令和7年10月1日、第618回中央社会保険医療協議会 総会が開催されている。今回は在宅医療についての2回目の議論が中心となっている。


参照:在宅医療と厳しい病院・診療所の経営状況に対する支援に関する論点の明確化に向けた議論が行われる。頻回な訪問に対する対応、利益が出ているとされる診療所に対する見方は?


 患者の居住地を病床と見立てているかのように、在宅においても医療・介護依存度の高い患者・利用者に対する診療の評価を高めることや24時間往診の頻回な実施など手厚い人員配置・周囲との連携、その実績を高く評価する方向性が見えてきている。その一方で、訪問看護については高齢者住宅に併設する事業者や関連グループとみなされる事業者に対して厳しい評価が考えられそうだ。


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在宅医療に積極的な役割を担う医療機関と連携で貢献する医療機関、それぞれの評価

 在宅療養支援病院・在宅療養支援診療所(以降、在支診・在支病)は在宅医療において積極的な役割を担うことが期待されているが、中でも、より在宅医療に積極的に取組み、実績もある機能強化型がある。さらに、その機能強化型の中には同じ単独で担うものと連携で担うものの2種がある。当然ながら、地域性や実績要件も異なることから緊急往診・看取りについては実績の差が出てくる。さらにみると、積極的に取組む医療機関は実績要件をこえて取組んでいることがわかる。ゆえに、手厚い人員配置をしていたり、医師一人あたりの担当患者数も多くなる。





 また、機能強化型では重症度の高い患者の割合が高いことも示されていることがわかっており、人件費や身体的負担が重くなっていると見られ、診療報酬上のさらなる評価の拡充が期待されるところだ。



 さらに、厚生労働省からはこうした積極的に役割を果たす医療機関の評価について、緊急往診等の実績が更に高い在宅緩和ケア充実診療所・病院加算と統合することを提案している。

 急性期入院医療では、拠点的な急性期機能と一般的な急性期機能といった新たな急性期の区分を設けようとしているが、在宅医療においても、拠点的な在宅医療機能と一般的な在宅医療機能の区分を作ろうとしているかのように見える。


 一方で、連携で貢献する医療機関についてだが、連携の度合いにも差があることが確認されている。例えば、他院のかかりつけ患者に対する緊急往診や看取りの代行の実績にも差がある。





 こうした実態から、厚生労働省からは連携で貢献する医療機関に対しても、地域の24時間往診体制への貢献の度合いに応じてきめ細かな評価をしていくことなどを提案している。

 また、同じく厚生労働省からは、令和6年度診療報酬改定で新設された往診時医療情報連携加算について、機能強化型在支診・在支病として連携の評価がなされていない他の在支診・在支病が訪問診療を行っている患者に対して在支診・在支病が緊急時に往診を行った場合についても評価を行うこと、すなわち平時からの連携のない地域の医療機関にまで対象を拡大しようということだ。かかりつけ医機能報告制度による協議の場が始まることで平時の連携も広がっていくことを私は期待しているので、平時の連携の有無で点数に差をつけることなど検討があってもよいのではないかと思う。平時の連携はICTで負担は軽くなってきているが、負担が0というわけではない。

 なお、厚生労働省からは在支診・在支病に対してBCPの策定を要件に加えることも提案されている。先日の入院・外来医療等の調査・評価分科会でも提起されていた。


参照:救急搬送の実績や医療資源投入量も踏まえた急性期一般入院料の評価を検討、PDラストも踏まえた腹膜透析の推進、小児成人移行期医療に関する課題への対応 など





要介護度の低い患者に対する在宅時医学総合管理料の評価の適正化

 在宅医療におけるかかりつけ医機能の評価といえるのが、在宅時医学総合管理料・施設入居時等医学総合管理料(以降、在医総管・施設総管)だ。今回、厚生労働省からはこれらにおいて、要介護度や医療依存度が高い患者に対する加算等の評価はあるものの、要介護度等が低い患者に対する評価がないことから、新たな評価の設定が提案されている。

 実際に、訪問診療から外来診療に移行したという医療機関が約19%(n=572)確認されている。要介護度が低い、医療依存度が高くない在宅患者が一定程度いることを示しているといえる。




 ただ、個人的に感じるのは、在宅から外来に移行することに対するインセンティブもあってよいのではないかと思う。在宅移行の加算があるように、在医総管・施設総管の低評価と合わせて、外来移行に対する加算の新設も検討してほしい。

 なお、この在医総管・施設総管については、医師派遣によって確保しているへき地診療所において、かかりつけの在宅患者の時間外対応体制を、当該医師の派遣元の保険医療機関が担うことで確保している場合は、へき地診療所での算定を可能とすることも提案されている。今回の診療報酬改定では、こうしたこれまでの不合理な面や地域の実状にあった評価の検討をしていることが随所に見られ、好感が持てると勝手に感じている。


 在宅医療の一環としての訪問栄養食事指導に関して、令和7年地方分権改革において提案があった退院直後から介護サービスが利用できるまでの間の訪問栄養食事指導を入院医療機関がおこなうことを評価することが提案されている。医歯薬連携が骨太の方針2025では記載されたが、医歯薬栄連携までが理想だといえる。骨粗鬆症などは外来栄養食事指導料の対象外にもなっているので、訪問・入院に加えて、外来においても栄養食事指導について見直しを期待したい。





高齢者住宅への頻回な訪問、併設する事業所からの訪問に関する評価を

 今年に入ってから、高齢者住宅への妥当性が疑われる頻回な訪問看護・不適切とも言える保険請求が社会的にも問題としてクローズアップされたことは記憶に新しいところ。令和8年度診療報酬改定では、高齢者住宅に対する訪問看護の評価が注目される。


参照:有料老人ホームの高額紹介料と過度な訪問看護に関する問題を整理。病院経営への影響も懸念


 同一建物居住者への訪問看護の算定回数・算定割合画像化している傾向にあることは明らかになっていう状況で、厚生労働省からは、訪問看護に関して以下の論点が示された。


1. 高齢者住まい等に居住する利用者については、多人数への頻回な訪問看護が行われ、移動時間や提供時間が短いなど効率的に実施されており、訪問看護基本療養費等における、同一建物・単一建物利用者の人数や訪問回数に応じた提供コストを踏まえた評価のあり方についてどう考えるか。


2.高齢者住まい等に併設・隣接する訪問看護ステーションは、居住者に短時間で頻回の訪問看護を効率的に実施することができるが、訪問看護療養費には短時間で頻回の訪問看護を評価する体系がないことから、こうした一連の訪問看護の評価を設けることについてどう考えるか。また、頻回な訪問看護を必要とする場合には、主治医が交付する訪問看護指示書に明記するよう求めることについてどう考えるか。


3. 指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準においても、適正な請求等に関する規定等、療養担当規則と同様の規定を設けることについてどう考えるか。


 まず、高齢者住宅への頻回な訪問による効率化できる点に着目して、効率化できる項目について評価を引き下げることなどが考えられそうだ。




 そして、高齢者住宅に併設する訪問看護は効率性の高い訪問看護を提供しており、訪問看護療養費は高額になる傾向にあることから、運営事業者の営業利益率が高い例があることが示された。






 医療依存度を踏まえることを前提に、高齢者住宅に併設もしくは高齢者住宅と同一事業者の訪問看護については、評価の適正化や新たな包括評価が考えられそうだ。ただ、必要があって頻回な訪問看護を提供している事業者にとっては、ある意味迷惑な話となる。どこで線引ををするのか、これからの議論に注目が集まる。