令和7年4月9日、第72回 中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会が開催された。令和6年度診療報酬改定の影響について、アンケート調査をしたもの(調査実施時期は令和7年1月6日から1月20日<「患者調査(インターネット調査)」は令和7年1月16日から1月24日>)。今回は、精神医療・長期処方とリフィル処方後発医薬品の使用促進の3点について報告書案が示された。ここでは、精神医療についてポイントを解説する。


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地域移行を促すも、人材確保に苦慮している状況。方向性を維持しながら、診療報酬点数の見直しの検討が期待される。新たな地域医療構想では精神医療も含まれることに留意

 精神医療に関しては、医療計画における地域平均生活日数の目標値の設定や精神保健福祉法の改正・施行などもあり、地域移行に関する項目の新設や評価の充実が図られてきている。さらに、令和9年度からの新たな地域医療構想では、精神医療も対象に加えて、地域での役割分担・連携の検討が相応の時間をかけて始まる。


参照:医療計画の基本と今後、そして精神科医療の指標「地域平均生活日数」

参照:令和6年度診療報酬改定と精神保健福祉法を確認する

参照:病床機能報告)回復期機能→包括期機能、医療機関機能報告)高齢者救急等機能→高齢者救急・地域急性期機能へ。基準病床数は必要病床数を上限へ


 令和6年度診療報酬改定では、一般病床で取り組まれている、入退院支援加算と地域包括ケア病棟の精神科版が新設され、注目を集めた。

 入退院支援部門はあるものの入退院支援加算を算定していないという病院が多いのが特徴的で、その理由として看護師の配置が困難であることが挙げられている。




 なお、退院調整においては参加する職種として看護師が最も多い。ただ、退院後の支援で必要と考えられるものとして薬物療法が最も多く挙げられているが、退院調整への参加や病棟での薬剤師の配置状況はすこぶる低い。精神科領域での病棟薬剤業務加算については、精神病棟入院基本料と特定機能病院の精神病棟について8週間が限度となっているが、算定期間や対象病棟の拡大など薬剤師に対する評価など今後注目したい。






 精神科地域包括ケア病棟については、現状での届出は少ない。ここでも常時職員を配置することが求められるなど、人材確保が困難であることが挙げられている。該当する患者が少ないことも理由として多い。あまり診療材料等の利用が少ない精神領域では、賃上げ等ヒトに対する評価の見直しは求められるだろう。それができなければ、地域移行の促進はは難しい。





 ところで、施行されているかかりつけ医機能報告制度では精神科領域の対応も1号機能に該当する領域がある。そのため、精神科領域のかかりつけ医機能に関する議論も行われている。


参照:精神科診療所の「かかりつけ精神科医機能」を明確化する議論がはじまる


 メンタルヘルスも含め、精神科診療を求める患者多いものの、診療所等の件数は少なく、地域偏在がある。そこで、オンライン診療に対する新たな評価や早期診療体制充実加算が新設された。精神科領域では、通院・在宅精神療法及び処方箋料の減算があり、期待されたが、早期診療体制充実加算は要件が思いのほか高く、果たしてどれだけの医療機関が算定できるのが気になっていた。診療所ばかりか病院においても算定ができていない現状が明らかになった。




 オンライン診療については、環境及び医師の診療方針が普及の障害になっていることがわかる。患者にとってみれば、精神科への受診は周囲の目も気なることから、オンライン診療の利用は喜ばれるとも考えられるので、取組事例や研究成果などの発信がもう少し必要だろう。


 地域移行を促進していくための人材を確保するための適正な評価、精神科領域におけるかかりつけ医機能(初診時での手厚い介入、継続診療)をしっかり作り上げていくことが引き続き議論のポイントになる。入退院支援や地域包括ケア病棟など、新たな地域医療構想を意識した評価の充実と共に、ここでは取り上げなかったが、在宅での身体疾患のある患者への対応状況も確認されていることから、身体疾患のある患者に対する対応・一般診療との連携などもテーマとして注目していきたい。