令和5年受療行動調査の結果から読み解く患者の傾向

9/23/2024

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 令和6年9月20日、厚生労働省より令和5(2023)年受療行動調査(概数)の概況が公表された。受療行動調査とは3年に一度行われる病院に対する満足度や受診・受療行動の傾向に関する調査。受診先をどうやって考えているのか、待ち時間はどうなっているかなど結果からポイントを確認してみよう。

インターネット情報を入手しての受診割合がやや上昇

外来・入院に当たって、事前に情報を収集しているかの質問だ。いずれにおいても、8割以上の患者が事前に情報収集をしており、家族や知人など親し人からのひ口コミが最も高い。外来では次いで多いのが、インターネット情報で約28%(入院は医療機関の窓口が2番目でインターネット情報は3番目)。なお、前回調査では外来についてはインターネット情報は約24%だった(入院で2番目に多かった医療機関の相談窓口も前回よりも上昇)。

インターネット情報といっても、医療情報ネット ナビイである可能性はかなり低く、医療機関のホームページや比較サイトなどと思われる。そこで気にしておきたいのは、ネット上の口コミ情報だろう。訴訟問題にもなっているが、医療は地域密着の装置産業なので、風評被害などは致命的だ。昨今のSNSによる拡散にも注意をするべく、患者に対しての接遇対応の在り方なども見直しておきたい。

待ち時間対策、最も気を付けておきたいのは...

予約と待ち時間についても調査されている。当然だが、予約をする患者割合が増えれば、待ち時間に対する不満は減る。


待ち時間について改めて考えてみると、医療機関に来てから待ち時間が始まるのではなく、受診しようと決めてからすでに待ち時間は始まっている、というように考える必要がある。最近は、予約システムやWeb問診システムもあり、家にいながら診療の一部がスタートしている。また、駐車場の空きであったり、公共交通機関の利用時間も待ち時間に組み入れて考えておきたい。病院にたどり着くまでにストレスがたまり、着いてからさらに待つことになると不満が高まる。また、待ち時間がどうしても長くなる場合は、意識的に声かけをしたり、飲み物の提供やお手洗いに関するお伺いなどの気遣いもあるとよい。

なお、待ち時間で最も注意したいのは、診療後から支払いまでの待ち時間だろう。受診するまでは患者だが、受診を終えて支払になると患者は消費者に代わる。すなわち、お金を払う立場となり、医師以外のスタッフへの対応となり、不満の表出が多くなりがちだ。待ち時間を短くしそもそも人を介在させない自動精算機の設置や、カード決済によるスピード対応なども検討しておきたい。

ところで、令和6年度診療報酬改定では生活習慣病管理料が見直され、療養指導計画書の作成と署名が必要となった。その結果、多くの医療機関では診療時間が伸びているといわれる。この療養指導計画書の署名については、医師が求める必要はないことになっているので、診療までの待ち時間を利用して職員による情報収集を行い(白衣を着て情報収集を行うと患者さんがやや緊張して待ち時間を短く感じることもある)医師に共有し、診察の際に療養指導計画書を作成し、会計の待ち時間を利用して署名をもらう、というように診療時間だけではなく、受診の一連の流れの中で療養指導計画書を作成する、という発想と対応を行うことで診療時間は効率化できる(参考:生活習慣病管理料への対応を改めて考える② ~併算定、主病名、療養指導計画書の運用、長期処方など~)。

外来機能分化は進展していることを確認

最初の受診については、診療所及び中小病院を経由してから大病院・特定機能病院へ、という流れが増えてきている。


令和7年度から施行されるかかりつけ医機能報告制度では、入退院支援の機能についても明確かされ、さらなら外来機能分化促進が期待されるところ。また、紹介受診重点医療機関の指定も増えており、診療所等でも専門性が高いところであれば指定を受けている。病院木の規模だけではなく、専門性での機能分化も今後は注視しておく必要があるだろう。

患者にとっての地域医療連携のメリットをわかりやすく

おそらくだが患者の立場になると、入院した病院で一連の治療を終えて退院する、というのが楽で負担も少ない。一方で医療従事者から見ると、治療後は状況に合わせて、専門性を発揮できる医療機関で診療を受けてもらうのが患者にとってもよく、病床稼働率の観点からもよいことになる。患者と医療従事者双方のメリットを共有することが連携を進めていく上では大事だと感じる。今回の調査結果からは、連携に対する患者側の考え方も変わってきていると感じる。入退院支援加算の影響もあり、地域医療連携室の設置や担当窓口も明確になってきていることが功を奏しているようにも感じる。地域医療構想など、どうしても行政や医療提供者側の論理で進められがちだが、何よりも重要なのは、患者・地域住民の理解と協力があってこそだ。


受療行動調査の結果から、医療提供者側の思いと患者・地域住民側のギャップはどれくらいあるかなどを確認し、医療機関個別でも対応できることを見出し、医療機関と地域のずれの発見・解消をしていくきっかけとしたい。

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