令和7年6月19日、第4回入院・外来医療等の調査・評価分科会が開催されている。今回は、外来医療について。今年度から始まるかかりつけ医機能報告制度、そして新たな地域医療構想において外来・在宅も対象に含められることから、令和8年度診療報酬改定で注目される領域だ。今回の分科会では、かかりつけ医機能・外来診療・オンライン診療の3点についてだ。
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かかりつけ医機能について改めて問われるとともに、制度の整合性を図るには?
診療報酬では地域包括診療料・加算、在宅療養支援病院・診療所、在宅時医学総合管理料・施設入居時等医学総合管理料、小児かかりつけ診療料といった届出のある医療機関を課かかかりつけ医機能があるとして評価している。さらに、これらの届出のある医療機関で在宅診療等の実績があれば機能強化加算の算定が可能となる。また、時間外対応加算や連携強化診療情報提供など体制整備や連携に関する評価もかかりつけ医機能に関わるものとされている。
かかりつけ医機能とは診断後の継続診療で主に役割を発揮していくものだが、機能強化加算の場合は初診時の評価であり、初診後のかかりつけ機能を発揮していく前段階の環境整備や患者に合わせて妥当と考えられる医療機関に適切に紹介し、かかりつけ医機能の発揮の環境整備を行うことが期待されているといえる。届数は現在横ばい状態で、高止まりしていると言える。
この機能強化加算については、新たに始まるかかりつけ医機能報告と概ね重複するものではあるものの、異なる点として、1号機能における17診療領域・40疾患への対応があげられる。
診療報酬上のかかりつけ医機能報告の場合は、高血圧症・糖尿病・脂質異常症・慢性心不全・慢性腎臓病・認知症・小児疾患など対象が明確になっているものはあるが、かかりつけ医機能報告制度はさらに対象は広い。機能強化加算については、春の建議でもあったように、かかりつけ医機能報告の開始に合わせて廃止することなど提案されている。
かかりつけ医機能報告への参画を要件とし、対応できる診療領域数などに応じた新たな加算なども考えられるのではないだろうか。個人的に注目したいのは、かかりつけ医・総合医のための実習の受入れ実績に関する評価の可能性だ。
また、地域包括診療料等と認知症地域包括診療等の整理についても今後注目が集まる。届出がイマイチ増えていない理由として、24時間対応薬局との連携がよく挙げられている。薬機法改正に伴い、健康サポートの薬局や認定薬局についても見直しが図られることから、薬局側の取組に期待したいところだ。
地域包括診療料・加算を算定する医療機関での疾病別患者数についても調査されている。対象疾病の拡大やかかりつけ医機能報告制度における、17診療領域40疾患との整合性など今後注目しておきたい。
小児かかりつけ診療料については、前回改定で診療料1で発達障害等に関する適切な研修及び虐待に関する適切な研修を修了していることが望ましい、という要件が加えられた。「望ましい」という表現は、いずれ必須要件になると考えておくとよいだろう。
なお、令和6年度診療報酬改定後にはじめて小児かかりつけ診療料の届出をした医療機関について、届出を行った理由を聞いたところ、「予防接種を実施するようになったため」が最も多かったとのことだ。
特定疾患療養管理料から生活習慣病管理料への移行が進むが、療養計画書の負担は重い
令和6年度診療報酬改定では、特定疾患療養管理料から生活習慣病領域を切り離し、生活習慣病管理料で評価をしていくこととなった。また、主傷病名が糖尿病、高血圧症、脂質異常症である外来患者について、日常的な管理指導等に係る診療報酬として算定されているものを集計したところ、令和4年では外来管理加算が最も多かったが、令和6年では、生活習慣病管理料(Ⅱ)が最も多かった。
患者数から考えればわかるように、生活習慣病管理料(Ⅱ)の算定件数は増えている。しかしながら、療養計画書の作成・交付はやはりネックになっているのがわかる。しかし、患者にとってみると療養計画書は一定の効果があることもわかっている。なお、患者及び医師共に継続診療に「予約診療」が重要だと考えていることがわかる。
療養計画書については様式の見直しやマイナ保険証による受診と合わせた電子カルテ情報共有サービスの導入を促進することが患者のメリットを損なわず、診療の質の低下を招かないこととなると期待されるのではないだろうか。予約診療サービスも含めてDXへの対応が急がれることとなるだろう。
さらに、この日は外来データ提出加算の届出が低調であることも課題として挙げられている。政策の決定のための情報の質を考えると、安易な要件緩和は今後の政策に影響を与えてしまうことになる。ただ、負担軽減が必要であることから、提出する項目の合理化もさることながら、やはりDX対応を進めていくことが必須だ。
ところで、生活習慣病管理料等の継続診療の維持向上に関しての議論も行われている。生活習慣病管理料(令和6年度診療報酬改定前)を算定する患者の半年以降の継続受診について、期間が長くなるほどに悪くなっていく、というものだ。
患者が勤労世代なのか高齢者なのかで状況や治療方針も異なり、必要性や頻度も変わってくることが考えられるので継続算定率については何をもって良いといえるのか悪いといえるのかはわからない。さらに言えば、重症化していれば他の専門医療機関に紹介することもあるだろうし、患者本人の居住地の変更もある。今回の結果に対してどういった読み解き方をするか、今後注視しておきたいテーマだといえる。
春の建議では生活習慣病管理料について、ガイドラインに沿った内容とするべく病状が安定してきた患者に対する算定頻度の見直しなどが提案されている。今回継続算定率が取り上げられていることとの関連性を考えて注目しておきたい。
オンライン診療と対面診療の違いを改めて精査を。見直された遠隔連携診療料、あまり進まず
情報通信機器を用いた診療としては、D to D・D to P・D to P with D・D to P with Nといった方法がある。そして、これらの方法の運用に関する指針も整備されている(受診勧奨までは適用だが、情報提供は適用外)。今回、それぞれの現状について報告されている。
D to Pについて、届出医療機関は増加の傾向だ。新型コロナ禍がその後押しとなったといえるが、算定回数自体はそれほど多いとは言い難い。患者側からの要望が思ったほど少ないことなど考えられるではないかと思われる。私自身も、通院治療を3年以上継続しているが、やはり検査・処置をすぐにしてもらえることのメリットが大きいと感じている。しかし、災害発生時などは別だ。また、長期出張に出ている際などもそうだ。いつもと環境が違う緊急時などでは有用なのは間違いない。
また、オンライン診療の届出をしていない医療機関に対しての調査も行われている。届出の意向はあるものの届出ができていないケース、届出の意向がないケースに分けて調査されているが、後者の割合が今回の調査が圧倒的に多い。後者の理由をみてみると、患者のニーズがないこと・運用コストの順に多い。緊急時に限定して利用するということを考えると、環境整備だけでもしておいてもよいかとは思うが、システムの維持管理費は決して安くはない。導入するからには、ある程度利用していかなければ採算が悪くなるのも理解できる。
なお今回の調査ではコストについても調査されており、オンライン診療のシステム導入時の初期費用の中央値は27.5万円、月額維持費用の中央値は1万円/月であった。システム利用に係る患者からの費用徴収をしている医療機関は約29%、徴収額の中央値は600円ということだ。
受診全体の中でのオンライン診療の割合についても調査されている。初診でみてみると、オンライン診療による診療が1割を超える医療機関は18.6%あり、5割を超える医療機関は5.4%あるとのことだ。しかし、それが再診・外来診療料となると1割を超える医療機関は急激に減っているのがわかる。
そこで、対⾯診療が5割未満の医療機関において初診・再診のオンライン診療でどういった疾患の患者が多いのかを確認してみると、初診では急性上気道炎が、再診では適応症が多いことがわかっている。特に再診では、うつ状態や不眠症などの精神疾患も上位にある。今後、初診からオンライン診療を受けた患者のその後の受診動向や再診での精神科領域の診療について、対面とオンラインでどういった違いがあるかなどを確認していくことになるだろう。
再診ということで言えば医学管理料においてもオンライン診療での対応が可能となるものが増えてきている。特に、令和6年度診療報酬改定からは生活習慣病管理料Ⅱもその対象となり、件数が大きく伸びている。皮膚科特定疾患指導管理料なども令和6年度診療報酬改定以降大きく伸びているが、一方で主に専門医療機関等が対象となるであろう領域を中心に全く実績のないものも多い。
オンライン診療をすることが目的ではないが、医療従事者と患者の負担軽減になるポイントを見出し、治療の選択肢の一つとして提案していくことなども今後は考えたい。医療機関の働き方改革では外来診療が最も難しいといえ、自院の都合だけではコントロールできないため、患者の理解と協力をいかに見出せるかが鍵となる。
在宅において定可能な在宅管理等の算定回数については、在宅時医学総合管理料及び施設入居時等医学総合管理料における総算定回数に占める情報通信機器を用いた診療の割合は、それぞれ0.038%、0.029%であったとのこと。在宅自己注射指導管理料の算定回数は増加傾向だ。
D to P with Dとしては、遠隔連携診療料がある。令和6年度診療報酬改定からは、難病患者の診断確定後の継続診療も対象となり、大きな期待が寄せられるところだが低調だといえる。
遠隔連携診療料を算定する患者の場合、200床以上の紹介受診重点医療機関や地域医療支援病院においては逆紹介患者としてカウントできることになっているため、紹介率・逆紹介率の計算で有利に働くこともある。難病及びてんかんの診療連携拠点病院の数は少なく、複数疾患を持っている患者にとっては受診回数を減らすこともできる。認知度を高め、個人的にも普及を後押ししたい。
令和6年度診療報酬改定では、D to P with Nについても評価されるようになり、届出・算定件数ともに増えている傾向にある。必要な研修の受講者も多い。
以前もお伝えしたが、D to P with Nには一点大きな課題もある。それは、診療補助としては評価されるものの、看護師による処置等については評価されない。そのため、遠隔で看護師による処置を行った場合は、自費診療となってしまう。そこで、規制改革推進会議では、令和8年度診療報酬改定において、そうした課題への対応を提案している。利便性向上に伴う、さらなる拡大が期待される。
冒頭でお伝えしたように、かかりつけ医機能報告制度と新たな地域医療構想の開始を踏まえ、診療報酬におけるかかりつけ医機能をはじめとする外来医療の在り方をどのように整合性をもって整備していくかが令和8年度診療報酬改定では重要なポイントとなるのは間違いないだろう。