精神科診療所の「かかりつけ精神科医機能」を明確化する議論がはじまる

10/05/2024

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 令和6年10月3日、厚生労働省にて第3回 精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会が開催された。本年7月末にかかりつけ医機能報告に関する報告書がまとめられたところだが、それは主に慢性疾患の管理や高齢患者に重きをおいたものとなっている。

参照:かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に向けた議論の整理(厚生労働省)

今回議論される「かかりつけ精神科医機能」は、身体疾患と精神疾患の両方を有する患者が今後増加してくることを見越して、かかりつけ医機能を有する医療機関との連携の在り方も含めて、精神科領域におけるかかりつけ医機能について明確化していくものといえる。また、新たな地域医療構想においても精神科領域をどのように位置づけるかの検討も始まっていることから、今後地域医療構想の議論との連動も注目される。

参照:新たな地域医療構想での病床機能報告(回復期の定義の見直し)と在宅を踏まえた新たな構想区域のイメージが示される



精神科領域におけるかかりつけ医機能をめぐる議論のこれまで

令和3年3月18日に取りまとめられた「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に係る検討会」報告書において、精神障害にも対応した地域包括ケアシステム(において、精神障害を有する方等がかかりつけとしている精神科医療機関には、「ケースマネジメントを含む、いわゆる「かかりつけ精神科医機能」を果たすこと」が求められるとされている。



その報告書を踏まえてか、直近の令和6年度診療報酬改定では精神科版地域包括ケア病棟の新設され、その中でかかりつけ精神科医機能について明確にされている。しかし、これは病院におけるかかりつけ機能だ。


同じく今回の診療報酬改定に関する議論の中でもあったが、近年、都心部に精神疾患患者が多く、診療所も同様に増加の傾向にあることがわかっている。

参照:精神科回復期での多職種配置・地域生活支援の取組を評価へ。診療早期に手厚い支援を行う精神科外来医療機関の体制を新たに評価。


しかしながら、期待されるかかりつけ精神科機能である多職種連携によるケースマネジメントの実践や緊急時対応が十分にできているとは言い難いとの調査結果が示された(令和6年4月の診療状況に関する調査 N=449,回答率27.9%)。



精神科医療では、1年以上入院する患者を地域へ早期に返していく取組と同時に、地域平均生活日数をいかに長くするかが重要になってきている。そこで精神科版地域包括ケア病棟では、年間の入院日数を退院後の再入院も含めて180日というルールが設定されている。この地域平均生活日数を少しでも長くするためには外来通院等における「療養生活継続支援加算(令和6年度診療報酬改定より、療養生活環境整備指導加算を療養生活継続支援加算に統合して一本化)」が重要になってくるのだが、先の精神科診療所に対する調査結果からわかるように割合として非常に少ないことがわかる。また、緊急時の対応なども5割に満たない状況だ。現在は65歳未満の患者が多いが、やがて高齢化が進み、高齢性心疾患患者が増えてくる。そして、高齢になるにつれて身体疾患も併せ持つケースも増えてくることは容易に考えられる。


今後、かかりつけ精神科医機能について、改めて明確化するとともに、一般診療におけるかかりつけ医機能との連携の在り方、社会資源の活用なども議論が進められていくことになる。

新たな地域医療構想でも精神科領域が位置付けられることもあり、一般診療料との連携の在り方、特に身体疾患を有する精神者の対応に関する医療提供体制の在り方も改めて考えていくことが必要だ。今後特に気になるのが、へき地を含む医療資源が限られた地域における精神科医療の提供の在り方だ。そもそも、精神科医療を提供できる医療機関がないこともしばしばあることから、今後はかかりつけ精神科医機能を有する医療機関によるオンライン診療や巡回診療なども必要になってくるだろう。かかりつけ医機能報告との関係性も含めて、今後の議論を注目していきたい。

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