令和7年4月23日、第73回 中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会が開催され、前回に続き、令和6年度診療報酬改定の影響に関するアンケート調査結果の報告案が公表されている。ここでは、在宅医療領域(訪問診療、訪問看護、訪問薬剤管理等)についてのポイントを確認したい。


【お知らせ】医療政策ニュース解説ブログroute"hckn"の更新情報をBlueskyでお知らせします。よろしければ、フォローをお願いいたします。



連携場面でのDXに課題が見える結果。普及促進には、診療報酬以外の補助金などの施策も必要か?


 令和6年度診療報酬改定では、在宅医療情報連携加算や往診時医療連携加算、協力対象施設入所者入院加算などといった在宅医療場面でのICTの利活用、いわゆる地域医療情報連携ネットワークの活用を促すような診療報酬の新設が多くあった。在宅医療に取組む医療従事者の負担軽減を目的としたものだといえる。




 診療報酬改定後、導入・利活用はどうなっているのだろうか。医療機関側からは、進捗状況は緩やか、と言える結果だ。設備投資もそれなりに発生すること、自院で入院対応できる環境にあることなどが理由として考えられる。






 一方で、連携先側からみると、訪問看護ステーションや保険薬局など医療系といえる施設では連携は進んでいる印象だ。介護施設等側では、ICT以外の方法での連携が多くなっている。なお、ICTを用いた連携においては、電子カルテ等のシステムとの連携ができていないことや、職員のリテラシーなどが課題となっている。





 昨今の情報セキュリティ事故の報道などが、やや警戒感を生んでいるのではないかとも思われる。事故は起きることを前提に、被害を最小限に食い止めるための施策やBCPを策定しっぱなしにせず、定期的に机上訓練などを行う習慣を作ることで、利用することの心理的ハードルを少しでも低くする取り組みが必要だ。




 また、全国医療情報プラットフォームとの違いが分かりにくい、というのも地域医療情報連携ネットワークが進まない原因ではないかと個人的に思っている。全国医療情報プラットフォームは、患者情報の共有や医師からの患者への療養指導などがおこなえる便利なものだが、在宅医療場面などで急変時の対応などはできない。地域医療情報連携ネットワークは、在宅医療にリアルタイムで携わっている方の情報発信で、連携ネットワークに参加する誰からすぐに対応できるもの。改めて、全国医療情報ネットワークと地域医療情報連携ネットワークは別のものであって、いずれも必要なものであることを理解したい。


参照:地域医療情報連携NWと全国医療情報プラットフォームの関係性と併存の必要性



 なお、医療機関に対する調査で、患者の傾向をみると、認知症を有する患者の割合が高いことがわかっている。令和6年度診療報酬改定では、地域包括診療料等で認知症かかりつけ医対応研修や地域の認知症対策への参画が求められるようになったが、在宅医療を担う医療機関に対して、研修の受講などの対応が求められる可能性や、受入れに関する新たな評価なども考えられるかもしれない。





 訪問看護については、令和6年度診療報酬改定で24時間対応体制加算の新設、訪問看護管理療養費の見直しが行われたところ。24時間対応体制加算については、今回調査(1048件)のうち、約95%が届出ているとのこと。電話連絡・相談の対応については、看護職が勤めているケースが約88%とのことだった。患者家族側からとしても、やはり医学知識のある方の対応がうれしいところ。





 訪問看護管理療養費については、療養費2の事業所が療養費1の届出が難しい理由について質問されている。最も多い理由は「利用者のうち、同一建物に居住する者の割合が7割未満(介護保険のみの利用はカウントに含めない。医療保険と介護保険の両方の場合はカウントに含める)」という要件だ。昨今の、ホスピス住宅やPDハウスなどとの関連性なども気になるところだ。



地域ポリファーマシー対策に注目

 今回の調査で気になったのは、在宅におけるポリファーマシー対策に関するもの。在宅で常用している医薬品は6-9種類が多いことが分かっているが、処方医と連携した減薬の実施が約23%という結果がでている。この結果もさることながら、あえてポリファーマシー対策の調査をしていることが気になるところ。




 昨年、ポリファーマシー対策に関する手引きが公表されたのは記憶に新しい。また、令和6年度診療報酬改定では、薬剤総合評価調整加算の要件の見直しが行われ、かなり算定しやすくなっている。


参考:院内でのポリファーマシー対策は院内の専門医療チームとの連携で効率的に。地域では地域ポリファーマシーコディネーターを定め、患者個別に薬剤調整支援者による対応を



 手引きでは、基幹病院に地域ポリファーマシーコーディネータの配置、地域に薬剤調整支援者の配置・対応を求めるような記載もあった。次回の診療報酬・調剤報酬改定で注目しておきたい点であり、今からでも備えておくことを検討したい。




 その他、令和6年度調剤報酬改定で新設された項目の状況についても調査されているので確認しておきたい。







 在宅医療の調査でもあったが、在宅における認知症を有する患者への対応に関する調査が目立つことから、調剤報酬改定においても、認知症を有する在宅患者への対応に関する何らかの評価など考えられるかもしれない。