令和7年9月11日、第4回地域医療構想及び医療計画等に関する検討会が開催されている。医師偏在対策については、医療計画における医師確保計画や医師養成課程における取り組み、そして昨年末に医師偏在対策総合パッケージ(本パッケージを含む医療法改正については、継続審議中)が策定されており、これから新たな地域医療構想等と一体的に推進していくこととなっている。



参照:総数の確保から適切な配置へ ~新たな地域医療構想における医師偏在対策に関する取りまとめ案を確認する~


参照:医師偏在対策とD to P with N、令和8年度診療報酬改定での対応方針が明らかに



 今回の検討会では、次回の第9次医療計画における医師偏在指標に関して、医師少数区域の設定に関する新たな視点などと、医師偏在対策に関する新たな取組としての診療科偏在への対応について、その考え方が示され、今後議論が本格化していく。


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医師少数区域について地理的な要素を踏まえることを提案。性年齢階級別労働時間や地域の医師の年齢構成なども新たな医師偏在指標で検討を

 今回の検討会は、医療計画と新たな地域医療構想を整合性を持って、一体的にすすめていくものとなる。医師偏在対策は医療提供体制の確保にもつながる大事なテーマでもあり、医師の確保だけでなく、定着化、地域医療差の解消の視点が必要になる。そうした中で、各地で進む人口減少と医療提供体制の縮減が今後課題となる事がわかっており、医師少数区域が今後拡大していくことが考えられ、早期に対応をしていく必要がある。

 そこで、改めて医師少数区域の考え方について、厚生労働省より地理的な要素(人口密度、医療機関へのアクセス、離島や 豪雪地帯といった地理上の特性)を踏まえた設定について案が示されている。




 二次医療圏とはいえ、地域によっては山や大きな川があったり、冬は豪雪で途端にアクセスが悪くなることもある。こうした地理的要素を踏まえて医師少数区域を新たに設定することとなりそうだ。現行の医師少数区域の設定は、単に機械的に数字で算出された結果に基づくものとなっているため、こうした地理的要素を加えることで、より実態に即したものとなることが期待される。

 また、医師偏在指標については労働時間や地域における医師の年齢構成(新たな医師の流入の有無がなければ将来的に医師少数区域になる)なども調査・分析していくことが提案されている。特に、地域における医師の年齢構成を反映させることは重要で、医師確保は難しい場合は、オンライン診療や巡回診療車などの対策を先手を打って対応していくことができる。






地域で必要とされる診療の確保のための診療科偏在対策、3つの視点

 これまでは、医師偏在対策といった医師の適正配置・量の確保が主なテーマだった。ここ最近は、直美等といった言葉からもイメージされるように診療科の偏在も課題になってきている。先に紹介した医師偏在対策総合パッケージでは、その診療科偏在については以下のように記載されている。


「診療科偏在は、地域ごとの取組のみでは十分でなく、国全体として取り組むべき課題である。労働環境の改善や今後の医療需要の見込み等を踏まえ、新たな地域医療構想等を通じた一定の医療の集約化を図りつつ、女性医師・男性医師を問わず、必要とされる分野が若手医師から選ばれるための環境づくり等、処遇改善に向けた必要な支援を実施する。」


 今回の検討会では、地域で必要な診療を確保するための診療科偏在対策の取組について、3つの観点を明確にしている。




 視点1は、医師偏在対策総合パッケージにもあるように、リカレント教育や外科医に対する支援などを指す。

 視点2は、従来の政策医療分野を着実に推進していくことを指す。

 視点3は、人口減少が進む地域において一定のニーズが有る皮膚科や耳鼻咽喉科といった領域を基幹病院との連携やオンライン診療(特にD to P with D)を利活用していくことを指す。


 視点3については、これから多くの地域で求められてくると考えられる。持続可能な経営と地方財政の健全化を考えると、皮膚科や耳鼻咽喉科といったニーズのある専門領域については、地域外の資源を有効活用していくことが有効だと考える。都心部よりも、こうした可能性のある地域における医療DXの環境整備を優先して行っていくことが必要だ。あくまでも個人的な感覚だが、こうした医療資源が限られている地域の住民ほどマイナ保険証の利用割合は高いように感じる(もともと総数が少ないせいかもしれないが...)。住民にも協力を求めていくことも必要になる。