令和7年10月8日、第619回中央社会保険医療協議会 総会が開催されている。令和8年度診療報酬改定に向けて、入院医療に関する2回目となる議論が行われている。あわせて、診療報酬への診療報酬補填率について、過去のデータで間違いがあったことなどが報告されている(全体で98.9%)。そのため、令和6年度診療報酬改定において基本診療料への消費税増税分の評価上乗せをしていないかった。令和8年度診療報酬改定での補填対応に注目が集まる。




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急性期入院一般入院料1に救急搬送受入件数と全身麻酔施術件数の実績を新たな施設基準に加える方向へ。DPC標準病院群にも救急搬送受入件数を踏また基礎係数の区分も検討か?

 これまでの入院・外来医療の調査・評価分科会で検討の方針が示されているように、新たな地域医療構想における医療機関機能の新たな区分と診療報酬上の評価の整合性を図るための整理が進んでいるところだ。


参照:急性期機能を「救急搬送」・「全身麻酔手術」・「総合性」の評価指標で。救急医療管理加算、救急搬送との関連性に着目


参照:救急搬送の実績や医療資源投入量も踏まえた急性期一般入院料の評価を検討、PDラストも踏まえた腹膜透析の推進、小児成人移行期医療に関する課題への対応 など


 そこで診療報酬では救急搬送受入件数と全身麻酔手術件数の実績で基準を設け、手厚い医師の配置等を行っている急性期一般入院料1の新たな施設基準を設けて、評価を手厚くしていく方向になる見通しだ。





 今回の議論では、DPCの標準病院群においても救急搬送受入件数等によって基礎係数で新たに区分を設けることが検討される見通しだ。令和6年度診療報酬改定ではデータ数が90件/月以下の場合の減額される区分が基礎係数に設けられたが、その対応と似たものとなると考えられる。データ数が90件/月以下の場合はDPCからの強制退出となるが、今回の新たな区分を設ける可能性が強制退出にまでつながるかまではわからないが、注意して見ておく必要があるだろう。DPCから地域包括医療病棟を創り出していく方針に変わりはないと思われる。


参照:DPC/PDPSの4つの検討ポイント。内科系疾患をより反映するための重症度、医療・看護必要度の新たな対応の考え方が示される





高度急性期入院も救急搬送受入件数等を施設基準に。特定集中治療室管理料の区分も整理の方針

 特定集中治療室管理料、ハイケアユニット入院医療管理料においても救急搬送受入件数等の実績を加味する方向性が示されている。医療資源の投入量が多くなる傾向にあることから、手厚い診療報酬が必要になる。





 また、特定集中治療室管理料においてだが、令和6年度診療報酬改定で新設された区分5と6、遠隔支援加算に関する評価のあり方についても議論されている。区分5と6については、区分3・4の入院患者像と大きな違いがないことや新規で区分5・6の届出が現在のルールではできないことなどが課題として挙げられている。






 今後の議論を慎重に見ていく必要があるが、区分5・6については廃止、もしくは、新規届出を認めて2年以内に区分1-4を目指すなど、回復期リハビリテーション病棟入院料5のような対応も考えられるだろう。

 遠隔支援加算については、現状では医師少数区域等にある区分5・6が対象となるルールが有る。対象となる地域を拡充していくことが考えられそうだ。




 また、「広範囲熱傷特定集中治療管理料」の有無によって区分が分かれていることが課題としても挙げられている。診療報酬の簡素化の観点から、特定集中治療室管理料への加算などでの対応なども考えられる。その他、脳卒中ケアユニット入院医療管理料に「超急性期脳卒中加算」「経皮的脳血栓回収術」の実績を評価に反映することも議論となっている。

 一方、拠点的な急性期機能については、入院・外来医療調査・評価分科会の議論でもあったように、急性期充実体制加算と総合入院体制加算を一本化すること、人口20万人以下の地域や医療資源が限られた地域では総合入院体制加算3をベースにして救急搬送受入件数の地域シェア率やへき地診療所の支援機能を考慮した拠点機能の評価を設けることで議論が進みそうだ。





医療機関機能と診療報酬の整合性を関連図で理解する

 入院・外来医療等の調査・評価分科会でも議論された内科症例の評価を底上げすることを目的とした重症度、医療・看護必要度の見直しについて、今回の中医協で議論されている。A・C項目の新たな追加項目など注目されるところだ。また、B項目の測定については看護業務の負担軽減の観点から、手術の有無、要介護認定の有無など患者状態に合わせて測定頻度を見直すことなど検討されそうだ。


参照:緊急入院/高齢者救急、協力対象施設入所者入院加算の実績等で看護必要度の評価を底上げする見直しを検討、高額薬剤の使用を理由としない入院受入をどうするか? など


 新たな地域医療構想との整合性を図るべく、入院医療の考え方や点数の配分も大きく変わることが考えられる。思っていた以上に大きな診療報酬改定となりそうだ。まだ議論は始まったばかりだが、急性期入院医療について、新たな地域医療構想と診療報酬を関連図として私なりに整理してみた。








 


 病棟単位ではなく、病院単位で実績を積み上げることが重要になってくることとなる。地域との対話(地域医療構想調整会議や平時の連携)を通じて自院が果たすべき役割を見つけること、基幹病院(拠点的機能)が近隣医療機関の支援をする仕組みを構築することが新たな地域医療構想と診療報酬改定への合理的な対応となるといえる。