COVID-19感染拡大ではかかりつけ医を始めとする医療提供体制に関する脆弱性や緊急時の対応の弱さが指摘されたところだが、それは医療に関する製品などでも指摘されたところ。代表的なもので言えばマスクやワクチンなど。国の安全保障として、有事の際の商品供給・物流の観点から、国内での製造・管理は必要だと改めて認識され、2022年5月11日「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(経済安全保障推進法)」が成立し、5月18日に公布となった。まだ予定だが医薬品を「特定重要物資」に指定し、生産基盤の整備、供給減の多様化、備蓄などに必要な支援を受けることが可能となる。衛生材料や高度医療機器なども期待されるところ。
私自身のことだが、AMED医工連携イノベーション推進事業(地域連携拠点自立化推進事業)として、「九州版エコシステム構築に向けた医療機器開発・事業化促進のための広域かつ包括的な企業群支援・育成の研究」に微力ではあるが、携わらさせていただいている。医療制度やマーケットに関する解説をする動画資材の企画や販路コーディネータとしての助言などの役割を担っているところ。医療機器といっても幅広く、いろんなものがあるが、総じて思えるのは国産品が少ないと感じる場面が多々あることだ。例えば、車いす。世界で最も高いシェアとなっているのは「オットーボック(ドイツ)」で約42%を占める(2020年時点)。日本の最大手「日進医療器」は世界で1.2%(2020年時点)となっている。さらに、こうした国産品が少なく、海外製品が多いことは医療事故の発生や先ほどの車いすに関連して言えば、褥瘡の発生にもつながる。大柄な外国人のサイズに合ったものが少なくなく、比較的痩せの多い日本人では利用にあたってギャップが起きることが多々ある。例えば、車いすなどがまさにそうで、ずれなどが起きやすく、褥瘡につながりやすいともいわれている。
医療機器に限らずだが、海外のデータと日本のデータを比較する時には保険制度も含めて注意が必要なことがここからも分かる。例えば、アメリカでは民間保険が多いことや人種問題
もあり、医療機関に裕福で体格のよい白人が多い。そのため、皆保険制度のおかげで幅広い人を見る日本と比較すると、データの偏りに引っ張られてしまうことがある。栄養に関するデータなど注意が必要だ。
海外製の医療機器等が何も悪いということではない。使い方の視点が大事だ。基本的な視点としては、医療機器の仕様に無理に患者を合わせるのではなく、患者の状況・状態に医療機器を合わせる、ということ。先ほどの車椅子で言えば、ピローなどを上手く活用するなど。医療事故の発生要因として医療機器にまつわるものが多いと言われているが、改めて、患者に合わせて使っているか、無理に医療機器に患者を合わせていないかを確認しておきたい。