後発医薬品使用促進策に関する金額ベース65%という新たな目標。その意味と今後の対応。

3/19/2024

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令和6年3月14日、厚生労働省にて第176回社会保障審議会医療保険部会が開催され、後発医薬品の使用促進に対する新たな目標について議論された。

昨年の第四期医療費適正化計画に関する議論の中で、金額ベースによる新たな目標値の設定を検討することとされていたが(参照:数量ベースから金額ベースへ。後発医薬品の使用促進策の今後)、第四期医療費適正化計画のゴールである2029年度末までに、65%という金額ベースの副次目標を設定する方針だ。副次とあるように主たる目標ではない。あくまでも、全都道府県で数量ベース80%以上という目標が主たるものであって、副次的な目標として今回の金額ベースの目標、そして昨年設定されたバイオシミラーの目標(80%以上を占める成分数が全体の成分数の60%以上)を設定するというもの。


供給不安の問題があるものの、将来を見据えた医療費抑制の取組の一つとして、後発医薬品に使用促進は引き続き行われる。今後、人口全体に占める高齢者割合が高まると共に、高齢患者が増えてくる。高齢患者の場合は、診療日数も長期にわたるし、医療技術の進歩がさらにその長期化を後押しする。とりわけ、生活習慣病の重症化対策が重要であることから、服用し続けることが大事だ。そこで、後発医薬品の積極的な利用が必要になってくる。昨年公表された改革工程表2023の中でも後発医薬品の更なる使用促進策の検討が盛り込まれ、そこにはフォーミュラリの利活用についても記載がある。診療報酬・調剤報酬ではフォーミュラリに関する評価等は見られなかったが、今後は保険者による地域医療機関や住民への周知、そして保険者を巻き込んだ地域フォーミュラリ策定の取組課題になってくる。なお、保険者には「保険者努力支援制度」があり、その制度の中で後発医薬品の使用促進に関する取組の実績がインセンティブとして評価されるようになっている(参照:国民健康保険制度の保険者努力支援制度の集計結果について)。


今回の副次目標としての金額ベース65%というのは、現状を踏まえた現実的な設定だといえる。現状が56.7%になっていることを基に、さらに置換の余地がある領域があり、その領域が置換られていくこととなる。置換余地のあるボリュームの大きな「他に分類されない代謝性医薬品」など注目される。


後発医薬品の使用促進については、本年10月からの選定療養を利用した長期収載品の一部患者自己負担も始まる。今月中には進めるにあたっての通知及びガイドラインが厚生労働省より公表される予定になっている。生活保護者への対応、難病助成を利用している患者の場合の対応、入院患者への対応についても気になるが、インボイスの発行なども細かな点で確認をしておきたいところだ。

バイオシミラーの置換についても同様だが、基本的に診療を継続している患者に対しては、制度の説明はするものの、現状でうまくいっている場合は患者の経済事情等を含めた要望がなければ、自己負担について理解いただいたうえで継続することになるケースが多くなると思う。その一方で、新規治療開始となる場合は、後発医薬品からの開始を選択肢に入れて提案することになるだろう。なお、治療を継続している中での後発医薬品への切替においては一種類ずつ様子見をながら切り替えていく「分割調剤」の利用も検討することが必要であると共に、AGの提案、なかでもオートジェネリック(生物学的同等性試験が不要なAG)を紹介することなども意識しておきたい。

フォーミュラリの促進、後発医薬品の提案、医療費適正化の観点は重要なことだが、もっと重要なことは、患者にとっての最善であるかどうか、ということ。そのためにも、患者への丁寧な説明とコミュニケーションは今後より重要になってくる。かかりつけ医機能に求められる一つの要素であるともいえるだろう。

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