包括期病床(急性期一般4-6・地域包括医療病棟・地域包括ケア病棟)の整理の方向性、FIM利得に関する新たな評価の可能性、そして療養病棟の栄養管理の課題
令和7年6月13日、令和7年度第3回入院・外来医療等の調査・評価分科会が開催され、包括期病床(地域包括医療病棟・地域包括ケア病棟・急性期一般入院料4-6)・回復期リハビリテーション病棟・療養病棟入院料に関する令和6年度診療報酬改定後の現況確認と、診療報酬改定に向けた論点探しのための課題の明確化作業が行われている。今回の議論は、令和7年5月に開催されている第2回分科会でも診療報酬改定結果検証の資料が公表されており、本ブログでもポイントとなりそうな箇所をピックアップして解説しているので、合わせて確認いただきたい。
参照:療養病棟における栄養管理体制の構築や病棟薬剤業務にとって負担となっている持参薬確認など、令和8年度診療報酬改定に向けた課題の明確化へ
包括期病床に関する内容を重点的に確認していこう。
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急性期からの移行が進む地域包括医療病棟。ただ、包括期病床の違いと整理をどうするか?
DPC対象病院からの移行も進む地域包括委医療病棟だが、今回の議論では概ね厚労省がもくろんだ通りの展開となっているように見えるが、件数としては必ずも多いとは言い難いのではないだろうか。
なお、転換する病院の傾向としては地域包括医療病棟単独の病院はまだ少ない結果も出ている。初めてのことでもあるので、手さぐりになるのは仕方ないところだが、複数の機能があることで、患者の受入れをどの機能で担うかなど難しい場面も出てくる。特に地域包括医療病棟は転倒割合の厳しい要件がある。
なお、以下の資料は弊社(HCナレッジ合同会社)による集計結果。昨年4月本年4月の急性期一般入院料の届出件数の比較、本年3-4月の地域包括委医療病棟の届出件数の推移と届出をしている病院に関する情報だ。直近の状況をみると、届出数にやや頭打ち感がある。
以前もお伝えしているが、なかなか地域包括医療病棟の件数が伸びない理由としては、様々な実績や転倒割合の要件があるなどのほかに休日リハビリテーションの提供が困難であることが挙げられている。要件を緩和することによる質の低下などのリスクもありうるが、高齢者救急に対応できる病院の環境整備を優先していくことを考えるのであれば、見直しも考えられるだろう。
とはいえ、あくまでも全体的な傾向に過ぎず、医療機関個別にみるとやはりばらつきがあるのは確か。地域包括医療病棟において、 医療機関 ごとに、診療している疾患の内訳にはばらつきがあった。
ところで、包括期に期待されるのは従来の回復期だけではなく、高齢者救急だ。そこで、救急受入れの実績・傾向に着目してみると、次のような傾向がわかっている。
・精神疾患を有する患者の受入れが少ない。
・入院~退院までの ADLの変化は、地域包括医療病棟と急性期病棟とで大きな違いはない。
・救急受入や在宅等との連携に関する加算等(救急医療管理加算、在宅患者緊急入院診療加算、入退院支援加算、介護連携指導料、退院時共同指導料)の算定回数を医療機関単位で比較すると、急性期病棟をもつ病院、在宅療養後方支援病院、在宅療養支援病院でいずれも多い傾向にあった。
・地域包括医療病棟、地域包括ケアを有する 200床以上の病院において、在宅療養後方支援病院である病院はそれ以外の病院と比較し、救急や在宅等との連携に係るいずれの加算等の算定件数も多かった。
・地域包括医療病棟を有する 200床未満の病院において、在宅療養支援病院である病院はそれ以外の病院と比較し、救急や在宅等との連携に係る加算等の算定件数が多かった。
・地域包括ケア病棟を有する 200床未満の病院においては、救急搬送の受入と救急医療管理加算について、在宅療養支援病院でない医療機関の算定件数が多かった。
在宅療養後方支援病院・在宅療養支援病院の届出がある病院の場合は体制が整備され、一定のノウハウを持っていること、地域での認知度が高いと考えられることなどが実績に大きく影響し、アドバンテージとなっていると考えられる。こうした在宅医療に関与する病院による届出に期待が集まる。
包括期と一括りにされ、その機能・役割をどのように整理していくか、入院患者の傾向・対応する疾病・連携の観点から議論されていくことも考えられるが、個人的には急性期一般4-6・地域包括医療病棟・地域包括ケア病棟の3つを包括期病床として統合して、人員配置や病棟薬剤業務実施加算などの体制整備の加算を設けるとともに、DPCのように実績や地域性に応じた係数を設定・加味していくことなどが現実的な対応となるのではないだろうかと思う。
回復期リハビリテーション病棟、FIM利得が0点の患者が多いという結果
地域医療構想が始まった当初は、回復期不足が騒がれていたように記憶しているが、件数は増加の一途をたどり、いよいよ天井に達しているようにも見える状況となっている。地域差はあることだろうが、全体数としては充足の域に近く、今後は質を高めていくことに寄与する評価となっていく。
しかしながら、今回の議論で明らかになったのはFIM利得(ADL状態を評価するFIMを使った入棟前と退棟時のFIM点数の差。大きいほどADLが改善)が0点の患者が最も多いこと、施設後にみるとFIM利得がマイナスになる患者もいることが分かった。
疾患や病態によるところもあるだろうし、患者の年齢・体力、そして認知機能も影響することなので、原因を慎重に確認する必要がある。回復期リハビリテーション病棟には、介護が必要な認知症高齢者が一定数入院していることも確かだ。その一方で、患者にとって過度なリハビリテーションになっていないかなども気にかかる。こうした現状から考えられることとしては、FIM利得が0~マイナスになる患者割合の許容範囲を設定することや、許容範囲超える場合の減額評価を設けることなども考えられそうだ。リハビリテーションは体制評価よりも、成果を評価する方向に向かっている。今後の動向を注視しておきたい。
療養病棟入院基本料、中心静脈栄養の実施状況に大きな変化なく
療養病棟入院基本料については、医療区分の大きな見直しがあったところ。また、中心静脈栄養に関する扱いや経腸栄養管理加算の新設など、患者の自立度を高めることで、カテーテル感染等のリスクを抑え、看護師をはじめとする医療従事者の負担軽減を図るための栄養領域の見直しが行われたところ。
しかしながら、中心静脈栄養の実施状況に大きな変化はなく、さらに中心静脈実施中の患者に高い頻度で身体拘束が実施されていることが分かった。
また以前もお伝えした通り、経腸栄養管理加算の算定は少なく、その原因として栄養サポートチームがないことが挙げられている。さらに、摂食機能又は嚥下機能の回復に必要な体制が整備できていない病院が一定割合あり、必要とされる検査体制の整備が困難等の理由で9割の病院が今後も届出る予定はないとしている。
参照:療養病棟における栄養管理体制の構築や病棟薬剤業務にとって負担となっている持参薬確認など、令和8年度診療報酬改定に向けた課題の明確化へ
中心静脈栄養については、患者・家族からの要望があるのが実状。しかし、現状のままでは医療区分1への引き下げも現実味を帯びてくる。ただ、様々な理由があっての中心静脈栄養であるとも考えられるため、調査の上、対象となる患者を厳格化していくことも必要だろう。これまでのような厳格化の連続による効果を期待するのは限界に来ているようにも思う。療養病棟にあった栄養サポートチーム加算の考え方(近隣医療機関からのサポートを得る形式など)も重要になってくるのではないだろうか。