「退出勧告」が検討されるDPC、経過措置を迎える療養病床

5/14/2023

r6同時改定 看護師 急性期 経営 地域医療構想 慢性期

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 令和5年4月24日に開催された令和5年度 第1回 入院・外来医療等の調査・評価分科会、そして同年5月10日の中医協で、DPCに関する議論が行われた。その中で話題になったのが、DPCからの退出勧告について検討すべき時期にあるのではないか、というもの。DPCは、診療データを提出し、その内容を精査・分析し、DPCコードの中身(分岐)や入院期間などを決め、医療の標準化と高度化をすすめるものでもある。しかし、現在のDPC対象病院は1,761施設あるが、その中でDPC算定病床が100床未満の施設が全体で約20%あることが分かっている。その多くが地域包括ケア病床等の回復期の病床を有していることが考えられる(参照:続・地域医療の再編を巡る話題(病床の基本的な考え方を整理します))。令和4年度診療報酬改定において、転院での受け入れが多い診断群分類に関する見直しや短期滞在手術等基本料についても、重症度、医療・看護必要度の対象から除外するなどの見直しも行われた(参照:令和4年度のDPC対象病院の係数等が公表。算定ルールの見直しなど確認します。)。しかしながら、すべての病院に対して一律に退出勧告等を求めることは地域の医療資源との兼ね合いや地域医療構想における期待される役割も踏まえた慎重な議論が必要だといえる。


そして、5月12日を期限として、2024年3月で経過措置が切れる療養病床(療養病棟入院料 注11に規定される、医療区分2・3の該当患者割合が5割以下。療養病棟入院料の85%の算定となる)を有する医療機関の今後の対応について、厚生労働省から各自治体に対して今後の対応方針について報告を求める通知(医政総発 0426 第2号)が発出されている。経過措置の有無に関係なく、療養病床の在り方についてはここ最近の診療報酬改定でも度々議論に上がってきたところ。療養病床においても在宅復帰をゴールとした診療報酬上の様々な施策もとられ、より地域に近い身近な医療施設としての役割が期待されてきているのが分かる(参照:療養病床がおかれた環境と今後② ~地域包括ケア病床、そして現状維持という選択~)。そのため、重症度、医療・看護必要度と同様に医療区分も見直されてきており、医療依存度の高い患者や自立につながる支援が求められてきている。急性期病床の平均在院日数短縮化・在宅復帰率を要件とした入院基本料の設定が影響を与えているともいえる。



急性期入院医療の適正化に目が行きがちな地域医療構想だが、在宅に近い医療機関には適正化のみではなく、より医療依存度の高い患者への対応力が求められてきているのが分かる。DPCの見直しは、DPC対象病院だけの問題ではなく、連携する医療機関や在宅医療に間接的に、医療現場では医療依存度の高い患者が増えることによるスタッフの負担増にも繋がる問題だ。


なお、高齢患者の受入れを地域包括ケア病床等リハビリテーションの機能と介護施設等との連携機能を有する医療機関で受入れを促進することで、DPC対象病院等の高度急性期病院における身体機能が低下している高齢患者の療養上の世話や診療補助に対する負担の軽減や在院日数の短縮化を図るべく、高齢患者の入院経路のあり方も検討され始めている。この5月8日からの新型コロナ特例の一環で、地域包括ケア病床等への入院受入れに関する評価が新設されたところ。これは、次回改定に向けた備えとして考えておきたい。




 上記の傾向から、療養病床を有する病院においても自ら入院患者を確保していくための積極的な取組は今後より一層求められていくことが考えられる。そのために考えられる必要な取り組みとしては、以下のことなど考えられる。


①医療依存度の高い患者への対応力を高める。

 紹介元となる急性期病院からの信頼を高める。同時に患者の自立支援につながる取組を強化し、在宅復帰機能(自立支援、栄養サポート)を高める。なお、医療依存度の高い患者が増えることを念頭に、医療安全対策、感染対策にも注力をする。


②地域からの受入れ、かかりつけ医師機能を含めたアウトリーチ機能の強化。

 高齢化に伴い、糖尿病や心不全、そして慢性腎臓病の患者が増えてくる。そういった慢性疾患の重症患者への対応力(リハビリテーションや栄養改善など)を高める。できれば、地域包括ケア病棟(病床)の導入を将来的に見据え、病床削減の必要性の検討と同時に外来における機能強化加算などのかかりつけ医機能の届出や訪問看護機能を整備していくことで、地域(在宅・施設、診療所)とのつながりを深くしていく。


③地域の人口動態や近隣の介護施設の状況を踏まえて介護医療院の検討。

 人口減少は一部の大都市圏以外では進む。地域の実状を確認しながら、介護医療院への一部転換の時期が来る可能性を意識しておく。



 病床の体質改善とも言える取組になるため、時間がかかるものだ。だからこそ、いつまでに体質改善を終えるのかゴールを決め、日々コツコツと、昨日よりも着実に歩を進める取組を、すぐにでも始めることが必要だ。時間がかかることほど、早く始めることが重要だ。



なお、経過措置が切れる療養病床については、以下の事業を利用した対応が呼びかけられている。


〇病床転換助成事業(高齢者医療の確保に関する法律)

 病床転換助成事業の対象となる病床

 病床転換助成事業の対象となる病床は、病床転換助成事業申請時の初年度において使用 許可を得  ている次の①及び②に掲げる病床とする。

 ただし、医療と介護の適切な機能分担を図る観点から、介護療養型医療施設(健康保険法等の一部を改正する法律(平成18年法律第83号)附則第130条の2第1項の規定によりなお効力を有するものとされた同法第26条の規定による改正前の介護保険法(平成9年法律第123号)第48条第1項第3号の指定を受けた同法第8条第26項に規定する介護療養型医療施設をいう。以下「介護療養病床」という。)から次の①及び②に掲げる病床へ一旦移行し、一定の期間を経ずして「病床転換助成事業交付金の対象となる施設」に掲げる施設に転換する①及び②の病床は除く。 


 ①医療法第7条第2項第4号に規定する療養病床(介護療養病床を除く。)

 ②医療法第7条第2項第5号に規定する一般病床のうち、①に規定する療養病床とともに、同一病院又は同一診療所内にあり、当該療養病床とともに転換を図ることが合理的であると考えられるもの 



 病床転換助成事業交付金の対象となる施設

 ①介護医療院

 ②ケアハウス

 ③介護老人保健施設

 ④有料老人ホーム(居室は原則個室とし、1人当たりの居室の床面積が概ね13㎡以上であるもので、かつ、介護保険制度における利用者負担第3段階以下の者でも入居可能な居室を確保しているものに限る。)

 ⑤特別養護老人ホーム

 ⑥特別養護老人ホームに併設されるショートステイ用居室

 ⑦認知症高齢者グループホーム

 ⑧小規模多機能型居宅介護事業所

 ⑨複合型サービス事業所

 ⑩生活支援ハウス(離島振興法(昭和28年法律第72号)、奄美群島振興開発特別措置法(昭和29年法律第189号)、山村振興法(昭和40年法律第64号)、水源地域対策特別措置法(昭和48年法律第118号)、半島振興法(昭和60年法律第63号)、過疎地域自立促進特別措置法(平成12年法律第15号)又は沖縄振興特別措置法(平成14年法律第14号)に基づくものに限る。)

 ⑪高齢者の居住の安定確保に関する法律(平成13年法律第26号)第5条の規定により登録されている賃貸住宅



〇病床機能再編支援事業(地域医療介護総合確保基金

 地域医療構想の実現に向け、病床数の適正化に必要な対象3区分(高度急性期、急性期、慢性期)の病床削減を行った場合に補助される。

 ※病床数の減少を伴う病床機能再編に関する計画を作成した医療機関(統合により廃止する場合も含む)に対し、減少する病床1床当たり、病床稼働率に応じた額を支給する事業(単独支援給付金支給事業)を活用できる可能性がある。



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