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後発医薬品の使用割合については、ほとんどの都道府県で数量割合で80%を達成できている状況が確認されている。都道府県別でみても、徳島県以外(協会けんぽにおける割合)で80%を超えている。
本年10月からは後発医薬品のある長期収載品の選定療養がスタートしていることから、更なる促進が考えられる一方で、すでに80%を超えていることから、数量割合だけに着目した拡大には限界がきているとも考えられる。そこで、医療費適正化の観点から新たな数値目標として、金額ベースで65%以上とバイオシミラーに関する使用促進策を副次的目標として設定したところ。薬局において金額ベースの副次目標はかなり厳しい面があるので、この副次目標は主に処方を出す側である医療機関、とりわけバイオ医薬品など高額薬剤の処方が多い医療機関に対するメッセージだと言える。
参照:安定供給を基本とした後発医薬品とバイオシミラー使用促進の新たなロードマップが策定・公表される
長期収載品の選定療養が始まって10日を経過して見えたこと
まだ始まったばかりの新たな制度だが、実際に複数の医療機関で見聞きしたこと、感じたことを以下に列挙してみる。
- 患者からの後発医薬品への変更希望は少なからずある
- 院内処方をする中小規模病院や診療所では院内採用品で後発医薬品の割合を高めている
- 一般名処方を意識的に行うようになり、結果として処方箋料等の減収分を補っている
- 診療ガイドライン等で長期収載品を推奨している疾患でも、長期慢性化している患者に対しては、意識的に案内している
今後も情報収集をしながら実状を伝えていきたいと思うが、感じるのは、一般メディアの影響だ。新聞を読んでいるような、特にお年を召された方ほど多いような印象だ。
一般名処方加算、分割調剤がポイント
改めて令和6年度診療報酬改定を振り返ると、生活習慣病管理料と特定疾患療養管理料の見直しの影響が大きいとよく言われるが、診療報酬点数で見るとそれほど大きな影響があるわけではない(生活習慣病を主病名として特定疾患療養管理料を月2回算定していた場合は除く)。診療時間がやや長くなった、ということはあるだろうが。
参照:生活習慣病管理料への対応を改めて考える② ~併算定、主病名、療養指導計画書の運用、長期処方など~
診療報酬点数としてみた場合に影響が大きいのは、処方箋料及び特定疾患処方管理加算の引き下げだと言える。これには意味がある。電子処方箋等の医療DXの推進で負担が減ることがその理由だ。そしてもう一つは、一般名処方の推進だと言える。一般名処方加算は点数が引き上げとなり、処方された医薬品の内1種類でも後発医薬品があれば加算2の算定ができ、処方箋料の引き下げ分である8点をカバーできる構造となっている。一方で、調剤報酬では後発医薬品調剤体制加算は据置となり特定薬剤管理指導加算3 ロが新設されていることからいえるのは、処方をする側に後発医薬品に関する使用促進を積極的に促している、ということだ。ゆえに医療機関としては、まずは一般名処方の推進がポイントになるだろう。
そこで薬局としては、患者への説明が重要になる。とりわけ注目したいのはこの10月を契機に後発医薬品に切替る患者への対応だ。以前もお伝えした、分割調剤の仕組みを積極的に利用していくことがポイントになる。
分割調剤は、リフィル処方とは異なり、処方日数を分割して、薬局に受け取りに来てもらうものだが、都度薬局薬剤師は処方元に情報提供をし、承認を得た上で医薬品を渡す。初めて後発医薬品を使用する場合に利用するもので、短期間の服用で有害事象の有無など安全性を確認し、必要に応じて長期収載品に戻すなどをするもの。処方元と薬局薬剤師の連携が大事だ。
参照:後発医薬品のある長期収載品の選定療養の準備に向けて「特定薬剤管理指導加算3 ロ」と「分割調剤」の活用を再考
今後の展望は?
数量割合で概ね80%を達成できていること、まだ途上ではあるが後発医薬品メーカーの産業構造改革の方針が明確になったことから、いよいよ後発医薬品使用体制加算などは消滅して基本料に包括されるか、減算評価となる可能性が高まってきたと個人的に考える。診療報酬の長い歴史からわかるのは、いわゆる加算は、算定対象と考えられる医療機関の7割以上が算定をするようになると、算定することが当たり前という見方になり、基本料の一部になっていく。褥瘡対策、栄養管理などがそうであった。これからは、加算ではなく、基本料の要件の一部と考えて意識的に対応していきたい。
一般名処方加算は処方箋料等の引き下げもあり今後も継続されることが考えられる。バイオシミラーについては、虫食い効能となっていることもあり、バイオ後続品導入初期加算等の評価の見直しや対象拡充などで対応が進んでいくことが考えられる。なおバイオシミラーは、長期収載品の選定療養の対象外となっているが、先日公表された新しいロードマップでは、長期収載品の保険給付の動向を踏まえて検討する、といった表現が盛り込まれていることから、次回改定からバイオシミラーも長期収載品の選定療養の対象に加えられる可能性が高まっているといえる。
参照:安定供給を基本とした後発医薬品とバイオシミラー使用促進の新たなロードマップが策定・公表される
また、バイオシミラーについては、高額療養費等の公費助成が一つの壁になっているのも確か。先日、IBDに関する以下のような報道もあったが、指定難病の要件見直しやバイオシミラーを含む後発医薬品のある場合の公費助成など運用の見直しなどにも注目をし、備えておきたい。
参考:「納税者から入院患者に転落するシステム」 安倍元総理も悩んだ難病・潰瘍性大腸炎が”国の指定”から外される危機 声を上げる患者(ABCニュース)
ただ忘れてはならないのは、医療費適正化の前に、治療と仕事・生活の両立支援を優先して、患者本人にとっての最善の選択を常に考えることだ。医療費適正化を最優先することで、不利益が生じてはならない。今回の選定療養でも、医療上の必要の有無、が何よりも大事であることを改めて確認しておきたい。