令和7年度春の建議に向け、医療提供体制・診療報酬・調剤報酬に関する議論が行われる
令和7年4月23日、骨太方針2025に向けた財務省からの提案となる春の建議を議論する財政制度等分科会が開催され、社会保障領域について議論されている。ここでは、医療機関・薬局に係る内容を中心に、資料をピックアップして解説したい。
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あるべき医療・介護分野の理想像が提示される
今回の議論では、改革のゴールともいえる「理想像」が示され、それぞれの領域で理想を実現するための取組が掲載されているという構成になっている。この「理想像」はあくまでも理想ではあるが、気になるキーワードがちりばめられている。特に目についたのは以下のキーワード。今回の議論でもその方向性が明示されている。
「全国統一のフォーミュラリが存在」
「最適な医療サービスが保険内外にかかわらず提供」
「医師に代わり薬の処方を行う(薬局の項目)」
「応能負担に基づく保険料・利用者負担の設定」
診療所、病院、薬局、保険者等のカテゴリ毎に気になったものを見ていきたい。
医師偏在対策の観点を診療報酬で。生活習慣病管理料の評価を月1回から複数月で1回を提案
前回の診療報酬改定の議論のさなか、財務省の秋の建議で診療所の利益率がよいことから診療報酬の厳格化について提案されたのはまだ記憶に強く残っているのではないだろうか。今回の春の建議に向けた議論においても、診療所に対しては非常に厳しい提案が行われている。
これまで同様に、病院に比べて診療所の利益率がよいという見解をもとに、評価の厳格化を今回も求めている。具体的な施策として、外来管理加算と機能強化加算の廃止、かかりつけ医機能報告を踏まえた機能に対する評価、生活習慣病管理料において病状が安定化した患者に対しては診療報酬上の評価を複数月に1回とすることなどが提案されている。
また、昨年末にまとめられた医師偏在対策の推進として、地域別診療報酬単価の設定の一環として、診療所過剰地域での診療報酬単価の引き下げ、地域内における過剰サービス(診療科の数)に対する減算規定の設定が提案されている。診療所の診療科ごとの総量規制のようなイメージだ。
令和6年度診療報酬改定では処方箋料が引き下げられたところだが、医薬分業がある程度進み、かかりつけ薬局・薬剤師機能も拡充していることを踏まえ、さらなる処方箋料引き下げが提案されるとともに、リフィル処方箋の促進がうたわれている。リフィル処方全の促進では、薬剤師との連携強化が必要であり、診療報酬・調剤報酬での措置を求めている。このあたりは、診療報酬改定結果検証部会の報告からもその方向性は読み取れる。
参照:令和6年度診療報酬改定の結果の検証と次回改定への影響は?~長期処方・リフィル処方について~
病院に対しては、地域医療構想の着実な推進と人材確保の厳格な対応を求める
描かれている新たな地域医療構想を着実にすすめることが基本に書かれている。
人材会社に対する規制強化について、個人的に最近感じているのは「退職代行サービス」だ。就職先とのミスマッチで辞めること、それは雇用する側にも問題があることだが、この「退職代行サービス」の多くは、転職支援の事業も行っていたり、退職代行サービス利用後の再利用〇〇%オフサービスやお友達紹介キャンペーンなどもやっているなど、人材紹介会社に近い事業になっているところもありうのではないかと思うので、今後検討が必要だろう。ただ、くれぐれも注意したいのは、従業員にとっての職場環境をよくすることが解決策になる、ということだ。
それから、一般病床・精神病床の入院医療費について、光熱水費や室料を自己負担にすることも提案されている。介護保険や在宅医療の環境(在宅医療では、患者さんが光熱水費等は自己負担している)に合わせることが狙いだ。経営にはプラス(収益)とマイナス(入院期間の短縮化と在宅要望など)の影響が出てくる。今後の可能性について、注視しておきたい。
薬局に対しては、さらなる対人業務への注力ができる環境作りを提案
従来通り、対人業務の評価の拡充を提案しているが、対人業務の評価に財源をもっていくために、後発医薬品調剤体制加算の見直しや調剤基本料1の適用範囲の見直し案している。
地域フォーミュラリは保険者インセンティブで促進を。市販品類似薬の処方に対する保険適用の在り方について検討を。
診療報酬改定に関する検討の中ではすっかり議論からなくなってしまったようにも見えるフォーミュラリだが、保険者側の取組として推進していく方向性が明確になった。
また、政界でも議論が続いている市販品類似薬(OTC)に対する処方の見直しが今回も提案されている。全額自己負担ということになると、患者の受診行動や医療機関の経営環境の悪化につながるため、選定料の活用などが現実的だろう。健康サポート薬局などのかかわり方などポイントになってくるのではないだろうか。また、薬事承認されているものの保険収載されていない高額薬剤の使用についても選定療養の活用の検討を提案している。公的保険の範囲の縮小化と医療依存度の高い患者や難病患者などに対する手厚い医療提供の確保や、応能負担の取組といえる。
例年通りであれば、5月下旬には春の建議が取りまとめられ、骨太方針が6月上旬にも閣議決定される。骨太方針、そして診療報酬・調剤報酬改定の議論にも間接的に影響があるものなので、引き続き議論の経緯をみていきたい。