生活習慣病管理料の包括範囲の見直しを検討へ。バイオ後続品のさらなる使用促進、地域でのポリファーマシー対策について薬剤数に限定しない評価を
令和7年10月17日、第621回中央社会保険医療協議会 総会が開催され、外来医療・バイオ後続品を含む後発医薬品の使用促進・ポリファーマシー対策に関する診療報酬改定に関する議論が行われている。今回は、かかりつけ医機能を発揮して、慢性疾患患者の適正処方と重症化対策をいかに継続して続けることができるか、といった目的の議論になっていると考えられる。新たな地域医療構想では、外来・在宅も対象となり、現行の地域医療構想や新型コロナ感染拡大の影響で病床が減少し、患者の療養する場所が患者の居住地となっているケースが増えてきていることに対応するものでもあるといえる。かかりつけ医機能報告の本格的な始まりに備えた重要な議論・テーマとして注目している。
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【コンテンツのご案内】令和5年度病床機能報告制度に基づく現行の地域医療構想の現状
かかりつけ医機能報告との整合性、そして「データ」の提出を求めることに?
外来医療に関する議論は2回目になる。前回は5つの論点が示されており、今回は論点に沿って具体的な議論に入っている。
参照:外来医療に関する令和8年度診療報酬改定、5つの論点が示される
かかりつけ医機能報告との整合性についてだが、機能強化加算のあり方が焦点になっている。機能強化加算とは、地域包括診療加算や在宅時医学総合管理料(在宅療養支援診療所・病院であること)といった外来や在宅でのかかりつけ医機能を有する一般病床200床未満の病院が届出できる(在宅医療の実績も必要)もので、初診で80点の加算となる。かかりつけ医機能を有している医療機関であることが前提となっていることもあり、かかりつけ医機能報告で求められる機能と類似する点が多く、さらに「処方薬の把握」「健診に関する相談」「予防接種」「学校医」等に関する機能を有している割合が届出のない医療機関に比べて高いのが特徴だ。
さらに、主治医意見書の作成にも積極的に取り組んでいることから介護との連携にも積極的であることもわかっている一方で、臨床研修医の受入や専門研修の地域プログラム等に所属する専攻医の受け入れ状況は高くはない。かかりつけ医機能報告においては、研修医等の受入も役割として求めている。また、一次診療の対応が可能な診療領域・疾患についてもかかりつけ医機能報告では求めているが、現行の機能強化加算では施設基準には含まれていない。
厚生労働省からは、外来データ提出加算をイメージした診療実績データ提出を求めたいとしている。
かかりつけ医機能報告の2号機能では時間外対応等の実績を求めることになっているが、1号機能で求められる一次診療対応についても実績を提出することを要件として機能強化加算として評価したい考えだ。そうなれば、導入には時間もかかるため、次回改定までの経過措置や、電子カルテ情報共有サービス等の医療DXの環境整備状況にあわせた経過措置などが設定されることになるのではないだろうか。
その他、BCPへの対応も議論されている。人工透析に関する議論や災害医療に関する議論でも診療所におけるBCPは論点に上がっていることから、かかりつけ医機能を有する医療機関においても求められることとなりそうだ。
生活習慣病管理料、継続診療に対する評価と管理料Ⅰの包括範囲の適正化がテーマに
前回改定で大きく見直された生活習慣病管理料については、包括範囲飲み直しが話題になっている。例えば、管理料Ⅱでは生活習慣病と直接的に関係のない項目などが複数あることが指摘され改めて見直すこととなりそうだ。
ただその一方で管理料Ⅰは検査が包括されているが、受診頻度と検査の実施回数に課題があることが示唆れていることから、管理料Ⅰにおいては定期的な検査を行うことなどが新たに追加される可能性や、重症度や併存疾患に応じて管理料の要件を設定することなども考えられるかもしれない。
生活習慣病管理料飲み直しで焦点となりつつあるのが継続算定・継続受診に対する評価だろう。令和6年度診療報酬改定結果に関する外来患者及び一般の方を対象とした調査において、「定期的な受診を続ける上で、医療機関の体制や機能として必要と思うこと」を聞いたところ、「予約診療を行っていること」が最も多く、次いで「28日以上の長期処方に対応していること」、「複数の職種の医療スタッフとの連携によって治療管理が行われていること」、「休日に診療ができる体制が整備されていること」等が多かったことがわかっている。予約診療に関する施設基準を新たに設けて評価を拡充することなどは可能性とありそうだが、その一方で長期処方・リフィル処方についても現行では院内掲示のみとなっているが、実績を評価することや薬局と連携した服薬フォローなどを新たに施設基準に加えていることも可能性としては考えておきたい。
その他、生活習慣病管理料に関しては歯科・眼科との連携のさらなる促進や診療ガイドラインに沿った診療の推進など、標準診療や連携を通じた重症化対策に対する施設基準の見直しが可能性としてありそうだ。連携の観点で今からでも取組を始めておきたい。
連携強化診療情報提供料を柔軟に活用できるようにして、2人主治医制を促進する
とりわけ特定機能病院からの逆紹介に課題がある、ということで調査も実施されるなど急ピッチで議論と検討が進んでいる。
参照:高齢患者の増加に備え、外来の役割分担・包括期入院の適性評価・入院から外来への移行促進・一般病床での精神疾患対応・病院薬剤師の活躍の評価について議論される
参照:緊急入院/高齢者救急、協力対象施設入所者入院加算の実績等で看護必要度の評価を底上げする見直しを検討、高額薬剤の使用を理由としない入院受入をどうするか? など
特定機能病院では、悪性腫瘍や指定難病、小児慢性特定疾病など専門性の高い領域や設備環境から、逆紹介が難しい患者が多くいる一方で、地域の開業医等に逆紹介可能と考えられる患者も多くいることがわかっている。
そこで、こうした逆紹介可能な患者の逆紹介を促すために外来診療料の減算規定の対象となる患者を見直すことと同時に、連携強化診療情報提供料を使いやすく要件を緩和することなどが検討されそうだ。連携強化診療情報提供料は、どちらか一方がかかりつけ医機能を有する医療機関であることが求められるため、対象が限られること、また連携元・連携先がかかりつけ医機能を有しているかどうかを確認するといった作業も発生するなど、やや使い勝手が悪いとも言える。
参照:公表が続く「紹介受診重点医療機関」、確認しておきたい「連携強化診療情報提供料」の意味。
2人主治医制を促進する観点での連携強化診療情報提供料の見直しに注目が集まる。
後発医薬品の使用促進、加算と減算どちらへ?、地域でのポリファーマシー対策の評価を強化
後発医薬品の数量割合が80%を超えている現況で、果たして加算を継続することがよいのか、基本料を引き上げて減算とするのがよいのか、議論が分かれるところ。安定供給の課題がある中で数量割合が着実に上がっている点だけをみると、加算の廃止も頷けるところだが、患者への説明に要する負担やいわゆる逆ざやの状況も確認する必要がある。もう少し議論に時間が必要だろう。
一方でバイオ後続品については、まだこれから促進していくことが必要だ。診療報酬でも促進策は導入され、算定実績は上昇している。
また、療担規則・薬担規則では「投薬(注射も)を行うに当たっては、後発医薬品の使用を考慮するよう努めなければならない。」という規定はあるものの、バイオ後続品には規定がないため、規定に加えていく方針となりそうだ。
参照:OTC類似薬の保険適用の見直し、バイオ後続品のある先行バイオ医薬品を選定療養に加えるのかなど、薬剤給付のあり方の議論がはじまる
バイオ後続品を含む後発医薬品の使用促進は、単に医療費抑制だけではなく、長期にわたって服用を正しく続けてもらい、重症化対策をおこなっていくことも重要な目的だ。そうした観点から、適正服用を診療報酬・調剤報酬でも評価をしている。その代表的なものがポリファーマシー対策だ。前回改定では、入院中のポリファーマシー対策の評価である薬剤総合評価調整加算の要件が緩和されたところ。
昨年7月には、ポリファーマシーの手引きが更新され、入院中に実施したポリファーマシー対策を退院後も継続して実施していくべく、地域のポリファーマシー対策の司令塔となるべく、中核病院の地域医療連携室や地域薬剤師会に所属する薬剤師による地域ポリファーマシーコーディネータの配置などがその手引きに盛り込まれている。
参照:院内でのポリファーマシー対策は院内の専門医療チームとの連携で効率的に。地域では地域ポリファーマシーコディネーターを定め、患者個別に薬剤調整支援者による対応を
参照:高齢者医薬品適正使用検討会にて、埼玉県と広島県でのポリファーマシー対策事業に関する最終報告が行われている。地域に地域ポリファーマシーコーディネーターを配置し、実務者として薬剤調整支援者を任命。次回診療報酬・調剤報酬改定でも注目です。
今回の議論では、調剤報酬のある項目「服用薬剤師調整支援料」「重複投薬・相互作用等防止加算」について取り上げられ、実績が伸びてきていることが紹介されている。しかしながら、「服用薬剤師調整支援料」の要件をみると「内服薬6種類以上」となっているのがわかる。ポリファーマシーとは、複数の薬を服用することによって生じる有害事象のことで、薬剤数だけが問題というわけではない。
果たして、薬剤数だけ着目した要件設定のままでよいのか、今回論点が示された。薬局に限らず入院においても、ポリファーマシー対策の手法や実行可能な計画の策定といった取組内容に焦点をあてた見直しなどが考えられそうだ。