令和6年10月10日、厚生労働省にて第38回医療用医薬品の流通改善に関する懇談会が開催された。令和6年度診療報酬改定において、保険医療機関(許可病床数が200床以上である病院のみ)及び保険薬局は、本年3月に改訂された「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン(流通改善ガイドライン)」を踏まえ、現在報告を求めている医療用医薬品の単品単価契約率及び一律値引き契約に係る状況に代えて、取引に係る状況の報告を求めるとともに、流通改善ガイドラインを踏まえた流通改善に関する取組状況について報告を求めることとなった。
その流通改善ガイドラインにおいて単品単価交渉について「他の医薬品の価格の影響を受けず、地域差や個々の取引条件等により生じる安定供給に必要なコストを踏まえ、取引先と個別品目ごとに取引価格を決める交渉」と定義されている。しかしながら、チェーングループ/法人本部(最終親会社、最終親会社の子会社、最終親会社の関連会社、先の3種の会社とフランチャイズ契約を締結している会社。ボランタリー契約は含まない)やボランタリーチェーン(価格代行業者)によっては、単品単価交渉に関する認識に差がある。そこで、今回、単品単価交渉に関する解釈が示された。
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地域差・取引条件の有無があるか?
総価値引きはもちろんだが、いわゆる全国最低価格に類する価格のベンチマーク資料を用いた単価による一方的な交渉については単品単価交渉とは言えないことはわかる。今回の懇談会では、ベンチマーク資料を用いた交渉において、地域差や取引条件を考慮して交渉して単価を決定していくことについては単品単価交渉を行っている、との解釈が示された。交渉の過程が重要であるということだ。
また、チェーングループ/法人本部における一括購入、そしてボランタリーチェーンにおいても同様に品目ごとに地域差・取引条件が考慮されているかがポイントとなる。ボランタリーチェーンにおいては、加盟する医療機関・薬局ごとに確認の下に品目ごとの価格交渉がお行われていることが必須となる。当然ながら、総価値引や全国最低価格に類する価格のベンチマーク資料を一方的に利用することはNGだ。
令和7年度から、医薬品卸事業者に「参考資料」の提出を
未妥結減算は医療機関・薬局が地方厚生局に報告するものだが、今年度より取引状況等を報告することとなったのに伴い、医薬品卸売販売業も取引状況を報告することが今回の検討会で新たに示された。ただ、今年度の報告には当然間に合わないので、令和7年度からのスタートとなる予定だ。
医薬品卸売販売業に求める報告書は地方厚生局に届出るものではなく、医療機関・薬局に届けるもの。医療機関・薬局が地方厚生局に報告する際の「参考資料」という位置づけだ。取引状況、流通改善への取組状況を双方で理解・確認するためのもの。あくまでも「参考資料」でがあるが、医療機関・薬局からの地方厚生局への報告に間接的に影響は出てくることが考えられるため、医薬品卸売販売業に対しても正しい解釈・認識の統一など必要になってくるだろう。
医薬品流通をめぐっては、過度な薬価差への対応についても議論が静かに進んでいる。