回復期リハビリテーション病棟の入院患者像やセラピスト等の専従要件を見直しへ。訪問薬剤管理指導は薬局間の連携を後押しへ。
令和7年11月14日、第627回中央社会保険医療協議会 総会が開催されている。回復期リハビリテーション病棟入院料・リハビリテーション全般・多職種連携・訪問薬剤関連・長期収載品の選定療養についての議論となっている。長期収載品の選定療養については、社会保障審議会医療保険部会でも、患者の自己負担割合を現行の1/4から1/2・3/4・1/1へと引き上げる選択肢が提示されている。また、後発医薬品に関する診療報酬改定の議論ともつながってくるため、議論が煮詰まってくる段階を見計らって詳細を解説するようにしたい。
参照:第202回社会保障審議会医療保険部会で、後発医薬品のある長期収載品の選定療養費に関して、患者負担割合を1/2・3/4・1/1に引き上げることが論点に挙げられています。
参照:OTC類似薬の保険適用の見直し、バイオ後続品のある先行バイオ医薬品を選定療養に加えるのかなど、薬剤給付のあり方の議論がはじまる
参照:生活習慣病管理料の包括範囲の見直しを検討へ。バイオ後続品のさらなる使用促進、地域でのポリファーマシー対策について薬剤数に限定しない評価を
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医療政策ニュースのつぶやき
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回復期リハビリテーション病棟の重症割合・実績指数の見直しへ
入院・外来医療等の調査・評価分科会の議論で、回復期リハビリテーション病棟においてFIM利得が0点やマイナスとなっている病院が一定数あることが報告されていた。そうした現状から浮かび上がってきたのが、重症割合の妥当性だ。重症割合を満たすためにある意味で「無理」をして受け入れていることがその理由の一つとしても考えられる。
参照:包括期病床(急性期一般4-6・地域包括医療病棟・地域包括ケア病棟)の整理の方向性、FIM利得に関する新たな評価の可能性、そして療養病棟の栄養管理の課題
今回、厚生労働省からはFIMの運動項⽬が20点以下の患者はリハビリテーションの効果が低いことを示すデータが示され、重症割合から除外することが提案され、今後議論を深めていくこととなりそうだ。
リハビリテーション実績指数についても今後の議論の方向性が明らかになっている。大きく2つの方針がある。
まず一つは、入院料2・4では現在実績数は要件になっていないこともあってか実績指数が低い病棟があることから、入院料2・4でも実績指数の要件を新たに設定する方針だ。
そしてもう一つは、実績指数の除外基準の見直しだ。入院・外来医療等の調査・評価分科会においても議論が行われてきたところで、今回、分析結果をもとに、除外基準の見直しの方向性がやや明確になってきた。具体的には、年齢が80歳以上の患者、FIMの認知項⽬14点以下の患者でもリハビリテーションの効果が一定程度確認できることとが示され、除外する方向性で議論が進むこととなりそうだ。
また、厚生労働省からは「FIMの下位項目の中でも、歩行やトイレ動作が5点(監視)~6点(修正自立)程度まで改善した場合は在宅復帰の割合が大きく上昇すること」についての議論も求められている。
参照:賃上げに向けた評価の整理、回復期リハビリテーション病棟入院料・療養病棟入院料に関する要件の見直し、嚥下調整食に対する評価の可能性など課題の明確化と整理が行われる
トイレ動作と移動の点数を高めるリハビリテーションの実施に対する評価の新設や点数の重み付けなど注目したい。
なお、当日はリハビリテーション全般に関する議論も行われている。その議論の中で疾患別リハビリテーション料におけるセラピストの専従要件の緩和について議論されており、その中で、FIMの運動項目が20点以下かつ要介護認定4・5の患者に対するベット上リハビリテーションについて、単位数増加に伴う改善は見られないことなどが示された。また、医療機関外での60分を超える疾患別リハビリテーションの実施を行う医療機関もあることから、専従要件の緩和と同時にリハビリテーションの適正化についても議論が進められることとなり、成果の出るリハビリテーションの環境整備が進められていく。
その他、回復期リハビリテーション病棟に関連しては、以下についての議論が今後進めされていくこととなる。
・日常生活機能評価表とFIMを負担軽減の観点からFIMに一本化すること
・入院料1もしくは更に上位の入院料を設定し、排尿自立支援加算や摂食嚥下機能回復体制加算等の届出を求める
・退院前訪問指導を包括外とすること
・休日リハビリテーションに係る施設基準について、リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算等の基準をベースに、入院料1・2では平日の8割以上に引き上げ、入院料3・4では平日の◯割以上といった基準を設けること
・高次脳機能障害の患者に対する支援拠点機関や障害福祉サービス事業所等のネットワーク構築を評価すること
・地域支援事業への参加について、入院料1・2では「望ましい」から義務化へ、入院料3・4では「望ましい」を検討
退院時リハビリテーション指導料、摂食機能療法、リンパ浮腫複合的治療料を見直しへ
リハビリテーション全般に関する議論では、退院時リハビしテーション指導料等に関する見直しの議論が行われている。
退院時リハビリテーション指導料については、疾患別リハビリテーション料を算定していない患者や短期入院の患者に対しても算定されていることを問題視し、要件が厳格化されることとなりそうだ。
摂食機能療法については、食事観察や介助のみで介入している病棟が一定数見られることから必要とされる介入について今後議論し、見直すこととなる。
リンパ浮腫複合的治療料については、1回の指導に現行ルールよりも長い時間を要することもさることながら、そもそも届出施設自体が少ないこともあり、患者にとって不都合が生じていることが課題となっている。実績要件の緩和や要した時間に見合った評価などについて議論されていくこととなる。
その他、早期リハビリテーションを促進する観点から初期加算にリハビリテーション開始までの日数の要件を設定(3日以内の介入)することや目標設定等支援・管理シートとリハビリテーション総合実施計画書の合理化について議論が進められていく方針だ。
リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算、要件の緩和も含めて議論を
成果が着実に出ているリハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算だが、要件が厳しいという声が多く聞かれる。実際、届出は非常に少ない事もわかっている。安易に要件の緩和をすることで、成果に影響が出てはいけないことから、慎重な議論が求められるところ。
厚生労働省からは、口腔衛生などリハビリテーション以外の取り組みに着目した資料が示され、要件の緩和の一方で、成果が出ていないことに着目した見直しの議論の方向性が示された。医科歯科連携の推進がポイントになりそうだ。
また、高齢患者の多い急性期病棟における多職種連携を促進するための評価等の在り方についても議論されている。先に紹介した疾患別リハビリテーション料の専従要件の緩和にも関連してか、セラピストの病棟業務への関与状況の実態や、管理栄養士の病棟配置を促進するためのの出来高算定・併算定の課題、臨床検査技師を病棟に配置することの効果などが示された。診療報酬上の評価や施設基準の見直し、専従・専任要件の見直しなど検討されることとなりそうだ。
在宅薬学総合体制加算2、無菌調剤設備の要件を見直して薬局間での連携でかかりつけ機能を発揮へ
令和6年度調剤報酬改定で新設された在宅薬学総合体制加算だが、都道府県ごとに届出状況にばらつきはあるものの、整備は進んでいる。対物業務から対人業務の比重を高めていく流れに沿っているとも見える。
新たな地域医療構想では、外来・在宅・介護施設も含めて地域の医療環境を整備していくことが求められることとなるが、薬局は整備においては対象外ではあるものの、再入院の予防、地域での適正服薬管理による協力が求められるところ。そう考えると、在宅薬学総合体制加算を届出る薬局の整備はこれからも必要であり、地域ごとのばらつきをなるべく最小化していくことが必要だ。そうした観点で、今回の議論では在宅薬学総合体制加算2の届出薬局において、無菌製剤処理加算の算定実績が少ないことが明らかにされた。
機能の高い在宅薬学総合体制加算2の届出を増やしていくためにも、無菌調剤の整備の要件を見直し、無緊調剤の設備のある近隣薬局との連携によって要件を満たせるようにすることとなりそうだ。
在宅患者訪問薬剤管理指導料についても議論が行われている。在宅患者訪問薬剤管理指導料1は主に患家(1人もしくは夫婦それぞれなど)に訪問して算定されるものだが、同一建物の複数名に訪問するケースに比べて、比較的重症度の高い患者に対応をしていることが示されている。その一方で、居宅療養管理指導費(介護保険)との報酬差の課題があげられている。あわせて、算定間隔が6日以上となっていることによる弊害(患者都合によって訪問が前倒しになることなど)についても厚生労働省から議論が求められ、患者の重症度に応じた適正な評価・介護保険との整合性や在宅訪問における柔軟な対応・薬局間の連携による対応を後押しする見直しが今後議論されていくこととなりそうだ。
その他、薬局による在宅訪問に関しては、以下の点についても今後議論が進めされていく予定だ。
・精神疾患患者に対する薬局薬剤師による訪問薬剤管理指導について、訪問看護のように複数名で患者宅に訪問する場合の調剤報酬上の評価の検討
・ポリファーマシー対策の評価について、医師と在宅に同行訪問して実施した場合の評価の新設を検討
・介護施設等からの薬局に対する見返り要求についての厳格な対応
ここまでの令和8年度診療報酬・調剤報酬改定の議論をみて感じるのは、現行ルールにおける不具合や違和感の解消がテーマになっていることだ。医療機関・薬局の経営悪化が大きな話題になっているが、不具合・違和感が経営環境の改善につながることが期待されそうだ。






















