令和7年11月28日、第631回 中央社会保険医療協議会 総会が開催されている。今回は、消費税分の補填、調剤報酬、救急医療、医療資源が少ない地域での評価、書類等の簡素化について議論されている。


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医療政策ニュースのつぶやき


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令和8年度診療報酬改定では、消費税分の補填は行わない方針に

 受診は非課税となっており、医療機関は仕入れで支払った消費税を負担している。さらに、急性期、慢性期、精神など医療機関の種類や規模によっても仕入れや治療に違いがあるため、消費税分の負担は一概には言い難いところがある。診療報酬で補填されているとは言え、やはり差がある。ゆえに、受診を課税対象にすることがわかりやすいと個人的に思う。

 今回、消費税分の補填は全体的になされているとのことから令和8年度診療報酬改定では補填分の点数の引き上げは行われない方針となった。




 本質的には、受診を課税対象とし、ゼロ税率(売上にゼロの税率をかけて売上税額をゼロにすること。仕入税額控除が可能となる。)を導入することを本格的に考える時だろう。



かかりつけ薬局機能の発揮に向け、対人業務の評価を拡充し、対物業務の評価の割合を縮小へ

 2015年に策定された「患者のための薬局ビジョン」だが、10年を経過した。改めて「患者のための薬局ビジョン」を確認すると、10年後となる今年度中に「すべての薬局にかかりつけ機能を」となっているが、達成できているとは言い難い。




参照:改めて読み返し、基本姿勢に立ち返るための「患者のための薬局ビジョン」


 また、薬局数は、東京都や大阪府などで増加しているが、都道府県によっては減少しているところもある。なお、1店舗あたりの薬剤師数は増えていないため、薬局の規模は大きくなっていないことがわかっている。



 こうした現状から、薬局・薬剤師の偏在によって現実として起きている課題、起こり得る課題が示され、調剤報酬改定において対応していくことになる。




 今回の議論では、先日の医療経済実態調査の結果も踏まえ、調剤基本料のあり方、とりわけ処方箋の集中率のあり方を踏まえた門前薬局に対する評価について詳細に分析、議論されている。医療モール内薬局・敷地内薬局(特別調剤基本料Aを除く)では損益率が増加していることがわかりやすく示された。





 敷地内薬局については、除外基準の見直しが検討されることを以前伝えた。合わせて、前回診療報酬改定の際に検討された、敷地内薬局を有するグループ全体の調剤基本料を適正化することも改めて検討される可能性もある。医療モールに関しては、処方箋受付回数が多い上位3の合計処方箋集中率ではなく、モールに入っているすべての医療機関の処方箋集中率を基準とするなどへ見直していくこととなりそうだ。




参照:精神病床の削減に躊躇しない中小規模の精神病院に対する評価の検討と敷地内薬局に対する厳格なルールの検討へ


参照:敷地内薬局はグループとしての評価へ。在宅移行期の医師との連携で処方提案等に対する評価を検討。


 また、調剤基本料1を届出る薬局の中でも処方箋受付回数が多く、集中率が高い薬局では、備蓄品⽬数が少なく後発医薬品体制加算3を算定しているものの、特別区・政令指定都市では特に地域⽀援体制加算や在宅薬学総合体制加算の算定割合が低くなっていることがわかり、小規模薬局の乱立を誘発して、かかりつけ機能を発揮することが難しい薬局が多くなっていることが示された。







 今回の診療報酬改定の特徴として、地域差を反映した議論が多いのが特徴と言える。調剤基本料についても、地域差を踏まえて、特別調剤基本料Aの除外基準を設定したり、処方箋集中率についても集中率が高く、都心部にある場合の新たな区分を設けることなど考えられるだろう。

 なお、地域差に関して言えば地域支援体制加算の実績要件についても議論されている。人口が少ない地域では実績要件を満たしづらいものもある。同様に、在宅薬学総合体制加算も。こうしたかかりつけ機能については、地域差を踏まえて求める実績の内容や件数などを見直すこととなる。








 こうした薬局及び薬剤師のかかりつけ機能に関しては、対人業務促進の観点からの見直しが検討される。


・調剤管理料の日数による点数区分、6種以上の内服薬に対して評価をする調剤管理加算がポリファーマシーの是正に逆行しているようにみえるため、簡素化推進の観点からも見直しへ




・重複投薬・相互作用等防止加算について、DXで検出は容易になったが、検出された重複投薬や相互作用について薬学的疑義照会の手間がかかることを踏まえた評価を検討する。


・吸入薬指導加算について、個室が必要となり、また薬剤師にも相応の負担が発生するインフルエンザ等の急性疾患が対象になっていないため、対象とすることを検討する。




・かかりつけ薬剤師指導料の同意取得数や算定数にノルマを課している薬局があることや、薬局にいく度にかかりつけ薬剤師の同意を求められる患者がいること、またかかりつけ薬剤師指導料の有無に関係なく、配送料を無料としたりポイントの付与などで誘引していると捉えられかねない薬局がある現状を踏まえて、かかりつけ機能に関する要件の見直しや広告のあり方などを検討する。






・無菌製剤処理加算に加点する患者対象年齢の範囲について、6歳以上の小児の薬剤調製の実情に鑑みて拡大を検討する。


 対物業務を厳格化し、対人業務の比重を高める方向性が明確だ。「患者のための薬局ビジョン」に基づいた改革路線は今後も継続していく。



人口の少ない地域における外来診療体制、D to P with N・D to P with Dの活用を

 医療資源の少ない地域について、令和5年医療施設静態調査等の直近の統計を用いて見直しを行うことと、外来診療体制を確保するための診療報酬上の支援について議論されている。

 継続的な巡回診療、医師派遣、代診医派遣による診療や、D to P with N、D to P with Dを含む情報通信機器を用いた診療を活用し、地域の外来診療確保やそのための支援を行うとともに、増悪した急性期の患者を受け入れることのできる医療機関についての評価についての議論が今後行われる見通しだ。




 令和8年度診療報酬改定では、オンライン診療を適正に推進していく方針で議論が進められているが、その中でもD to P with DとD to P with Nを使いやすく、対象を拡充して行く方向性が明確だ。人口が少ない地域では高齢者割合も高く、ICTを患者本人が使うことにはハードルも高く、療養指導の内容を正しく理解できているか不安もある。私自身、人口が少ない地域での地域医療連携のご支援をさせていただくことがあるが、そこでよく感じるのは、「よく聞こえていないにもかかわらず、聴いたふり」をしてしまうことや「医師に気を使って聴いたふり」をしてしまうことだ。そこで、医師や看護師が一緒に受診できることで患者に大きなメリットがある。人口が少ない地域、医療資源が少ない地域の医療機関ほどDXへの取組が必須だといえるが、そうしたDXの操作などをサポートしてくれる医師事務作業補助者を採用できる評価があればと思う。


参照:療養・就労両立支援指導料の対象を拡充へ。オンライン診療を適正に推進するための見直し、そして短期滞在手術等基本料3の対象となっている手術等を入院で実施した場合の評価の引き下げを検討へ



下り搬送の推進、救急外来の人員確保と検査体制の確保に関する評価を

 高齢者の救急搬送が増加している現状を踏まえて、令和6年度診療報酬改定ではいわゆる下り搬送となる「救急患者連携搬送料」が新たになり、地域包括医療病棟入院料が新設されるな度行われたところ。しかしながら、「救急患者連携搬送料」の届出は奮っていない。その原因として、搬送時に同乗するスタッフの確保が難しいことや自院で救急自動車を有していない、といったものが上げられている。また、必ずしも救急自動車での搬送が必要とは言えない患者もいること、搬送先が遠距離な場合なども課題とされている。




  救急自動車に関しては以前ご紹介した「救急業務のあり⽅に関する検討会(総務省 消防庁)」の報告書に盛り込まれている民間の搬送事業者の活用を「救急患者連携搬送料」においても可能とすることとなりそうだ。また、搬送先が遠距離になる場合の長時間加算が期待される。


参照:救急業務を安定的に、持続的に提供しつづけるための「マイナ救急」「♯7119」「救急患者連携搬送料」「地域連携」


 下り搬送を受け入れる側についても平時の連携体制の確保などについても今後議論されていく予定だ。


 救急外来応需体制についての議論では、夜間休日を含め医師・看護師等を配置し、検査・処方等が可能な体制を整備しているものの、そうした環境整備や人員配置に対する直接な評価がないことが課題としてとりあげられ、議論が要請されている。平時からの連携体制などの間接業務も考えると負担は大きく、費用も必要だ。こうした救急医療を担う医療機関は地域の最後の砦ともいえることから支援が必要だといえる。今後の議論に大きな期待が寄せられる。




 一方で、救急入院を評価する「救急医療管理加算」については、これまでも診療報酬改定の都度、データに基づき見直しが繰り返し行われてきた。今回の議論では、救急車等の受入実績(年間500件)を一つの区切りとして、ウォークインの救急の受入実績と合わせて状況が確認されている。「救急医療管理加算」の施設基準にこうした実績などが盛り込まれ、実績に応じた区分が設定される可能性が考えられるだろう。




 その他、医療DXへの対応を見据えた様式項目の標準化についても議論が要請されている。業務負担の大きい計画書やその他煩雑な計画書について、様式の簡素化や運用の見直しを行うことや各種様式の共通項目については、可能な範囲で記載の統一を図ることについて、今後具体的に議論が進められていくこととなる。