看護の専門性に関する様々な認定・資格、研修の整理。診療報酬を含む医療政策との関連性の確認
医師の負担軽減対策の一つとしてあげられるタスクシフト・タスクシェア。病院においては看護師と薬剤師にその期待が高い。とりわけ看護師については、手順書に基づいて特定の診療行為を行うことができる特定行為研修が行われるようになり、その修了者も増え、医療機関での配置も着実に増えてきている。令和5年、約30年ぶりに看護師確保等基本方針が見直され、第8次医療計画や令和6年度診療報酬改定に反映された。それまでは折からの看護師不足に対する内容が主なものだったが、新興感染症や自然災害などへの対応に関する項目を新設されたり、看護師の養成におけるハラスメント問題への対応、処遇改善、雇用管理者の責任、キャリアアップといった昨今の社会情勢が盛り込まれた内容となった。
参照:令和6年度診療報酬改定と看護師確保等基本方針を確認する
おそらく次回診療報酬改定においては、こうした特定行為研修修了看護師の配置を評価する項目(急性期充実体制加算や地域医療確保体制加算、訪問看護領域など)の要件の見直しや、ベースアップ評価料における新たな区分の設定(介護報酬における処遇改善加算では、資格取得などを含めたキャリアパス要件に応じて区分がある)なども考えられる。高度実践看護師が活躍できる環境整備が整いつつある中、改めて看護の専門性に関する現状について整理しておきたい。
認定看護師、専門看護師(CNS)、診療看護師(NP)、特定行為研修
看護の専門性を考えると、代表的なものとして3つの認定・資格がある。日本看護協会が認定する認定看護師と専門看護師、診療看護師(NP)コース設置大学院での修士号を取得しNP協議会が実施する資格認定試験に合格した診療看護師だ。特定行為研修は、資格や認定というものではなく「看護師が手順書により特定行為を行う場合に特に必要とされる実践的な理解力、思考力及び判断力並びに高度かつ専門的な知識及び技能の向上を図るための研修であって、特定行為区分ごとに特定行為研修の基準に適合するものであること」となっている。
認定看護師や専門看護師、診療看護師においても、自身の専門領域外について必要に応じて特定行為研修を受講することで所属する医療機関の実情に合わせて対応できる領域を拡充することができる。
特定行為研修については、第8次医療計画において養成のみではなく、医療機関への配置に対する目標も設定されている。次回診療報酬改定でも期待される所以だ。
診療看護師については「チーム医療のキーパーソンとして、①医師や他の医療者と連携・協働し、②患者の健康上および生活上のニーズを包括的に評価し、③科学的根拠に基づき、個々の患者に必要とされる医療サービスを提供することにより症状マネジメントを効果的、効率的、タイムリーに実施し、患者のQOLの向上に寄与する」という役割が期待されている。実際の活躍の場としては、PICCの対応、麻酔管理、在宅での瘻孔管理など。なお、手術、診断は不可。処方も不可だが、処方の代行入力などを通じて処方提案などを行う医療機関もある。例えば、無医地区などでは診療看護師が外来診療をし、診療後に医師に確認いただき、その場で処方提案をする、ということもある。
地域における看護リソースの最適化、診療看護師の「臨床推論」
地域医療構想の進展で地域における病床の適正化がすすみ、在宅・施設が療養の場となってきている。そのため、新たな地域医療構想では外来・在宅・介護福祉も含めたものとなる。また、注目されるのは新たにはじまる医療機能報告の中身。病床機能では慢性期があるが、医療機能報告では慢性期病床は専門等機能に分類される。地域によって考え方や在り方は変わるだろうが、長期療養は極力在宅・施設へ、ということともいえる。
急性期の適正化が進み、長期療養も在宅への移行が進められることで、今後はプライマリ領域での看護師の活躍が期待され、とりわけ診療看護師の活躍に注目が集められる。急性期から回復期、慢性期への移行で問題解決施行から問題発見思考へ、そして、臨床推論といった判断が必要になってくる。医師の臨床判断等について学んだ診療看護師はその臨床推論が強みだといえ、今後在宅や外来でのチーム医療のキーパーソンとしての活躍が大いに期待されるところ。
特に今後期待されるのは、D to P witn Nでの活躍だ。最近は遠隔診療に関する様々な機器が登場し、遠隔での検査等もできるようになりつつあるが、通信品質や電源確保の問題があるとともに、結局機器をつかって診療をすることになることから医師の負担事態はそれほど減らないこともある。また、処置等も行えない。医師の臨床判断等についても学んでいる診療看護師であれば、そうした課題に対応できる。ただし、処置については現状のD to P with Nでは診療報酬では評価の対象外となるため、持ち出しか自由診療になってしまう。この点については、昨年末の規制改革推進会議の中間とりまとめにて次回診療報酬改定での対応が求められているため、改善される見通しだ。
プロ経営者としての看護管理の専門性を
認定看護師の一つである認定看護管理者についても注目をしておきたい。医療機関の中で最もマンパワーがあるのが看護部門であり、医療機関の組織マネジメントで重要な位置づけとなる。一般ビジネスの世界でも言えることだが、現場でのスキルが高い人が必ずしもマネジメントのスキルも高いというわけではない。マネジメントについては、また別の学びと経験が必要であり、悩みを相談できる仲間を内外につくることは必要だ。認定看護管理者を目指すことはその対応となる。また、マネジメントの入門として、初めてリーダーになった時に日本商工会議所で行なっている「ビジネスマネジャー検定試験」にチャレンジしてみることもよいのではないかと思う。私自身もサラリーマンをしていた時に初めて管理職になった時に自己学習をして合格したが、マネジメントの基本的知識や発揮する場面について学ぶことができた。
2023年12月に公表された改革工程表では、「病院長等に対する労務管理に関するグループワークを含むマネジメント研修の受講者数 【2024年度から2026年度の期間に延べ3,000人】」というKPIが設定されている。最善のパフォーマンスを発揮できる環境、医師の負担軽減だけではない看護師のための負担軽減をどうやって創り出していくか、認定看護管理者への期待は大きく、認定の取得者を増やしていく取組も重要だと感じている。