医療保険適用の療養病床であるからには、ある程度医療依存度の高い患者を受入れる環境の整備、そして患者の自立支援に向けた取組は必要ということから、地域包括ケア病床を導入するケースもある(療養病棟では1病棟に制限)。地域包括ケア病床を設けることで、新たな患者入院ルートを確保することになる一方で、在宅復帰への取り組み強化という課題も出てくる。また、令和4年度診療報酬改定では、療養病床をベースとした地域包括ケア病床に対しても、在宅等からの受入れ割合を一定水準クリアできなければ減額されるなどの措置がとられることとなった(参照:地域の共有財産へ、外来・病棟の一元管理が鍵となる地域包括ケア病棟)。
地域医療連携担当などの整備が新たに求められるケースも出てくる病院もあると思うが、そうした地域連携担当者に地域包括ケア病床をアピールするための活動もセットで考えておくことが必要になる。
①入院基準を明確にして、在宅医療を行う医療機関、介護施設、近隣の病院に案内をする。
どういった患者であれば受け入れ可能か、施設の環境などをまずは知ってもらう。
②救急対応やレスパイト入院、教育入院目的などの利用を案内する。
例えば、がん化学療法の患者や透析患者など、地域包括ケア病床の場合は抗悪性腫瘍剤やESA製剤などは出来高算定可能でもあるので、対応可能な病院であればレスパイト目的の入院などのおすすめであったり、慢性心不全や慢性腎臓病などの教育入院対応などもできるようであれば知っていただく。
③訪問看護等のかかりつけ医のサポート体制を案内する。
退院後は、かかりつけ医のサポート役となり、救急の対応と訪問看護によるバックアップなど可能であれば提案する。
また、在宅復帰率を意識するために、改めてチーム医療・連携については確認しておきたい。療養病床からの転換で最も苦労する点ではないかと思われる。従来よりも比較的重症・医療依存度の高い患者が来ることも想定して医療事故対策なども注意しておきたい。
参考)
地域医療構想のさらなる推進として、急性期入院医療に関する厳格化が進み、その連携先となる回復期・慢性期の中でも競争が進む。急性期入院医療の適正化が進むと、療養病床では従来以上に医療依存度の高い患者への対応と稼働率向上が求められてくると思われる。また、新規患者の入院ルートを複数用意しておくことが今後の経営の安定化にもつながるといえる。そうした観点では、地域包括ケア病床を導入することは一つの選択肢になりうるが、チーム医療のスピード対応による退院調整、重症患者の増加に伴う医療事故対策、在宅や介護施設・近隣医療機関への営業活動の取組が重要になってくる。
今後も急性期入院医療の適正化が進むことで、競合となる地域包括ケア病床を有する病院も出てくると思われる。競合とならないよう、互いに連携し合う関係になるような取組や、また別の選択肢としての介護医療院や、現状維持を貫くことも考え方の一つだ。現状維持を貫くに際しては、今回の診療報酬改定で療養病床用に新設された「摂食嚥下機能回復体制加算3」などにみられるように、患者の自立支援に向けた体制を整備して、看護師の負担軽減につながる取組を意識しすること、そのためにも近隣の医科・歯科医療機関の協力を得る事がポイントになってくる。
なお、急性期入院医療の適正化、DPC対象病院の早期退院の推進から、現状の維持の療養病床においても医療事故対策は重要になってくる。