令和6年度診療報酬改定の結果の検証と次回改定への影響は?~長期処方・リフィル処方について~
令和7年4月9日、第72回 中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会が開催された。令和6年度診療報酬改定の影響について、アンケート調査をしたもの(調査実施時期は令和7年1月6日から1月20日<「患者調査(インターネット調査)」は令和7年1月16日から1月24日>)。今回は、精神医療・長期処方とリフィル処方・後発医薬品の使用促進の3点について報告書案が示された。ここでは、長期処方とリフィル処方箋についてポイントを解説する。
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患者から要望が出やすい環境作り、薬局薬剤師との連携で患者の状態を把握できることが令和8年度診療報酬改定での評価のポイントに?
令和6年度診療報酬改定より、生活習慣病管理料等の慢性疾患に関する評価では長期処方・リフィル処方箋への対応が可能であることをポスター掲示することが求められるようになっている。掲示している医療機関と掲示していない医療機関とでその実績を比較したところ、やはり掲示がある方が実績が高い。
さらに、患者からの長期処方・リフィル処方の希望があった場合の対応方針については、要望があれば検討する、という回答が最も多い。ただ気を付けたいのは、検討するということで合って、確実に長期処方・リフィル処方箋の対応をする、と言うことではないということ。
参照:生活習慣病管理料への対応を改めて考える② ~併算定、主病名、療養指導計画書の運用、長期処方など~
参照:第4期医療費適正化計画、全国の提出内容を集計し4,336億円の適正化効果を見込む
実際にリフィル処方箋の発行経験については、勤務医よりも開業医が多い。リフィル処方箋については、患者や医師に対する周知が十分でないことなどが利用として挙げられている。特に勤務医で少ないのは、生活習慣病管理料等ではポスター掲示が求められている一方で、200床以上病院における継続診療に対する評価でポスター掲示が求められていないことなどが考えられるのではないだろうか。次回改定では外来診療料等で要件に入ってくるかもしれない。
長期処方ではなく、リフィル処方箋を発行した医師に対して、その理由を聞いている。薬局薬剤師との連携で患者のモニタリングができることが理由の上位に挙がっている。あわせて、薬局薬剤師からの服薬情報等提供書(トレーシングレポート)の内容についての要望も聞かれており、患者の服薬状況が最も多い回答だった。
令和6年度調剤報酬改定では服薬情報等提供料が見直され、リフィル処方箋への対応が評価されることとなった。また、医療情報ネット<ナビイ>では、薬局におけるリフィル処方箋への対応実績が表示されるようになった。処方医から特定の薬局へ誘導することはできないが、医療情報ネット<ナビイ>について患者に情報提供して、患者自身で選んでもらうことはできる。患者の要望に応えることができ、処方元としても安心できることになる。
リフィル処方箋の発行に消極的なのは、患者の症状の変化に気づきにくくなることが上位に挙げられていることを考えると、気づきを補完してくれる薬局薬剤師による服薬フォローと結果報告・処方提案となるトレーシングレポートの活用がますます必要になってくる。トレーシングレポートの内容の充実、またDXの活用(電子カルテ情報共有サービスや電子処方箋などでの運用)など今後期待される。
ところで、リフィル処方箋そのものについて、患者側の認知度はどうだろうか。調査結果からはまだまだ低いこと、利用できるのであれば利用したいということが上がっている。
なお、利用するにあたってはかかりつけ医、かかりつけ薬剤師の存在があることが必要だとの回答があった。今年度より施行される「かかりつけ医機能報告制度」における1号機能を有する医療機関での対応や地域連携薬局や健康サポート薬局などの要件・実績など、今後考えられるではないだろうか。
長期処方及びリフィル処方箋、とりわけリフィル処方箋については、薬局薬剤師によるフォローアップがある長期処方とも言えるもので、第4期医療費適正化計画において、今年度中にも各都道府県で目標数値が設定されていく予定もある。保患者からの啓発活動を保険者努力支援制度などで評価していくことになるだろう。
なお、リフィル処方箋については、薬局との連携で医師の負担軽減にもつながる。比較的大規模病院の外来医師の負担軽減策の一環としての利用も増えてきている実感がある。外来業務の働き方改革は難しいとされる中で、患者の理解は必要だが、有効な一手になるだろう。
参照:医療資源が限られた地域こそ、連携を通じた働き方改革・負担の分散を~診療報酬・調剤報酬にみる連携と負担軽減の評価を再確認~
かかりつけ医機能報告制度の開始も控え、令和8年度診療報酬・調剤報酬改定でどういった評価をしていくか、引き続き注目される。