障害をお持ちの方の入所施設への待機状況に関する調査を行う方針が決まったことをメディアが報じている。
入所施設など空きなく待機の障害者 10月にも実態調査へ 厚労省(NHK)
これまでも本ブログでは、障害者支援に関する話題は意識的に取り上げてきた。私は、地方都市、とりわけ医療資源が限られた地域での活動を多くしている(参照:障害福祉に関する現状、医療機関との連携の視点)が、そうした地域でここ最近強く感じているのが、障害者施設と医療の連携や入所待機問題だ。
あくまでも私の経験に基づくところだが、障害をお持ちの方の入所施設への待機問題が起きている理由としては、次の二つが考えられる。一つ目は医療技術の進歩だ。救えなかった命を救えるケースが増えてきている反面、重い障害と共に生きていかねばならないことにもなることがある。医療的ケア児に対する評価や入退院援加算に対する入院事前調整加算の新設など令和6年度診療報酬改定では評価が新設されるなど、医療機関側からの支援が届きやすくなってきているのはとても素晴らしいと思う。二つ目は、障害をお持ちの方の親の高齢化だ。親がいなくなった後を考え、入所先を探しているケースは多い。
一方で高齢者施設、特に介護老人保健施設の経営は厳しくなっている場面をよく目にするようになってきた(参照:地域包括医療病棟への転換、連携先となる介護老人保健施設・ナーシングホームの現状から考えるnext地域医療構想への対応)。地方都市では高齢者から人口減少が進んでいるため、稼働率を維持することが難しくなっている。こうした状況を目にしながら「共生型サービス」の可能性について考えることが増えてきた。
共生型サービスへの期待と普及を阻むもの
平成30(2018)年度の介護保険制度及び障害者総合支援制度で「共生型サービス」が新たに位置づけられた。共生型サービスとは、介護を必要とする高齢者と障害をお持ちの方に対して一体的にサービスを提供できるように、介護保険サービス事業者が障害福祉サービスを提供できるように、障害福祉サービス事業者が介護保険サービスを提供できるようにするもの。
例えば、障害福祉サービスを利用されている方が65歳以上となり介護保険サービスの利用が必要となった場合、従来利用してきた障害福祉サービス事業者が介護保険サービスを提供できる共生型障害福祉サービス事業となっていれば、従来通りの事業者が引き続きサービスを提供できることになる。今後増加するであろう高齢障害者への対応として有効だ。なお、提供できるのは訪問(ホームヘルプ)・通い(通所)・泊り(ショートステイ)に関するものとなる。
入所待機問題の緩和策につなげられる期待はあるとともに、今後利用者の減少も考えられる地域での新たな事業の選択肢の拡大につなげられる期待がある。しかしながら、共生型サービスは普及しているとは言い難い現状にある。考えられる原因としては、行政窓口の対応の問題が上げられる。介護保険と障害福祉と窓口が分かれ、事務手続きが煩雑になっている。そして、事業者側としては人材確保・育成の問題だ。介護と障害に対する支援はやはり異なるり、目的も異なる。それぞれの領域での専門性を高めることは日常業務の中では難しく、時間もかかる。とはいえ、今後共生型サービスの整備はとりわけ地方都市において、事業所の存続や人材確保と集約のためには必要だ。
改めて、共生型サービスを拡充していくための議論が期待される。