参照:かかりつけ医機能報告制度の今後のスケジュールが明らかに。「協議の場」と「地域医療構想調整会議」の関係性などは?
医療機関としての方針(住民に選んでもらうことを主体に考える1号機能を目指すか、同業者に選んでもらうことを主体に考える専門医療機関を目指すか)を明確にすること、そして実績をありのままに伝えること。初回となるかかりつけ医機能報告は、地域医療の現状を把握し、協議を通じて役割分担を図った上で、地域住民への周知を促していくための環境作りが目的といえるのではないだろうかと個人的に考えている。そして、同業者に選ばれることを主体と考える診療所の場合は、外来機能報告制度による報告も視野に入れ、紹介受診重点医療機関となることを考えるきっかけにしたい。
第2回目となる今回は、令和8年1月からの報告に向けたスケジュールや求める報告の内容などが示されている。
令和7年10月頃から報告依頼開始。診療報酬に関する実績はNDBより取り込み
実際の報告は令和8年1月からとなる。報告することは大きく3つのカテゴリだ。カテゴリーの1つ目は体制に関する報告。すなわち、かかりつけ医機能を有する医師の有無(1号機能)と時間外対の有無など(2号機能)がそれだ。具体的な報告すべき事項は以下の通り。
1号機能の報告事項では、「具体的に有する機能と報告事項の院内掲示」・「17診療領域ごとの一次診療対応可否の有無及び対応できる一時診療を対応できる領域の明示」・「医療に関する患者からの相談対応」の3項目が「かかりつけ医機能有り/無し」の要件を判別するものとなる。なお、かかりつけ医に関する研修の修了者数について報告することになっているが、要件の判別には影響はしない。ただ、5年後の見直しでは要件の判別に入る可能性もあるので意識しておきたい。
報告すべき2つ目と3つ目のカテゴリーは2号機能の実績を指す。2号機能とは、医療機関としての機能を表すもので、緊急時の対応や連携のHUBになっているか、在宅医療を提供しているかなどを報告するもの。1号機能有りとなった医療機関が報告するものとなる。なお、2号機能の報告に当たっては該当する診療報酬の算定実績を報告することとなっているが、こちらはNDBのデータからシステムへ取り込みを行うこととなる。
かかりつけ医機能報告で期待されるのは、外来・在宅医療の可視化と役割分担の可能性
かかりつけ医機能、というと地域住民に向けてどのように周知していくか、という発想になるだろうが、本格的に地域住民に周知していくのはもう少し先のことになるだろう。まずは、地域医療の現状を正しく把握し、地域で不足する医療サービスは何か、過剰になっているサービスがあれば適正化し、リソースを不足する領域にどれだけ振り分けるか、といった話し合いの素材と素地が必要だ。環境もできていないの周知しては、地域住民が困ってしまう。ゆえに今回のかかりつけ医機能報告とは、まずは地域の医療環境を可視化することが第一といる。そのうえで、令和8年4月からはじまる外来版地域医療構想ともいえる「協議の場」に臨み、話し合いを通じて役割分担を図っていく、という流れになる。この「協議の場」については事例集も準備されており、今回公表された資料にも一部掲載されている。
よく「かかりつけ医機能報告制度に向けてどういった準備をすればよいですか」という相談を受けることがある。地域住民に選んでもらうかかりつけ医でいくか、同業者に選んでもらう専門医療機関でいくか、自院の地域における在り方を明確にすることから始めることになるが、地域のかかりつけ医を目指すのであれば、純粋に1号機能の報告事項の要件を満たせるように取組むこと以外には特に準備することはないと個人的な考えを伝えている。ありのままの今をまずはオープンにする。ただ、強いて言えば中長期的対応として、以下の点は頭の片隅に入れておきたい。
・医療DXへの対応
今後様々な実績が求められてくることや、連携の観点からDXの環境整備は必須だといえる。ここでいうDXとは、オンライン資格確認・電子カルテ及び電子カルテ情報共有サービス・電子処方箋の3つ。報告事項には全国医療情報プラットフォームへの参加も入っているが、現時点では要件には入っていない。5年後は必須になっている可能性が高い。
・200床以上病院及び専門診療所等における連携強化診療報提供料の実績
連携強化診療情報提供料とは、紹介を受けた患者を継続して診療しつつ、月に1回以上紹介元に患者の状況を連携することを評価するもの。200床以上病院では連携強化診療情報提供料を算定することで逆紹介したとみなすこととなり、外来診療料の減算規定に有利に働くことになる。
かかりつけ医機能報告は、病院等も対象になる。2号機能の入退院時の支援における逆紹介患者数などにも関連してくることになるとともに、協議の場での地域連携の質をみる際の一つの指標にできる。同業者に選ばれることを主体と考える診療所の場合は、外来機能報告制度による報告も視野に入れ、紹介受診重点医療機関となることを考えたい。
参照:公表が続く「紹介受診重点医療機関」、確認しておきたい「連携強化診療情報提供料」の意味。
・地域医療情報連携NWへの参画
ACPに関する情報共有やワクチン接種の有無などの情報共有なども地域で共有し、重症化対策と患者の思いを共有して、いざというときに迷わない環境を作る。
かかりつけ医機能報告制度と同時に始まる「患者に対する説明」
かかりつけ医機能報告制度と合わせて、かかりつけ医機能を有する医療機関は患者に対して提供する医療の内容について、患者の希望に応じて説明する、という努力義務も始まることとなっている。
この説明について、Q&Aでどういった方法・様式で行えばよいか明らかにされている。
4月以降に発出されるガイドライン別冊にて例が示される予定となっているとのこと。すでに説明資料などを利用されている場合は、ガイドライン別冊で要求されている内容を反映してアップデートしていくことになる。電子カルテ情報共有サービスは本格稼働されれば、患者サマリ機能を利用して説明をしていくこともできるようになるのではないだろうか。