令和7年6月27日、第147回社会保障審議会障害者部会が開催され、第6期障害福祉計画の成果目標の実績及び第7期障害福祉計画の成果目標について公表されている。障害福祉計画とは、国において基本指針を3年に1回見直し、見直しの翌年に都道府県・市町村で3年ごとにその計画を作成をしているもの。現行は令和5年度から第7期障害福祉計画に基づき実行中で、令和7年度中に国が第8期の基本指針を内示する予定だ。今回は、令和元年に国が指針を作成し、令和2年度から各都道府県で実行されたものの成果になる。


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第6期障害福祉計画の確認と「にも包括」の現在地

 第6期障害福祉計画の目標と成果指標を確認してみよう。ここでは、地域移行をキーワードとして、施設及び病院からの地域移行の目標と正確に焦点を当てて確認する。



 施設入所者の地域移行については、目標に対して結果は下回るが、着実に進展していることを確認できている。目標未達となった原因としては、施設入所者の重度化・高齢化、地域での受け皿となる環境整備が追い付いていないことなどが挙げられている。



 医療技術の進歩に伴い、従来では救えなかった命も救えるようになってきている一方で、医療依存度が高い状態や生活に支障をきたすような障害と共に生活をしていく方もいる。そして、障害をお持ちの方の親の高齢化もあり、いずれ残される本人は親がないままに生きていくことが求められる。私は、医療資源が限られた地域などによく足を運び、調査をすることがあるが、そうした地域ほど障害者施設の定員がいっぱいになっている。障害をお持ちの方の親が先をみて、入所をお願いしていることもある。地域移行もさることながら、今後重度者や医療依存度の高い方も増えてくることを考えると、入所施設や地域医療連携の充実も必要になると考える。令和6年度診療報酬改定では、障害者施設との連携に対する評価も打ち出されているが、その連携実績は少ないという実感がある。


参照:障害福祉に関する現状、医療機関との連携の視点
参照:障害をお持ちの方の入所施設待機問題への緩和策として、共生型サービスに期待する


 精神障害に対応した地域包括ケアシステム、いわゆる「にも包括」についての目標と成果について確認する。目標は以下のように3点設定されている。

・精神障害者の精神病床から退院後1年以内の地域における平均生活日数の平均:316日以上

・令和5年度末の精神病床における1年以上長期入院患者数:10.6~12.3万人

・入院後の退院率3か月(急性期):69%以上、6か月(回復期):86%以上、1年(慢性期):92%以上






 地域平均生活日数については、目標値を上回る地域が多かったことがわかる。そのため、第8期の計画では長くすることとなっている。一方で長期入院患者数と退院率については目標達成ができなかった。ただ、着実な数値の改善が進んでいるともいえる。やはり受け入れる地域や家族の理解も含めた受け皿整備が重要だといえる。令和6年度診療報酬改定で新設された精神科地域包括ケア病棟入院料や精神科入退院支援加算は低調ではあるが、退院調整や連携は受け皿整備と共に調整のためのノウハウも必要になってくる。今は、ノウハウをためる時期なのだと考えたい。


参照:精神科地域包括ケア病棟入院料、本年3月から4月にかけて減少


地域生活支援拠点の整備の進捗状況。やや遅れ気味

 一般の地域包括ケアシステムと精神障害のための地域包括ケアシステムこと「にも包括」の大きな違いといえば、前者のゴールが地域での看取りであるのに対して後者は障害と共に生活をしていく、ということだ。生活をする、ということは働き、収入を得ていく、ということもその一つだ。そこで、にも包括においては地域生活支援拠点の整備が重要となる。精神科地域包括ケア病棟や精神科入退院支援においても肝になるところ。



 第6期の計画に対しては、残念ながら目標は未達となっている。しかし、設置数は増加の傾向にある。課題としては、自治体のマンパワーにありそうだ。人口50万人の自治体での設置利率は90%を超えているが、人口1万人未満の自治体では59.4%という状況だ。広域連合のような形式での整備や国からの支援などの対応も必要になるだろう。



 現行の第7期障害福祉計画の成果目標について確認をしておきたい。これまでの実績を踏まえた数値目標になっていることもポイントだが、令和8年度診療報酬改定との整合性や新たな地域医療構想における整備計画との関連性を先読みして、対応を検討しておきたい。