薬品の少量多品目生産を解消に間接的につながる施策だと思っている。



医療分野に注目して春の建議を解説した。これを受けて、骨太方針2023はどうなるのか、引き続き注視していきたい。ここ最近は、とりまとめ案の後に大きな見直しが入ることもあったので、最後まで気を付けておこう。


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