精神病床の削減に躊躇しない中小規模の精神病院に対する評価の検討と敷地内薬局に対する厳格なルールの検討へ
令和7年10月24日、第622回中央社会保険医療協議会 総会が開催された。今回は、精神医療と敷地内薬局に関して議論されている。敷地内薬局については、調剤報酬で厳しい措置が取られているものの、大きく減っているわけでもなく、経営も悪いわけではない。今回の議論では、その敷地内薬局の実態について明らかにされ、さらなる厳しい対応を予感させる。
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精神病床における多職種連携の評価、生活習慣病や維持透析等の慢性疾患に対する対応を
精神病床においても、人口減少や患者の高齢化は大きな課題となっており、一般病床と同じくらいに病床削減の必要性と同時に限られた精神病床を有効活用していくべく、早期社会復帰と地域生活支援の機能の拡充の必要性は高まっている。
今回の議論では、まず早期社会復帰に関して、入院中の多職種連携が早期社会復帰に寄与しているというデータが示された。
こうした病棟への多職種の配置は病床規模や多職種配置が要件になっていない精神病棟入院基本料などでも行われていることも確認されていることから、柔軟な多職種の配置と成果を設定した診療報酬上の評価など期待されそうだ。
また、病院経営の観点から200床以下の精神病院ほど利益率が低くなっていることが紹介されている。今後も病床削減が続いていくことを考えると、経営が苦しくなる精神病院が増えてしまうこととなる。そのため、病床削減を躊躇する精神病院が多い。
その一方で、外来規模の大きな精神病院では、1年以上入院する患者割合が低いことが示されている。こうした観点から、200床以下の精神病院においても外来医療への積極的な取組や先に紹介した多職種配置による退院と地域生活支援、障害福祉サービスとの連携やグループでの運営などに取組むことに対する評価も考えられそうだ。
今回の議論でもう一つ話題になっているのが他の抗精神病薬で効果が得られない「治療抵抗性統合失調症」に用いられる非定型抗精神病薬であるクロザピンの普及状況だ。他国と比較すると非常に低い。そこで、診療報酬では促進策が行われてきた。
例えば、精神科急性期医師配置加算では当該病棟での年間のクロザピン導入実績が求められることになっている。
しかし、実態としては本加算に関係のない病棟などでもクロザピンの導入は行われていることがわかっていることから、当該病棟での実績ではなく、病院全体での実績とすることが検討されそうだ。
また、精神科身体合併症管理加算の要件や対象疾患の範囲についても議論されている。生活習慣病を有する患者も多くなっていることから、内科等の医師を確保していくべく。対象疾患に加えていくこととなりそうだ。
その他、精神医療においては精神科救急急性期医療入院料等における緊急的な入院に関する指標の見直しの必要性、重症の身体合併症で急性期の治療を行った患者(総合病院からの転院)が、精神科救急急性期医療入院料等を算定する病床に転棟・転院した場合の取り扱いや転院先の条件の検討、精神科リエゾンチーム加算における認知症やせん妄への対応に対する評価のあり方など議論されている。
敷地内薬局のルールの厳格化、へき地等におけるルールの緩和
敷地内薬局については、これまでも改定の都度厳しい見直しが図られてきた。しかしながら、それでも敷地内薬局を新たに出店されている場面をよく目にする。ペナルティがあるにも関わらず、なぜなのか?
その理由の一つして、現行の敷地内薬局に関する除外規定がある。薬局の所在する建物に診療所があれば、敷地内にあっても特別調剤基本料Aの適用は受けないというもの。
こうした実態から、敷地内薬局に関する除外規定を新たに見直す方針だ。具体的に対応案する形態について、以下のように示されている。
ただ、その一方で医療資源が少ないへき地等においては、土地取得の問題で敷地内にならざるを得ないケースもある。そこで、こうした地域については特別調剤基本料Aからは除外することが検討されそうだ。
ただ、敷地内薬局においては麻薬管理指導加算の実績は高いこと、令和6年度調剤報酬改定以前までは特定薬剤管理指導加算2の算定割合が高かった(令和6年度調剤報酬改定で算定不可になった)。
高度急性期病院・がん診療連携拠点病院などの敷地内薬局が多かったためで、専門性も高いのだと考えられる。こちらについては、医療経済実態調査の結果を踏まえて改めて検討することとなる。



















