調剤報酬と歯科診療報酬改定に向けた論点探しがはじまる。かかりつけ機能のさらなる拡充と後発医薬品の加算の行方、医歯薬連携の評価に注目
令和7年9月10日、第616回 中央社会保険医療協議会総会が開催された。歯科と調剤に関する議論が行われ、それぞれの論点探しといった内容となった。調剤に関する議論と歯科における多職種連携に関する議論について確認をしたい。
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薬剤師偏在指標から読み解けること
令和5年度に策定され、令和4年度より各都道府県で開始されている薬剤師確保計画。計画期間は3年となっており、令和18(2036)年までに計画を達成することを目標としている。これは、令和12(2030)年から実施される第9次医療計画の期間に合わせることとなっている。
現時点での薬剤師偏在指標が今回示されているが、全国に335ある二次医療圏のうち、薬剤師偏在指標1.0を超える医療圏は、薬局薬剤師は107、病院薬剤師は17という状況。地域偏在があることはもちろんだが、勤務先(薬局、病院・診療所)にも偏在があることがわかっており、薬局勤務の薬剤師が多い。
なお、薬局数については減少している地域もある一方で、全体の薬局数は増加の傾向にあり、特に、処方箋発行枚数に対する薬局数に着目すると、大都市に集中している傾向があることが分かっている。医師偏在対策総合パッケージでは、外来医師過多区域の設定や新規開業に対する要請と診療報酬におけるペナルティを検討するなど考えられているところ。薬剤師についても、同様の施策が行われないとも限らない。とりわけ、病院勤務の薬剤師をいかに増やすかは重要なテーマにもなってくる。診療報酬では、病棟薬剤業務実施加算や薬剤業務向上加算、がん薬物療法体制充実加算など、病院薬剤師に対する評価を拡充しているものの病院での薬剤師確保の決定打となっているとは言えない。診療報酬・調剤報酬の議論でどういった対応を図っていくかは注目されるところだ。
薬局の対人業務・かかりつけ機能は拡大している
今回の議論では、前回改定後の調剤報酬の算定状況などを確認され、論点を探すこととなった。「患者のための薬局ビジョン」に沿って、着々と調剤報酬や薬機法の見直しが行われてきており、対人業務に関する評価の拡充が続き、調剤報酬上でも着実に進んでいることが分かる。
ただ、調剤後薬剤管理指導料を算定するには地域支援体制加算の届出が必要だ。地域支援体制加算は、いわばかかりつけ薬局を表すもの。全薬局の約4割が届出をしている。
「患者のための薬局ビジョン」では、2025(令和7)年にはすべての薬局をかかりつけへ、という中間目標が設定されているが、達成できているとは言えない。目標達成のために要件を緩和することも考えられるが、安易な緩和は質の低下を招くこととなる。すべての薬局をかかりつけへ、という目標達成に向けてどういった誘導策を図るのが注目される。
リフィル処方への対応を評価する服薬情報等提供料2は減少。後発医薬品調剤体制加算の今後は?
骨太の方針2025、春の建議の両方で、リフィル処方箋の推進、そしてバイオ後続品を含む後発医薬品の更なる使用促進が謳われている。薬局においては、服薬情報等提供料2においてリフィル処方箋の応需・対応が評価されることとなっている。令和6年度診療報酬改定では、生活習慣病病管理料・特定疾患療養管理料・地域包括診療料/管理料において、長期処方またはリフィル処方の希望があれば応じることと見直しが行われ、調剤報酬でも見直された。
リフィル処方箋自体があまり積極的に出ていないこともあってか、服薬情報等提供料2は微減となっている。また、服薬情報等提供料2においては、改定前までは算定可能とされていた「患者又はその家族等への情報提供」が削除された。その結果、患者からの電話相談に対応したのみでは算定が不可となったことも影響しているのではないだろうか。
その一方で、持参薬確認等を評価する服薬情報等提供料3は大きく増加している。病院薬剤師や看護師の負担軽減に貢献できていると思われる。その貢献が、退院時薬剤情報連携加算につながっていることを願うところだ。
後発医薬品調剤体制加算3については、増加の傾向だ。昨年10月の後発医薬品のある長期収載品の選定療養の影響だといえる。今後、後発医薬品調剤体制加算及び後発医薬品使用体制加算の存在そのものをどう判断するか、注意が必要だろう。
その一方で、高額な薬剤が増えていることもあり、院外処方が増えているというバイオ後続品に対する評価の見直し、選定療養対応など、薬局においてもバイオ後続品の使用促進をすすめるような評価が検討されるのか、注目が集まるところだ。
参照:令和6年度診療報酬改定の結果の検証と次回改定への影響は?~後発医薬品の使用促進について~
医歯薬連携の促進
歯科についても論点探しの議論がおこなわれている。ここでは、多職種連携に焦点をあててみる。
骨太の方針2025では、医歯薬連携の強化がうたわれている。骨太の方針2024においても、栄養・リハビリテーション・口腔管理の連携がうたわれていた。前回の診療報酬改定では、回復期リハビリテーション病棟を有する病院における歯科の標ぼうの有無や連携が議論されていたのは記憶に新しい。実際、回復期リハビリテーション病棟・地域包括ケア病棟・療養病棟を対象とした回復期等口腔機能管理計画策定料/回復期等口腔機能管理料が設けられており、多くは病院の歯科による算定となっている。
回復期リハビリテーション病棟では、摂食嚥下機能回復体制加算の算定が非常に低いことが指摘されていることから、令和8年度診療報酬改定においても引き続き回復期リハビリテーション病棟における歯科連携については議論されることになるだろう。
参照:賃上げに向けた評価の整理、回復期リハビリテーション病棟入院料・療養病棟入院料に関する要件の見直し、嚥下調整食に対する評価の可能性など課題の明確化と整理が行われる
歯科との連携の観点では、生活習慣病管理料において歯科受診を勧奨することが盛り込まれたり、服薬情報等提供料1における歯科医療機関への情報提供が追加されるなど連携の評価は進んでいる。歯科から薬局への連携を呼びかける診療情報等連携共有料も新設されている。
さらなる連携促進の評価が期待されるところだが、ここで注目しておきたいのは骨粗しょう症への対応と栄養を絡めた連携だ。
骨粗しょう症については、二次性骨折予防管理料による連携が評価されているのだが、外来栄養食事指導料では、骨粗しょう症は対象になっていない。実のある連携とするには、外来栄養食事指導料の対象に骨粗しょう症も加えた上で、歯科との連携を強化していくことで、より実のある連携、健康寿命延伸につながることになるだろう。