令和6年度は診療報酬の他にも、6年に一度の見直しとなる医療計画、医療費適正化計画も同時に見直される。ある意味、6年後に設定した目標を達成するべく診療報酬がその後押しするための項目も目白押しになっている。医療費適正化計画(後発医薬薬品、外来化学療法など)、看護師確保等基本指針、医療計画(周産期医療、新興感染症対策など)、精神保健福祉法などとの関連性を見ながら、今回の改定の意味などを確認してみたい。今回は、患者のための薬局ビジョンとの関連性について。
2035年までに患者の日常に超接近することを目指す「患者のための薬局ビジョン」
患者のための薬局ビジョンは、2015年に公表されたもの。2035年をゴールとして、立地を地域へ、という薬局がより患者の日常に物理的にも接近することを目標とし、薬剤師がかかりつけ機能を発揮できるようにすることとされている。そして、2025年はその中間ゴールとして、全ての薬局をかかりつけへ、といった目標を達成することとなっている(参照:改めて読み返し、基本姿勢に立ち返るための「患者のための薬局ビジョン」)。
立地も地域へ移行するその前に、薬局及び薬剤師にはかかりつけ機能を発揮するための準備を終えることとなっている。昨年12月に公表された改革工程表2023では、認定薬局の整備や調剤後薬剤管理指導加算の実績を伸ばすなどの目標値が設定され、令和6年度診療報酬改定と合わせて、急ピッチでの整備が展開される。
令和6年度診療報酬改定では、まさにかかりつけ機能を強化する見直しが目白押しとなった。来局する患者に対するかかりつけ機能と在宅患者に対するかかりつけ機能と分けてポイントを確認する。
まず目を引くのは、かかりつけ薬局としての機能を評価する地域支援体制加算の実績要件等の見直しだ。かかりつけ薬剤師指導料/かかりつけ薬剤師包括管理料が要件となったこと、緊急避妊薬を提供するための環境整備なども注目されるところ。下がり続ける調剤基本料をカバーするには、いわゆる対人業務であるかかりつけ機能への取り組みによる加算等をしっかり積み上げていくことが必要だ。
なお、本年10月からの後発医薬品のある長期収載品に関する説明に関する加算(特定薬剤指導管理加算3)が新設されている。これは、後発医薬品への切り替えはなくとも、説明することで評価されるものとなっている。
在宅のかかりつけ機能を評価する項目として、在宅薬学総合体制加算が新設されている。医科で言うところの、在宅時医学総合管理料のようなものとも言える。その他、終末期の患者に対する訪問上限回数の見直しなども注目される。2035年には立地も地域へ、と言うのが患者のための薬局ビジョンのゴールだが、オンライン服薬指導も含めて考えると、立地はそのままでも、薬剤師が地域にアクセスする機能を有することでもそのゴールを達成できてしまうのではないかとも思える。
ところで、意外な決着となったのが、敷地内薬局に対する評価だ。これまでの議論では、調剤基本料3・ハと同様に、グループ薬局全体の調剤基本料を一律に引き下げる可能性を示唆していたが(参照:敷地内薬局、診療報酬上でも厳しい見直し(処方箋料から処方料?)へ。高度急性期入院における医療安全対策加算1を要件化、訪問看護STの管理者の責務の明確化を。)、今回はそうはならなかった(引き続き検討することを明記。次回の改定に向けた、警告と捉えるのが賢明)。ただし、敷地内薬局は施設基準を提出しないAと施設基準は提出するBにわけられ、評価を見直すこととなった。また、かかりつけ機能に関する評価の算定に制限もある。なお、医療機関にとってみれば、敷地内薬局に処方箋が集中することで、処方箋料から処方料へと評価が引き下げられることともなり、今後の敷地内薬局のあり方には大きな路線変更が必要となる見直しとなったと言えるだろう。
地域への超接近が求められる薬局及び薬局薬剤師の評価だが、医療機関への接近求められるようになり、来局する患者だけがお客様ではなく、同業者・医療機関・介護保険事業者もお客様であるt強く意識し、役割を果たしていくための積極的な情報発信と周囲からの期待を知るためのコミュニケーションがまずは必要だろうと感じる。