令和7年2月21日、総務省消防庁にて「第3回 救急業務のあり方に関する検討会」が開催され、検討会の報告書案が公表された。


 おそらくだが、交通外傷などはエアバックやセンサー技術の発展もあり事故は減少していると考えられる一方で、高齢者の人口割合の増加に伴う救急搬送や、外来医療と在宅医療の進展に伴う在宅や施設からの救急搬送は増加の傾向にある。最近では、救急車を利用して入院に至らなかった場合は利用者に一部自己負担を求める自治体もあるように、救急業務がひっ迫している。この検討会では、そうした救急業務の負担軽減と効率化をどうやって推進していくかを、実証研究を通じて明らかになってきたことをまとめている。医療機関との連携の観点でポイント確認していこう。


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令和7年度は「マイナ救急元年」

 マイナ救急とは、マイナンバーカードを活用した救急業務。マイナ保険証となっていることで、オンライン資格確認を通じて救急隊が傷病者の情報を取得したり、搬送先医療機関との円滑な連絡調整が可能となる。これまでは、口頭確認などであったが、意識のない状態等であればそれができない。マイナ救急の環境ができていれば、そうした確認事項などについても負担と時間を大きく削減できるし、搬送先の選定にも大きく貢献できる。


 マイナ救急については、実証検証事業が実施され、明らかな成果があったことがわかっている。



 令和7年度においては、この実証事業を大きく拡大していくことから、令和7年をマイナ救急元年と表現している。マイナ保険証の利活用は、受診や公費医療の申請の時だけではなく、こうした緊急時においても有用だ。とりわけ、継続診療中の患者や施設利用者に対しては、マイナ保険証が救急場面でも大いに貢献できることを伝えていくことが必要だ。


#7119の効果は大きい。しかし、高齢者や介護者の認知度が低いことが課題

 #7119とは、救急安心センター事業のことで、地域住民が急な病気やケガの際に、医師や看護師等の専門家が相談に応じる電話相談事業のこと。令和6年11 月末現在、全国36 地域で実施されている。この事業では、以下の要件が求められており、適切な救急要請や受診などを推進している。

1.緊急度判定を用いた救急医療相談と医療機関案内のいずれも実施すること

2.救急医療相談の相談員は、医師、看護師又は救急救命士とすること

3.医師の常駐又はオンコール体制を確保すること

 本事業の効果は大きく、消防機関及び医療機関の負担軽減、救急外来の減少などわかっている。



 今後さらに事業に取り組む地域を拡充していくことと同時に、高齢者及びその介護をする方に#7119の認知度を高めていことが重要だ。また、認知度が高まっていくことを見越した受け手側の対応としてAIの活用などについても触れられている。

医療機関の救急車を活用した「下り搬送」を推進する

 救急業務は、消防法第2条第9項により、傷病者のうち、医療機関その他の場所へ緊急に搬送する必要があるものを、救急隊によって、医療機関その他の場所に搬送することとされている。消防機関の実施する転院搬送(傷病者を一の医療機関から他の医療機関へ搬送する事案)は、全救急出動件数の1割弱を占めるため全体の救急搬送件数に与える影響が大きく、救急車の適正な利用が求められている。


 また、消防庁と厚生労働省は連名で、「転院搬送における救急車の適正利用の推進について」(平成28 年3 月31 日付け消防救第34 号医政発0331 第48 号)を発出し、その中で、転院搬送における救急車の適正利用にかかるガイドラインを示し、各地域における、救急業務として転院搬送を行う場合のルール化に向けた合意形成を促進してきた。そうした中で、転院搬送が全体の救急出動に占める割合は減少してきているが、転院搬送出動件数は増加してきている。
 そうした現況において、令和6年度診療報酬改定で「救急患者連携搬送料」されたことで、医療機関の救急車を積極的に利用していくこと、また医療機関に救急車を配備するべく消防機関で使用を終えた救急車の引渡しなどが報告書案に盛り込まれると同時に、転院搬送における救急車の適正利用にかかるガイドラインに追加項目を設ける方針を示した。


 報告書案には、「救急患者連携搬送料については、今後、日数経過に伴う点数の減少幅を抑えることや3日以内の制限日数を伸ばすこと等により、更なる病院救急車の活用につながることが考えられる」という意見も盛り込まれている。救急業務の負担軽減に貢献するという観点から、次回診療報酬改定での見直しにも影響してくることだろう。

在宅医療、高齢施設等との連携に消防機関も積極的に関与を

 地域の実情に応じて、各地域の在宅医療に関する協議の場に積極的に参加し、例えば、救急ひっ迫状況や地域の救急状況等について協議の場で発信していくこと、また地域の実情に応じて、消防機関の救急車に限らず、搬送先として想定される医療機関の病院救急車を利用する提案をしていくことなども示された。入退院支援加算や介護施設等の協力医療機関で求められる地域連携ネットワークのカンファレンス等で消防機関の参加なども今後求められる可能性も意識しておこう。