令和6年度は診療報酬の他にも、6年に一度の見直しとなる医療計画、医療費適正化計画も同時に見直される。ある意味、6年後に設定した目標を達成するべく診療報酬がその後押しするための項目も目白押しになっている。医療費適正化計画(後発医薬薬品、外来化学療法など)、看護師確保等基本指針、医療計画(周産期医療、新興感染症対策など)、精神保健福祉法などとの関連性を見ながら、今回の改定の意味などを確認してみたい。今回は、看護師確保等基本指針との関連性について。
令和5年10月26日、「看護師等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針(看護師確保等基本指針)」が告示された(参照:第3回医道審議会保健師助産師看護師分科会看護師等確保基本指針検討部会)。1992年に制定された「看護師等の人材確保の促進に関する法律」に基づき指針は策定されたのだが、その策定以来のこと(30年以上ぶりのこと)で注目を集めた。もともとは当時の看護師不足に対する対応としてのもので、社会に対して看護師の確保を推進することが国民の保健医療の向上につながることをアピールするねらいのものともいえる。しかしながら、この約30年間を振り返ると、重症度、医療・看護必要度による看護配置基が設けられたり、在宅医療の推進、さらには介護保険法の成立もあった。直近では、新興感染症なども。そこで、今回の見直しに至ったということだ。今後は、6年に一度見直される医療計画などとも連動した定期的な見直しなど期待されるところ。診療報酬との関連性でいえば、基本的には、まだボリュームの厚い急性期入院医療の要件を厳格化しつつ、急性期の経験を積んだ看護師を回復期・慢性期・在宅/外来へと供給していく流れを後押しする構図だ。
なお、これまでの看護師確保等基本方針では6つの項目で構成されていたが、先の新興感染症や自然災害などへの対応に関する項目を新設し、7項目(①看護師等の就業動向、②看護師等の養成、③病院等に勤務する看護師等の処遇改善、④研修等による看護師等の資質向上、⑤看護師等の就業促進、⑥新興感染症や災害への対応に関わる係る看護師等の確保、⑦その他看護師等の確保促進)へと見直されている。見直しの内容としては、看護師の養成におけるハラスメント問題への対応、処遇改善、雇用管理者の責任、キャリアアップなどの文言が注目される。
診療報酬及び医療計画との関連では、特定行為研修修了者に関する議論も注目しておきたい。勤務医の負担軽減につながることから、その存在と役割に対する期待は膨らむ。第8次医療計画では、養成ではなく就業に関する目標値を設定していることに注目したい。診療報酬でも、急性期充実体制加算等の高度急性期領域の配置されるケースが増えてきている。今回の診療報酬改定でも、特定行為研修修了者を含む適切な研修を修了した看護師の配置を要件として求めている項目もいくつかある。
また、看護師確保等基本方針では負担軽減とも関連して、看護補助者の名称や業務内容についても検討されている。令和6年度診療報酬改定の議論では、度々看護補助者の確保が話題に上がっていたところで、短冊では点数の引上げと共に、直接患者の療養生活を世話する看護補助者(看護補助者として3年以上の勤務経験を有し適切な研修を修了した者)の配置など注目されている。なお、新設される「地域包括医療病棟」と「療養病棟入院基本料」では介護福祉士を直接患者の寮生活を世話する者として認められる。養成に時間をかけつつ、即戦力としての介護福祉士の採用をすすめるなどの対応が考えられる。