骨太方針2022には、地域医療構想のさらなる推進の一つの手段として、地域医療連携推進法人の有効活用が明記された。地域医療連携推進法人とは、あくまでも地域医療構想を実現するための一つの手段であり、法人が自ら「決めていく」という意思表示であり、緩やかなダウンサイジングと医療資源のリソースを有効活用・共有するもの。2022年4月時点、全国に30法人がある。
参照
地域医療の再編を巡る話題(地域医療構想と地域医療連携推進法人)
2022年・春の建議を読む ~地域医療連携推進法人に包括支払の導入、地域フォーミュラリ、リフィル処方箋など~
有効活用するための新たな方策については、これから議論されることとなるが、その概要は春の建議に記載されている。キーワードは「診療報酬体系を横連携型の体系へシフト」、「患者単位での評価」、「競争よりも協調」の3点だ。
一見するとわかりにくい「横連携型の体系」だが、これは地域拡大版DRGと言えるもの(Extended Diagnosis Related Group:拡大版DRG、という表現もあるようだが、文献や実例を私は知らないのでひとまず地域拡大版DRGと勝手に表記)。言葉を整理すると、日本ではDPC方式による急性期入院医療の評価が導入されているが、これは一日当たりの包括。そのため、入院している限りは診療報酬が発生するため、平均在院日数の短縮化や診療の効率化へのインセンティブが必要になる。アメリカなどでは、DRG方式による評価で、これは一入院当たりの包括。入院期間まで含めているので、平均在院日数の短縮化などに効果がある。日本では、短期滞在手術等基本料はこのDRG方式に該当するので、厳密に言えばDPCとDRGが混在している。そして、地域医療連携推進法人に適用としているのが、今回の地域拡大版DRGと言えるもの。これは、術前検査から入院、手術、そして退院後の経過観察のあたりまでを一括りにするもので、この一括りを春の建議では「患者単位(で)エピソード」と表現していると思われる(episodeの頭文字の「e」をとってeDRGでもよいかもしれない)。似た概念に「ディジーズ・マネジメント(Disease Management)」というものがあるが、こちらは慢性疾患の重症化予防に関するアプローチ方法で、地域内でチーム医療を行い、期待される成果(アウトカム)に対する評価を行うもの。
これから議論されるかかりつけ医認定制度や既存の地域包括診療加算、そして将来的な外来診療の定額制において改めて議論されることになるのではないだろうか。
しかしながら、地域医療格差、医師偏在の解消がなかなか進まない現況においては、この横連携の評価はまだまだ難しいようにも思う。実現するには、医療資源の「均てん化」が必要になってくる。その準備となるのかわからないが、今回の診療報酬改定では骨粗鬆症を有する骨折患者に対する連携を評価する項目「二次性骨折予防継続管理料」が新設された。これまでも、大腿骨頚部骨折や脳卒中に関する連携を評価するものがあったが、ガイドラインを利用することや研修など、医療の質に若干踏み込んだものとして、さらに、継続診療として1年間フォローすることを評価するものとして注目される。エピソードであり、外来定額制を予見させるもの。
競争よりも協調、という言葉にあるように、今回の診療報酬改定においても、役割分担や負担の分散。地域でのカンファレンスといったものが目立つ内容となっている。個人的には、アフターコロナということもあり、本格的少子高齢者に向けて、地域医旅を共創する、という発想が重要だと感じている。