DPC/PDPSとは急性期入院医療を対象とした一日あたり包括払制度のこと。2022年4月時点で、急性期一般入院基本料等を届け出る病床の48%にまで達している。ちなみに、アメリカなどでは、DPCではなく、DRG。DRGの場合は、一連の入院を包括するもの。日本は一日あたりを包括するもの。そのため、早期退院に結び付きにくい。そこで、入院期間を3つに区分けして、平均在院日数よりも早く退院させることに対するインセンティブを設定するなどしている。
このDPC/PDPSは、所定の要件を満たした医療機関の参加を募り、一定の準備期間を経て、DPC対象病院となる。これらDPC対象病院で行われた診療の内容等については毎年3月に「DPC導入の影響評価に関する調査」として、詳細に報告され、公表される。それを「DPC導入の影響評価に係る調査「退院患者調査」」という。なお、DPC対象病院以外でも、「データ提出加算」を届け出ているいわゆる「出来高算定病院」も公表されている内容に含まれており、幅広く急性期入院医療の現状などがわかる。エクセル形式でファイルのダウンロードも可能になっているため、自前で分析することなど便利に使える。つい最近、私も特定の地域での再入院率を確認するためや、後発医薬品の使用割合などの状況を確認するために利用したところ。また、この「退院患者調査」等を基にした、様々な可視化情報も公表されている(石川ベンジャミン光一先生のtableau など)。
ところで令和2年度となる退院患者調査が今年3月に公表されている。また、2022年6月1日の中医協総会でDPCの機能評価係数Ⅱに関する詳細な内訳など分析、検討されている。こちらはやや注意が必要だ。それは、COVID-19感染拡大の影響と思われるものが感じられるからだ。平均在院日数(14日以内が理想)や病床利用率(80%以上が理想)がやや悪化している。COVID-19感染患者の対応の多くはDPC対象病院がになったといえるので、その影響ではないかと思われる。そのことは、機能評価係数Ⅱにも表れている(参照:令和4年度のDPC対象病院の係数等が公表。算定ルールの見直しなど確認します。)。今回はCOVID-19感染患者の影響を大きく受けている期間を除外することとなっており、COVID-19感染者数の多かった地域と比較的多くなかった地域とで対応が異なり、これまでと機能評価委数Ⅱの設定に変化が感じられる。
合わせて今回の診療報酬改定でのDPCの主な変更点を確認すると、以前お伝えした早期退院に対するインセンティブの強化と日帰り手術の他に、転院患者の扱いについて一部ルールの見直しが行われた。これは特に、DPC対象病院で回復期の病床を有する病院等に対するもので、他の病院から転院で患者を受けいれ、自院の回復期病棟に転棟させるというものへの対応と考えられる。そこで、直接入院と転院入院とで評価を分ける診断群分類を新たに設定している。心不全や大腿骨近位部骨折で手術を伴わないものなどだ。
DPC対象病院の中にはすべてがDPC病床というわけではなく、むしろ、回復期病床の方が病院に占める病床数の割合が高い病院もある。そのため、DPC対象病院の中にも病床稼働率を維持するべく、平均在院日数が長くなっている病院も少なからず存在する(参照:続・地域医療の再編を巡る話題(病床の基本的な考え方を整理します))。DPCは医療の標準化も重要な目的となっているため、いわゆる「外れ値」があれば補正をし、DPC対象病院全体の標準化と質的向上を絶えず図っていくものだ。