葛飾区の地域医療の今 ~令和6年度診療報酬改定後の施設基準情報から~

9/29/2024

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 弊社(HCナレッジ合同会社)は葛飾区高砂にあり、区内のSDGs活動に貢献するために「葛飾区SDGs宣言」をし(ゴール設定項目:3.すべての人に健康と福祉を、11.住み続けられるまちづくりを)、取組をしている。具体的には、区内で開催される健康増進や福祉に関するイベントの後援を通じた情報発信・啓発活動を行っている。その活動の一環として、毎年8月時点の施設基準情報等に基づき、区内の医療機関情報を整理し、公表している(かつしか地域医療研究所)。


今回は令和6年度診療報酬改定後の情報更新となる。あくまでも葛飾区内だけの情報になるが、情報更新をしながら気づいたこと、感じたことを以下に列挙する。

・外来感染対策向上加算の届出が大きく増えている。また、情報通信機器を用いた診療についても大きく増えている。義務とされているわけではないが、都道府県との医療措置協定では「新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間において、都道府県知事からの要請を受けて、外出自粛対象者に対してオンライン診療等の医療を提供する体制が整っていると認められること 」という指定要件があることが理由だと思われる。実際にオンライン診療を行っているかどうかはわからないが、オンライン診療が実施できる環境整備は間違いなく広がりつつある。


・ニコチン依存症管理料は微増。葛飾区では「禁煙外来治療費の助成事業」もあることが功を奏しているのかもしれない。なお、プログラム医療機器を利用した「プログラム医療機器等指導管理料」の届出は区内では1施設のみだった。

・機能強化加算がやや減少していた。令和4年度診療報酬改定では機能強化加算は実績要件の見直しがありやや減少したが、実績を満たしながらやや回復の基調にある。葛飾区では小児かかりつけ診療料(令和6年度診療報酬改定では、発達障害の疑いのある患者について、診療及び家族の相談に対応することや専門医に紹介することなどを要件に追加)と地域包括診療加算の届出(令和6年度診療報酬改定では、自治体の認知症に関する施策の協力実績が条件に加えられたり、介護支援専門員との相談の機会を設けることなどが要件に追加)が減少していることから、機能強化加算の減少につながったともいえる。


また今後気にしておきたいのは高齢化だ。かかりつけ医機能を発揮するということは、医師の負担も非常に重くなる。お年を召されていくことで徐々に負担感も重くなり、担当する患者数の限界点が下がってくる。近年、在支診や地域包括診療加算、小児かかりつけ診療料等では複数の医療機関との連携で算定ができる区分が増えてきているのは、医師の負担軽減策の一環であり、持続可能な地域医療を実現する環境整備でもある。診診連携等を進めていくことと、連携元・連携先双方が正当に評価される診療報酬が望まれる。


・薬局に目を向けてみると、地域支援体制加算の届出が大幅に減少している。令和6年度調剤報酬改定では、実績要件の見直しがあり求められる実績の回数が概ね減少した一方で、医療的ケア児を対象とする「小児特定加算」の実績要件が追加されている。


他にも緊急避妊薬の備蓄と体制の整備、48薬効群のOTCの取り扱い、後発医薬品の調剤割合70%以上(集中率85%以上の薬局の場合)なども新たに要件に追加されたのだが、点数は7点引き下げとなった。なお、医療DX推進体制整備加算と連携強化加算を算定することで7点のマイナスをカバーできる構造となっている。薬局におけるかかりつけ機能に関しては、量的拡大を終え、本格的な質的な拡大のフェーズにすでに入っているといえる。

以上はあくまでも東京都葛飾区の地域医療の現状を施設基準情報を整理し、考えられることをまとめてみたもの。建物や地図ばかりをみても変化はなにも感じ取れないが、施設基準情報等をみていくことで、地域医療の質の変化も見えてくる。地域におけるポジショニングと役割認識を確認しておきたい。

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