骨太の方針2026の議論、その現在地
例年通りであれば、経済財政政策の基本方針を示す骨太の方針は6月に閣議決定されるところだが、今回は7月以降になる見通しだ。給付付き税額控除や食料品の消費税率に関する議論を行う社会保障国民会議で夏前に中間とりまとめを行うこととなっていることが影響の一つだと考えられる。骨太の方針では、歳出を社会保障の高齢化要因の範囲内に抑えることになっているなど、社会保障政策の動向は大きな影響を与えるものとなっている。
遅れている骨太の方針2026だが、社会保障・医療分野に焦点に関する議論の現状について整理しておきたい。
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骨太の方針2026、5つの基本原則
骨太の方針2026を巡る本格的な議論は、本年4月13日に開催されている第4回経済財政諮問会議(内閣府)から始まっている。その会議では、骨太の方針2026に関する5つの基本原則が提案されている。
5つの基本原則
・財政運営の中核目標として、債務残高対GDP比の安定的な低下を目指す
・物価・賃金を的確に反映しつつ、経済の成長力強化と名目の経済規模の拡大にふさわしい予算編成に転換
・危機管理投資・成長投資のための「新たな投資枠」を創設
・補正依存から脱却し、恒常的な施策は当初予算に計上
・不確実性に備えるとともに、コミュニケーションの強化を通じて市場の信認を確保
現政権を語る時によくでてくる「積極財政」の実現に向けた考え方が盛り込まれていると言える。
これまでの骨太の方針は、先述の通り、歳出を社会保障における高齢化要因に抑えてきたのだが、その結果として急激な物価高等のインフレへの対応が遅れたといえる。ただその一方で、納税に当たっての税率区分や控除基準額などがかわらなかったため、納税に関する実質負担が増え、財政収支は改善してきた。その結果として、賃上げが進んでも実質賃金はマイナスの状態が続き、実体経済に影響が出てきたと考えられる。細かな減税等はあったが、社会保険料がその効果を希薄化したということもあった。そこで骨太の方針2026では、歳出をインフレ率に応じて増やす方針に転換し、社会保障費の抑制は継続しつつ、危機管理と成長投資(積極財政)を拡大していく、というものを志向しているように見える。
今後、さらに詳細の議論が詰められ、予算の考え方などが見えてくることになるが、個人的に注視したいポイントは、予算と補正予算のバランスをどのように考えるかだ。これまでは歳出を抑えてこんだきたこともあって、厳しい予算編成となってきていたものの、補正予算で大盤振る舞いをしてきたともいえる。すなわち、厳格な予算と緩い補正予算となってきた。直近でも巨額な補正予算が成立している。物価高などへの必要な緊急対応の側面もあることだが、こうした公的な支援策頼みの経営が当たり前になることには懸念もあり、何よりも財政負担が発生する。骨太の方針2026は、積極財政を織り込んだ緩やかな予算、緊急対応を原則に据えた厳格な補正予算、といった考え方といえ、その姿がどうなるかを見守っていきたい。特に、積極財政が成長戦略に則ったものになっているかどうか、そして、2年に一度公定価格が見直される診療報酬への対応も。
持続可能な社会保障制度の構築に向けて
令和8年5月22日に第7回経済財政諮問会議にて、社会保障・医療分野に関する議論が行われている。そこでは厚生労働大臣より、持続可能な社会保障制度の構築に向けて、と題されたテーマと3つの取組方針が示されている。
まず1つ目は、社会保障の担い手確保について。人口減少に伴い、患者も減少するが、働き手も同じく減少していく。そうした中で新たな地域医療構想を着実に推進し、役割分担明確化・連携・再編・集約化を実施していくことを目指すこととされている。
物価高・賃上げへの対応として、令和9年度予算編成において加減算を含めた必要な対応を行う、と記載されていることに注目をしたい。令和8年度診療報酬改定では、物価対応量やベースアップ評価料の拡充が図られたものの、告示以降は戦争の影響もあり、せっかくの診療報酬での対応も帳消しになりかねない状況になっている。加算だけではなく、減算も行われる可能性があることから、単に増える、というわけではなく、付け替えに伴う経営努力が求められる可能性もありうることを意識しておきたい。
2つ目は、攻めの予防医療だ。とりわけ脚光を浴びているのが、働く女性を主な対象に据えた女性の健康課題の解決だろう。
これからの高齢社会、労働力確保の観点からは、治療と就労の両立支援が重要になるとともに、健診の推進に向けて健康意識を高めるための取り組みが並んでいる。栄養・食生活の項目が横断的に扱われている点にも注目するとともに、診療報酬・介護報酬でもさらなる栄養食事指導に関する評価の拡充に期待が集まる。
3つ目は、社会保障改革の着実な実行だ。健康保険法改正に伴うOTC類似薬の保険適用除外など。また、連立政権合意書の検討も盛り込まれている。
世代間格差を是正することを目的とした高齢者の医療費負担割合の見直し(段階的に3割負担へ)は大きく注目を集めている。なお、先述の健康保険法改正では、高齢者の金融所得を踏まえた保険料率の見直しについても盛り込まれている。早ければ、5年後からにも保険料率の見直しがはじめられ、さらに高額療養費の見直しが今後も断続的にあると考えられるので、外来受診頻度は減少していくことが考えられる。給付と負担の改革努力で制度の持続可能性を進める、ということだ。
参照:令和8年特別国会で審議される健康保険法等改正、外来受診頻度は5年後あたりから減少していくことも。医療分野の生産性向上補助金についても確認
なお、連立政権合意書では、医療機関の収益構造の増強や営利事業の在り方についても明記されている。また、新たな地域医療構想推進するための首長の権限強化や保険者機能の強化など、骨太の方針への提言となる財務省の春の建議と考えが近いものも目立つ。
参照:骨太の方針2026に向けた春の建議の議論、生産性向上に向けた仕組み作りと新たな地域医療構想の着実な推進が柱
参照:春の建議に向けての続きの議論。医療機関の窓口業務費用を保険外にすることや医療法人の業務範囲拡大を提案へ
骨太の方針2026は、積極財政をキーワードにこれまでと異なる考え方で構成されることになる。ただ、社会保障・医療分野については課題は大きく変わらず、社会保障費の抑制は図られると共に、世代間格差の是正策が盛り込まれ、結果としての高齢患者の受診抑制もしくは受診頻度の減少につながることになる可能性がある。そういった世の中になるだろうことを見据え、地域の中でどういった役割を発揮していくべきか、新たに何に取組むべきかを考えるきっかけにしたい。