春の建議に向けての続きの議論。医療機関の窓口業務費用を保険外にすることや医療法人の業務範囲拡大を提案へ
令和8年4月28日、財政制度分科会が開催された。前回の財政審でも社会保障について議論されていたが、今回はその各論のようになっている。
参照:骨太の方針2026に向けた春の建議の議論、生産性向上に向けた仕組み作りと新たな地域医療構想の着実な推進が柱
やはり骨太の方針に対する財務省からの提案は今回は多かった。ただ、令和8年度診療報酬改定にて都市部等での医療資源の追加投入にディスインセンティブを与えるなどの取組(門前薬局等立地依存減算、外来医師過多区域における都道府県の妖精に応じない開業に対する加算の制限など)が盛り込まれたこともあり、医療機関経営に関することはやや控えめで、患者負担や保険者に関する見直しが多くなっているのが特徴だと言える。
医療提供体制に関するもの、患者負担に関するもの、保険者に対するものと3つのカテゴリで内容を確認していこう。
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医療提供体制に関する提案
引き続き地域医療構想の推進を厳格に進めていくことが今回の提案に盛り込まれている。とりわけ、外来医療の機能分化、慢性疾患患者に対するかかりつけ医の明確化と継続受診率を高めると医療費適正化の観点を目的のとした外来診療報酬の包括化を提案している。
また、病状が安定している患者に対するリフィル処方・長期処方の推進についても改めて盛り込まれ、さらなる推進を求めていることがわかる。リフィル処方・長期処方については、先日目標設定がなされたところ。今後の具体的な推進策に注目が集まる。
参照:「リフィル処方・長期処方を2030年度までに95%以上の医師が発行したことがある」とする目標に基づく政策ダッシュボードの更新が報告される
地域医療提供体制の整備の観点としては、引き続き地域医療連携推進法人の利活用の促進、医療情報基盤となる医療DXのさらなる推進を提案している。
地域医療連携推進法人の推進については、厚生労働省からの情報発信の質と量を高めることを提案している。ただ。個人的には無理に地域医療連携推進法人としなくても、一般社団法人でもよいのではないかと感じている。連携法人となることで、地域医療構想の議論においては病床融通などで有利になるかもしれないが、実務面においては薬局などの営利企業の参画ができないなどの制約も多い。病床融通や経営状況に課題がある医療機関が多い場合には地域医療連携推進法人を進める、ということでも良いのではないかと感じる。また、地域によっては高齢者・障害者福祉の課題のほうが優先的に解決すべき事となっている地域もある。そうした場合は、社会福祉連携推進法人を選択するということもあるだろう。
医療DXについては、令和8年1-2月を目標に電子カルテ情報共有サービスがリリースされることとなる。今後のポイントは、医療機関側による電子カルテ情報共有サービスへの参画もさることながら、患者側によるマイナポータルを利用した患者サマリー機能の利活用や電子処方箋及び電子処方管理サービスを活用したリフィル処方箋の管理などだろう。患者に対する医療DXのメリットを伝え、利活用してもらうことが古くから言われている「患者参画型医療」ということだろう。
また、医療機関においてはAIサービスを始めとする医療ICT機器の利用促進も重要なテーマになる。補助金なども今後引き続き出てくることが考えられるので、厚生労働省のホームページやJ-net21などを定期的に確認しておきたい。
参照:令和8年特別国会で審議される健康保険法等改正、外来受診頻度は5年後あたりから減少していくことも。医療分野の生産性向上補助金についても確認
参照:補助金・助成金に関する基本知識と求められる生産性向上の観点
薬局についても提案がある。令和8年度調剤報酬改定では、門前薬局等立地依存減算が新設されるなど、医療資源が充足している地域での総量規制のような考え方が取り入れられ、地域医療格差の是正に診療報酬・調剤報酬が活用される色合いが濃くなったところ。今回の財政審においては、都市部での新規開設に対するさらなる厳しい条件を設けること、業界構造を変えるような薬局の総量規制の導入を提案している。
今後の薬局経営は、同一地域の複数出店から1店舗への集約化・大規模を志向し、薬剤師によるフォローアップの量を競う方向になっていきそうだ。
医療機関の経営に関しては、医療法人の業務拡大についても提案されている。今後、医療機関の経営統合や廃業は増えていく一方で、高齢患者も増加していくことから、医療法人の経営基盤を強化するためにも業務範囲拡大は必要との考えだ。
ただ、非営利性を担保していく必要もあるため、経営状況のの可視化も合わせて必要となる。
職種別給与の公開なども引き続き求めており、働き手側が職場選びの選択に使えるようにすることで、処遇改善の推進と業務効率化への取組を後押ししたい考えだ。「医療法人の経営情報のデータベース」(MCDB)」での公表レベル/公表項目数に応じて業務範囲の拡大レベルを調整することなども考えられなくはない。そうした見直しがある可能性を意識して、公表することを前提とした職場対応はもはや必須のようにも感じる。
患者負担の見直しに関する提案
現役世代と高齢世代の格差是正が選挙の争点になるなど、現役世代の社会保険料負担軽減、雇用延長などの推進もあり働き続ける高齢者が増えていることに合わせた施策が注目を集めている。今回の提案でも「選定療養の拡大/保険給付範囲の縮小」と「高額医療費に関する自己負担割合の見直し」が取り上げられている。
「選定療養の拡大/保険給付範囲の縮小」については、医療機関の窓口業務は診療行為ではないものの基本診療料に包括されて評価されていると考えられていることに着目して、窓口業務を保険給付外にすることを検討することを提案している。オンライン診療ではアプリの利用料は自費になっていることなどを引き合いにしている。
ホテルなどでもDX化が進み、受付、精算などが自動化されているのは珍しくない。一般企業の総合受付などもそうだ。窓口業務を保険給付外とすることは、医療DXの推進とともに固定費の軽減化につながることも期待される。
人口減少がすすみ、働き手も減っていくこと今後のことを考えると、より生産性向上に貢献できる部署に適応できる人材育成を医療機関でも対応していくことが必要になる。また、さらなる変動費化(委託や派遣)にも取り組み、必要最低限の人員配置で対応していくことも必要になってくるだろう。
患者負担の観点では、特定疾病制度についても提案が行われている。特定疾病制度とは、著しく高額な治療をほぼ一生にわたって必要とする疾病(慢性腎不全・人工透析、血友病A・B、血液製剤に起因するHIV感染症)にかかった患者について、自己負担限度額を通常の場合より引き下げ、1万円(人工透析患者の場合、標準報酬月額53万円以上の所得を有する70歳未満の患者は2万円)とすることにより、医療費の自己負担の軽減を図る特例だ。
今回、人工透析患者が特例成立時よりも大きく増えていることと他の疾患患者との負担の公平性の観点から、自己負担上限額を見直す、要するに自己負担上限額を引き上げることが提案された。
人工透析については、糖尿病腎重症化予防対策などの効果もあり新規導入患者数はピークを超えたように見える。その一方で技術や機器の進歩もあり、長期間に合わたって人工透析を続けるができるようになった。社会全体での生産性を考えると自己負担上限の設定もさることながら、勤労世代と高齢世代で対応を変えることや、特定健診・特定保健指導を受けているかどうかなどを鑑みた上で対応を考えることも必要になるでのはないだろうか。
そして、後期高齢者の保険料負担と窓口負担について見直すことが提案されている。窓口負担を原則3割負担とすることを具体的に提案している。
令和8年特別国会で健康保険法等改正に関する審議は衆議院を通過し、成立する見通しとなっているが、今後後期高齢者の金融所得も考慮した保険料率の設定が5年後を目処にできる用になる見通しだ。
参照:令和8年特別国会で審議される健康保険法等改正、外来受診頻度は5年後あたりから減少していくことも。医療分野の生産性向上補助金についても確認
今回の提案は、金融所得を踏まえることと合わせて、現役世代からの支援金と保険料のバランスを図っていくことの必要性が訴えられている。そして、同じく現役世代の負担軽減を主たるねらいとして後期高齢者も原則3割負担とすること、高額療養費における外来特例の廃止を提案している。持続可能な社会保障制度を財源の面から考えると確かに必要なことだと思えるが、一方で、高齢になっても雇用の機会を提供できる社会の仕組み、治療をしながら働いて収入を得続ける事ができる社会の仕組みを同時に作っていくことが必要に思う。自己負担割合を変えるのであれば、治療費とは別に社会生活が営める収入や支援金を確保できる環境を構築していくことが重要だ。
保険者機能に関する提案
医療費の審査・支払いなどの他に保険者に期待される役割として、医療費抑制に向けた取り組みがある。主に医療費適正化計画の中で保険者には様々な取り組みが期待されていることがKPIを通じてわかる。
各論になるが、保険者に対しての機能を発揮するための取り組みとして、国保の保険者努力支援制度の廃止も含めて在り方を抜本的に見直すこと、高額医療費負担金(国保では1件あたり90万円超のレセプトを対象に、国・都道府県がそれぞれ所定の割合を負担するもの)についても今後保険料率が統一される方向にあることから財政基盤の弱い個別の市町村国保を救済する事自体が不要となると考えられることを見据えて廃止を含めて検討(後期高齢者医療制度の場合は現状では広域連合になっていることもあり、逆に高額レセプトの基準を引き上げていくことを提案。合わせて、後期高齢者医療制度についてはその保険者機能を発揮するために、運営主体を都道府県とすることも提案)することなどが提案されている。
令和8年度診療報酬改定において、新規開業・開設に一定の歯止めをかける項目が新設されたこともあり、医療提供体制に関する提案についてはしばらく様子見のようにみえる。その一方で、世代間格差が政治問題化していることもあり、保険給付の範囲の縮小と保険者機能の在り方の見直しを通じて、直接的に患者の負担に影響を及ぼすような内容が多くなっている。通院すること・入院すること自体が難しい時代に入っていくことを感じるとともに、セルフメディケーションや予防に対する医療機関・薬局における収益性のある事業としての取り組みも考えていくことが必要になると感じる。














