令和7年9月11日、令和7年度第11回入院・外来医療等の調査・評価分科会が開催されている。診療情報・指標等作業グループ(急性期の指標等)、DPC/PDPS等作業グループからの最終報告と包括期入院医療、重症度、医療・看護必要度(以降、看護必要度)、タスクシフトと多職種連携、特定機能病院からの逆紹介について議論されている。診療情報・指標等作業グループとDPC/PDPS等作業グループからの最終報告の内容は、包括期入院料と看護必要度にも関連している内容のため、ここでは包括期入院医療、重症度、医療・看護必要度(以降、看護必要度)、タスクシフトと多職種連携、特定機能病院からの逆紹介について確認したい。


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包括期入院医療に関する基準・指標作りの検討が進む

 包括期入院医療に関するこれまでの議論を経て、今後、以下の点について検討をしていくこととなっている。


・包括期の入院医療を担う医療機関の役割として、救急搬送の受入と在宅・施設等の後方支援という観点が示されており、これらを評価する指標を検討するとともに、各医療機関の役割を踏まえながら、適切な基準についての検討を進める。

・ ADLや平均在院日数について、入院している患者像を踏まえつつ、より適切な基準について検討を進める。

・包括されている医療資源投入量のばらつきとその傾向を踏まえ、高齢者の入院を幅広く担えるような評価の方法について検討を行う。


 まず、救急搬送の受入と在宅・施設等の後方支援に関する6つの指標の候補が示されているので確認しよう。



 それぞれの指標候補にある診療報酬上の加算の算定状況も確認されているが、特定入院料によっての違いが見える。
 在宅医療を担当する医療機関と連携した在宅患者の受入を評価する在宅患者緊急入院診療加算と、協力対象施設と連携した施設患者の受入を評価する協力対象施設入所者入院加算は、いずれも算定回数が多い施設で緊急入院の受入も多い傾向がみられるものの、緊急入院の受入が多くてもこれらの加算を算定していない施設が多いことがわかった。その一方で、在宅患者緊急入院診療加算と協力対象施設入所者入院加算の算定回数には関連性はみられないものの、救急搬送からの入院件数と、自宅等からの緊急入院の件数は相関していたことがわかっている。








 今回の分析で着目したい点の一つとして、救急搬送からの入院や緊急入院を比較的多く受け入れる地域包括ケア病棟があるとううことだ。そして、そうした地域包括ケア病棟に入院する患者の看護必要度は低い傾向にあるものの、在宅復帰率や平均在院日数は地域包括医療病棟の基準を満たしているということだ。





 もう一つ注目しておきたい点としては、地域包括医療病棟では協力対象施設入所者入院加算の施設基準を満たしていなくても、施設からの緊急入院を受けているケースがあるということだ。




 後方支援に関する評価は、近年になって新設れされてきたものが多く、届出のある施設数もまだ少ない。届出を促進することも視野に入れた評価の仕組みがこれから考えられることとなる。

 
 また、包括期入院における医療資源投入量についてもデータをもとに議論されている。
 まず、地域包括医療病棟についてだが、包括内出来高実績点数にはばらつきがあること、さらに緊急入院が多い診断群分類や、手術を行う ことが少ない診断群分類においては包括内出来高実績点数が高い傾向であることが示されている。





 一方、地域包括ケア病棟における包括内出来高実績点数をみると、地域包括医療病棟と比較しばらつきが少ないが、自宅や施設からの直接の緊急入院では比較的高い傾向にある。予定/緊急入院と手術実施の有無による評価の在り方が今後も検討されていく。

 また、今回は入院受入が困難となるケースについても調査されている。地域包括ケア病棟・回復期リハビリテーション病棟・療養病棟で共通して多く見られたものとして「高額薬剤を使用している(トルバプタン、パーキンソン病治 療薬、血友病以外の出血傾向の抑制に係る医薬品、生物学的製剤を含む分子標的治療薬等)」があげられている。




 患者の受け入れをスムーズに行い、医療機関側の負担を減らしていくためにも包括される入院料からの除外を推進することや専門医療機関における後方支援の評価なども期待されるところだ。レスパイト目的や専門医療機関との連携までの短期間に限定した除外なども考えられるのではないだろうか。



重症度、医療・看護必要度のB項目の扱いと内科系症例に対する正当な評価案が示される

 一般病床においては、看護配置と平均在院日数に加え、医療依存度の高い患者がどれくらいの割合で入院しているかを明確にする看護必要度による判定によって届出する入院料がかわる。地域医療構想の推進もあり、地域の実状にあった病床数の適正化を推進するべく、近年は診療報酬改定の都度、看護必要度は見直され、急性期入院する患者像は手術を必要とする患者など外科系症例の患者ほどに重症度が高くなってきていた。しかしながら、高齢患者割合が高くなってきていること、高齢者救急が増加の傾向にある。すなわち、内科系症例の緊急入院・救急対応などが増えており、これまでの看護必要度による評価では重症度が低くなりがちとなり、結果として経営や病床機能の見直しに影響が出ているといえる。また、看護必要度のB項目についても、看護師の負担軽減の観点からもその必要性や利活用について課題とされている。   

  今回の議論では、B項目の扱いについてまず議論されている。B項目はある意味で、医療機関における介護度ともいえるもので、連携先からは看護・介護の労力がどれくらい必要なのかを見積もるうえで重要とも言える。しかしながら、救急搬送で入院する場合や手術患者などではそもそも身体が動かせない状況にあるケースも多いため、急性期一般入院料1においてはB項目は測定するものの、その評価結果は看護必要度の評価に反映されない。そこで、B項目自体の評価・測定自体に対する考え方を検討することとなっている。今回、B項目について様々な角度で調査・分析されている。






 一連の調査・分析で以下のことがわかった。

・B得点は要介護度が高いほど高くなり、要介護4-5では入院時と退院時で分布の変化がほとんどみられない。

・入院7日後にB得点にほぼ変化がない患者の割合は、手術非実施症例では入院4日目に約7割、手術実施症例では術後7日目に同様に約7割。

・手術非実施症例の入院4日目以降、また手術実施症例の入院7日目以降は、重症度、医療・看護必要度について、B点数が変わらない患者の割合は6~7割、特にA項目が変化しない場合にはB項目も変化しない患者の割合が多い。また、A項目が3点以上変化した場合、B点数もA点数と同じ方向の変化を示す患者の割合が多い。

 



 これからの結果から、看護師の負担の軽減も考慮して以下のような内容で検討されそうだ。

・一般病床への入院は入院初日にB項目を測定
・急性期一般入院料の場合はA項目が大きく変化した際にB項目を追加で測定する
・包括期入院の場合は手術無しの場合は4日目以降に再度B項目を測定、手術ありの場合は7日目に再度B項目を測定する

 ただ、B項目には連携先にとっての受け入れの備えに必要な情報もあることから、連携の観点からの見直しや診療報酬上の評価の検討も必要に感じる。

 また、内科系症例に関してはこれまでの議論で評価を見直す方向性が示されていたところ。



参照:DPC/PDPSの4つの検討ポイント。内科系疾患をより反映するための重症度、医療・看護必要度の新たな対応の考え方が示される


 今回の議論では、更に調査・分析を進め、より詳細な見直しの考え方が示された。具体的には①A・C項目の見直し(緊急入院の該当日数を延伸すること、免疫抑制剤の点数を引き上げること、新たな処置等の項目を追加すること)と②1床当たり救急搬送件数と協力対象施設入所者入院加算算定回数の合算値を看護必要度に加味した底上げ評価をすること、の2点だ。





 救急搬送からの入院や緊急入院の約8割を内科系症例(手術のない症例)が占めていたことから、妥当性のある内容と言える。また、先の包括期入院に関する議論でも後方支援を評価する協力対象施設入所者入院加算は指標の一つとして挙げられているものの、届出自体はまだそれほど多いとは言えない状況なので、施設との平時からの連携を強化していくうえで歓迎されるべき内容と感じる。

 ただ、データの集計であったり、平時からの連携といったスタッフの負担が重くなってしまうことが懸念されるところだ。協力対象施設入所者入院加算の要件自体も改めて再検討するとともに、負担を減らす、もしくは負担に見合った評価となるようにして欲しいところだ。




参照:【2025年8月レポート】急性期一般入院料は増加基調が続く。一方で、精神科地域包括ケア病床は3か月連続の減少



働き方改革/タスクシフト・タスクシェアは着実に進んでいるものの、評価の妥当性は?

 勤務医の負担軽減のためのタスクシフト/タスクシェアは、看護師を始めとするコメディカルスタッフの責任と業務量の負担が増えることを意味する。そこで、診療報酬ではそうしたコメディカルスタッフの役割の拡大や給与等に結びつくように評価を高めてきている。その影響もあってか、取り組みは進んでいる印象だ。





 看護師については特定行為研修修了看護師が着実に増え、病院での配置も増えてきていることが確認されている。さらに注目すべき点としては、地域の介護保険施設等に対して、医療ケア等に関する支援を行う病院が一定存在し、病院の規模に関わらず、特定行為研修修了看護師等専門性の高い看護師が訪問による支援を実施しているということだ。こうした専門性の高い看護師を地域の共有財産と考えた評価についても期待される。例えば、外来栄養食事指導料2や連携強化診療情報提供料のような考え方などを応用するということなど。


参照:医療資源が限られた地域こそ、連携を通じた働き方改革・負担の分散を~診療報酬・調剤報酬にみる連携と負担軽減の評価を再確認~



 ただ、今回の議論で目を引いたのは手当や採用活動について。特にここ10年以上は夜勤手当が上がっていないこと、有料求人サービスを利用せざるを得ない状況(認定事業者以外の利用も少なくない)などが明らかにされており、診療報酬だけではない、人材確保のための支援などの環境整備も含めた対応の必要性が示されている。今後、中医協でどこまでの対応ができるかなど注目したい。






 看護師以外のコメディカルのタスクシフト/タスクシェアに目を向けてみると、届出数がなかなか増えないリハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算の効果に着目され、分析されている。要介護度の高い患者や高齢患者が対象となるケースが多いこともあってか、退院時にADLがあがっているなど、その効果は高い事がわかっている。また、リハビリテーションの提供量や休日リハビリテーションの実施状況にも差が出ることが明らかになっている。







 その他にも、低栄養の入力割合と入院栄養食事指導料の算定患者割合が高いことがわかっており、低栄養患者の早期発見・介入の効果もある。現行のリハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算は施設基準や要件のハードルが高い。届出ができる医療機関は環境整備等ができていることから高い成果が出ていると言えるが、実績要件等を見直し、環境整備に着目した施設基準等に見直すことで、体制整備は進み、管理栄養士やセラビスト、さらには歯科衛生士などといった専門職者の病棟配置が進むことが期待される。
 また、入院中のケアの多くを担当する看護師の負担軽減・役割分担の視点についても議論さ、専門職者が新たに業務を担うことのメリットが示されている。診療報酬や療養担当規則での新たな対応など今後検討されることとなりそうだ。




参照:看護師の負担軽減への対応が急務。病床機能に応じたNSTや入退院支援部門の評価を検討へ 他


 また、特定機能病院からの逆紹介割合が低いことに関するその原因究明となる調査の結果が公表されている。


参照:外来医療に関する令和8年度診療報酬改定、5つの論点が示される







 指定難病の患者と高額医薬品の使用患者が割合としては多く、患者数としては高額医薬品の使用患者と生物学的製剤使用患者、外来化学療法の患者が多いことがわかった。疾病の特性、患者側の事情など丁寧に整理し、連携強化診療情報提供料・2人主治医制等を利用した逆紹介の促進策など検討されていくことが予想される。