令和7年8月8日、第2回地域医療構想及び医療計画等に関する検討会が開催されている。新たな地域医療構想策定ガイドライン作成に向け、主に急性期拠点機能をどのように配置していくか、求められる要件をどうするか、といった議論と医療従事者の確保について議論されている。医療従事者の確保については、「医師養成課程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」での議論内容や第8次医療計画にある薬剤師確保対策や看護師確保対策の進捗状況などと情報共有をしながら進め、ガイドラインに反映していく方針だ。


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地域の実状に合わせた医療機関機能報告の考え方を更新。急性期拠点機能の配置数の目安が明示される

 第1回目の本検討会で、区域の人口規模を踏まえた医療機関機能報告の考え方が示されていたが、今回の検討会ではさらに内容を更新して明示されている。人口規模の目安と規模に応じた急性期拠点機能の配置数の目安が盛り込まれている。


参照:医療計画と新たな地域医療構想の整合性、地域の実情にあった医療機関機能の在り方のイメージが提示される






 人口100万人以上の大都市では急性期拠点機能は複数施設、人口50万人程度の地方都市では急性期拠点機能を1〜複数施設、人口30万人未満の人口の少ない地域では急性期拠点機能を1施設、といった具合だ。あくまでも目安であることに注意が必要だ。また、人口20万人未満の地域では急性期拠点機能の確保の有無を確認したうえで構想区域の設定を考えるとなっている。
 その他の機能では配置数の目安などは設定されていないが、大都市型の区域以外の高齢者救急・地域急性期機能についてみると、急性期拠点機能との連携が重視されている事がわかる。難易度の高い手術等については急性期拠点機能に送るイメージだ。

 構想区域ごとに医療機関機能を明確にしていくためには基礎となるデータ、医療機関そのものの機能や所有する医療機器や人材の把握が重要になる。そこで、今回の検討会では医療機関機能の判別に利用を考えている各種データ、考え方を整理している。





 急性期拠点機能についてみると、これまでもお伝えしてきた救急搬送の受け入れや手術等の実績に加えて、病床数・病床稼働率や築年数が盛り込まれているのがわかる。高度急性期医療には高額医薬品や多くの消耗品を利用する。また、手術室などの環境整備が必要になることから、ある程度の病床規模と80%程度の病床稼働率が維持できる環境が必要といえ、診療報酬においても集中的にそうした急性期拠点機能に集中的に財源を割き、地域医療を下支えすることが求められるところだ。









 ここで注目されるのは築年数だろう。病院の建設ラッシュは1985年の第一次医療計画改正で2次医療圏毎に基準病床数(当時は必要病床数と表現。現在の地域医療構想でいう必要病床数との違いに注意)が設定されたのが契機となって、駆け込み増床が起きた。病院の法定耐用年数は39年。1985年から39年後は2024年。現行の地域医療構想の当初設定されたゴールとほぼ符合する。また第4次医療法改正(2001年)で、一般病床の病床面積について患者1人当たり6.4平方メートル以上に引上げられている。この引上げへの対応は、建替えなどのタイミングで実施することとなっている。故に、多くの病院では病床数が減少する流れになっている。




 病床削減については、病床数適正化支援事業への応募が多くあったこと、骨太の方針2025に削減目標は明記されなかったものの、病床削減を速やかに進めていくことが盛り込まれたところ。病院の統廃合などは今後も進む中で、地域の貴重な医療資源である病床をどのように有効に活用していくかは注目される。また同時に、今回の検討会でも話題に上がっているが、急性期拠点機能に限らず建替費用の支援も課題になってくる。令和8年度診療報酬改定は、地域の実情にあった機能・体制となっているかが鍵となると考えられ、医業収入にも影響してくることになる。また、補助金等の支援の可能性もあるが、その場合においても地域医療構想との整合性などを鑑みて決定されることは容易に考えられる。自院の都合だけではなく、地域の都合を意識した経営がより求められる時代となる。


参照:病床数適正化支援事業の第一次内示、支給条件の厳格化で都道府県の今後の対応に注目が集まる


参照:医療政策ニュースのつぶやき(第二次内示について)


 医療機関機能では、在宅医療等連携機能も設定される。今回の検討会では、在宅医療に関する診療報酬・医療計画・医療機関機能の整合性、そしてどういった役割を地域ごとに求めていくかについても議論されている。




 在宅医療において積極的役割を担う医療機関や高齢者施設等の協力医療機関となることや、協力状況を地域の医療機関、高齢者施設、消防などとの間で共有することを求めること、地域において在宅医療の提供が少ない場合は、訪問看護ステーションを有する等、常時在宅医療や訪問看護を提供すること等を役割として求めていくことが検討されることとなりそうだ。

 令和8年度診療報酬改定における急性期医療の評価の方向性も合わせて確認しながら、現時点での自院の地域におけるポジショニングを確認し、周囲の変化に注意を払いながら、環境にあわせて求められる変化について気づきを得られるように意識したい。