令和8年特別国会で審議される健康保険法等改正、外来受診頻度は5年後あたりから減少していくことも。医療分野の生産性向上補助金についても確認
令和8年1月23日に招集された通常国会は、冒頭解散となり、そのまま選挙に突入した。その後、2月18日に特別国会が招集され内閣総理大臣が選出・指名された。本来は予算・法律案等については通常国会で審議されるものだが、こうした政治状況に伴い、特別国会を通常国会と同じように150日間開催し、予算・法律案について議論することとなっている。
今回の特別国会では、健康保険法等に関する法律案が審議される。OTC類似薬、高額療養費といった患者負担に関するもの、医療DXの推進といった医療機関における働き方改革のさらなる推進に関するものについて審議される。
参照:第221回国会(令和8年特別会)提出法案(厚生労働省)
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一部保険外療養=OTC類似薬の一部保険適用除外は令和9年3月より。OTC類似薬の長期使用が医療上の必要がある場合は医師の判断で配慮することを検討
社会的にも話題になっているOTC類似薬の一部保険適用除外について、令和9年度からの開始とすることを審議する。なお、患者の負担は薬剤料の1/4となることは決まっており、選定療養となるため消費税が別途発生する。 今後、対象となる医薬品の範囲など明確化される見通しだ。なお、がんや難病を有する患者といった配慮が必要な場合、医師が対象となるOTC類似薬の長期使用が医療上必要と考える患者の場合などでは一定の配慮をすることとなりそうだが、その具体的な内容についてはこれからの議論となる。
後期高齢者医療制度の見直し。金融所得に応じた負担へ
後期高齢者医療制度において、負担の公平性を高めるため、保険料の算定・窓口負担割合等の判定に金融所得(上場株式の配当等)をより適切に反映させるための措置が講じられる。具体的には、法定調書を保険者(後期高齢者医療広域連合)へオンライン提出する義務を課すというもの。
1.公布後、2-3年間は法定調書の電子申請のためのシステム構築をする。
2.システム構築ができる見通しの公布2年後(最短)に法定調書の電子申請の義務化開始
3.法定調書の電子申請義務化から1年8ヶ月後に保険料・窓口負担割合が必要に合わせて変更
高額療養費、考慮事項を明確化を明記へ
本年8月、そして令和9年にも段階的な高額療養費における患者自己負担に関する区分の細分化と自己負担上限額の見直しが行われる。
高額療養費については、治療と仕事の両立支援への取組が進み、一定の収入を得ながら働ける環境が整備されていくことに合わせ、今後も自己負担上限額は引き上げられていくことが考えられる。
参照:治療と就業の両立支援ガイドラインを指針に格上げ。令和8年度診療報酬改定で、療養・就労両立支援指導料やかかりつけ医機能に関する評価にも注目を
参照:療養・就労両立支援指導料の対象を拡充へ。オンライン診療を適正に推進するための見直し、そして短期滞在手術等基本料3の対象となっている手術等を入院で実施した場合の評価の引き下げを検討へ
しかしながら、誰もが働きながら治療を受け続けられるわけではなく、一定の配慮が必要とされる方もいることを忘れてはならない。そこで、今後も行われるであろう自己負担上限額の設定において、長期療養者の家計への影響を考慮することを明確にする。具体的には、多数回該当においての配慮となることが想定されるだろう。
受診頻度が減少する時代に向けた備えを今から
後期高齢者医療制度の見直しによる実際の患者負担増は5年後からとなりそうだ。また、高額療養費制度は断続に見直されることが想定され、外来特例にも影響が出る。そして、直近ではOTC類似薬の保険外適用も始まり、保険給付の範囲は徐々に狭まってくる。
結果、考えられるのは外来受診の頻度を下げ、1受診あたりの医療費が高くなる、ということだ。令和8年度診療報酬改定では、長期処方・リフィル処方の環境整備を目的とした見直しが目立っている。5年後を見据え、既存の患者の年齢や疾病などの情報を整理し、どれくらいの患者が長期処方・リフィル処方に移行するかなどを確認することから備えをしておくことが必要だろう。
参照:受診頻度・減/長期処方及びリフィル処方・増の時代に向けた慢性疾患患者のかかりつけ医機能の整備
参照:受診頻度・減/長期処方及びリフィル処方・増の時代に向けたかかりつけ薬局の整備
医療機関における業務効率化の推進を明記。医療分野の生産性向上補助金についても確認を
医療法上、医療機関の管理者は医療従事者の勤務環境の改善その他の医療従事者の確保に取り組む措置を講ずるよう努めることとなっている。今回の改正案では、業務効率化にも取り組むよう努める旨を明確化する。また、健保法上の保険医療機関の責務として、業務効率化・勤務環境改善に取り組むよう努める旨も明確化する。
業務効率化への取組を推進するべく、積極的にICT機器等を導入するなど業務効率化に取り組む病院に対して、新たな認定制度を設けるなど行う予定となっている、人材採用・確保の面でメリットが出てくることになるだろう。
なお、令和7年度補正予算における医療分野の生産性向上に対する支援は、本年5月から申請受付が始まり、7月以降に選定結果が出る。令和8年度中に生じる経費の4/5をが補助されるが、3年後に報告する事業計画の結果を報告し、成果が認められない場合、補助金の返還が求められ場合も有り得る点に注意したい。なお、ベースアップ評価料を届出していることが必須となる。
参照:医療分野における業務効率化・職場環境改善支援事業について
出産育児一時金の見直しと妊婦健診に関する「見える化」促進
出産に関する給付が、現行の「出産育児一時金」から、医療保険による現物給付を中心とした以下の体型に再編する見直しを審議する。
1.標準的な費用を勘案して保険診療以外の分娩の基本単価を設定し、保険者から施設に直接
支給(現物給付化)し、妊婦に負担が生じないようにする
2.保険診療の一部負担金など出産時の費用負担の軽減を図るため、
全ての妊婦に定額の現金給付を行う
3.施設の選択により、当分の間、施設単位で現行制度(出産育児一時金)の適用を受けることも可能とする
また、妊婦健診の自己負担額や自治体毎に補助にも差があることから、妊婦健診に関する内容・費用などの情報を見える化して、適切な選択を支援するための環境整備についても盛り込む。
その他、今回の審議では国民健康保険制度改革として子育て世代の保険料負担の軽減、協会けんぽにおけるきめ細かい予防・健康づくりの実施を明記することなどが盛り込まれている。施行時期については、以下の通りだ。
患者負担に直接的に影響する見直しとなり、特に病状が安定している高齢患者にとっては、5年後あたりから受診頻度やOTC類似薬等で影響を実感することになると考えられる。受診先となる医療機関においても、患者数が減少していく時代にあったマネジメントを思考するとともに、スタッフの負担軽減・業務効率化を推進し、人口減少に伴う新規採用が難しくなる時代を見据えた医療DXへのチャレンジを続けていくことが重要なテーマになるだろう。






