骨太の方針2026より、医療分野に着目 ~地域住民の健康増進に資する薬局機能・薬剤師の役割強化を、社会保障改革工程表を今年度末までに~
令和8年7月21日、例年よりも約1か月おくれて経済財政運営と改革の基本方針2026(骨太の方針2026)が閣議決定された。個人的に驚いたのが副題に「!(ビックリマーク)」が入っていること。なかなか公文書ではお目にかかれない。
全体的な印象としては、伸びる(であろう)事業分野への積極的な投資を通じて成長し続けることを目指す内容になっている。明るい未来を感じさせてくれる一方で目先の物価高対策への対応と食料品消費税減税がまだ決まっていないこと、外国人施策に対する厳しい姿勢など気になる点も多々ある。また、以前お伝えしたように、補正予算を押さえるべく、予算に柔軟性を持たせる点も注目点だといえる。
ここでは、医療分野に焦点を当ててポイントを確認していきたい。
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基本的な考え方~「給付と負担の見直し」「医療提供体制の確保」「攻めの予防医療」~
第1章「マクロ経済運営の考え方」に医療を含む社会保障の考え方と対応方針が示されている。ポイントは3つ。「給付と負担の見直し」「医療提供体制の確保」「攻めの予防医療」だ。
給付と負担の見直しについては、現役世代の保険料率の上昇を抑える目的の一つとして、今年度の特別国会で成立している健康保険法改正において後期高齢者の金融所得を保険料率及び窓口負担に反映して設定ることが決まっている。早ければ5年後からとなる。これを着実に推進していくということでもある。また、高齢者の窓口負担を原則3割とすることも折を見て検討していくことになるだろう。
参照:令和8年特別国会で審議される健康保険法等改正、外来受診頻度は5年後あたりから減少していくことも。医療分野の生産性向上補助金についても確認
医療提供体制の確保については、新たな地域医療構想の推進とDXの利活用による医療従事者の負担軽減も合わせて考えておくことになる。こちらも、先の健康保険法改正の中で医療機関による業務効率化への取組を責務とすること、また厚生労働省による業務効率化に積極的に取組む医療機関を認定する制度も始まる予定だ。
攻めの予防医療については、本年5月に取りまとめが行われている。女性の健康課題への対応、プレコンセプションケアの推進、企業及び保険者とのコラボヘルスの3点だ。注目したいのは、プレコンセプションケア。学校や職場を通じた健康指導であり、若いカップルに向けた出産・育児を含めた指導などの環境作り。
参照:攻めの予防医療に向けた性差に由来するヘルスケアに関する副大臣等会議
参照:医療政策ニュース解説ラジオ 新春特別企画
そして、政権与党による連立政権合意書にある13の社会保障改革項目について、着実に実行していくことが明記されている。保険と給付の見直し、医療費適正化の色合いが強い内容で、積極的な投資を前面に出す骨太の方針2026の中にあって、従来の流れを受けて、適正化できる個所については引き続き適正化が推進されていく方針は変わらず、むしろ、現役世代の負担軽減の観点から、高齢世代にとってはやや厳しくなる場面も出てくる。結果として、長期処方やOTC類似薬の積極的な利用を促すことになるだろう。
社会情勢に機動的に対応するためのDXによる環境整備と経営情報の見える化
法律で決まっているわけではないが、慣習的に2年に1度診療報酬改定が行われている。しかし、薬価については毎年改定となっていて、奇数年は中間年改定と呼ばれ、点数など限定的に見直され、偶数年は本改定と呼ばれ、従来の改定となっている。医科歯科調剤等についても、経済情勢に機動的に対応できるようにDX化や経営情報の見える化を推進していこうとしているように見える内容だ。
なお、令和8年度診療報酬改定では令和9年度に物価対応料等を2場にすることが決まっているが、今回の骨太の方針からわかるのは、情勢によってはさらに引き上げる可能性も、引き下げる可能性もあるということだ。
新たな地域医療構想では外来/在宅・介護・精神も含めて策定することになるため、地域全体での総合力が求められることになる。特に重要なのが、今後増えてくる慢性疾患を有する高齢患者に対するするかかりつけ医機能、そして医療技術・画期的な医薬品等の登場で通院治療が可能となる患者に対応する専門医療機関機能だろう。
かかりつけ医機能報告の情報をもとに、これから各地ではじまる外来医療の協議の場での議論、そして公表される情報に注目が集まる。
医療費適正化の観点
先に取り上げた連立政権合意書にある13の社会保障改革項目を踏まえた改革工程表がどういったものとなるかに注目が集まる。今回の骨太の方針は、まだ確定事項や詳細は少なく、やや抽象的でスローガンのようになっているのも特徴だといえる。
また、骨太の方針の従来からの流れを受けて、バイオ後続品の使用促進や地域フォーミュラリの全国展開が今回盛り込まれている。バイオ後続品の使用促進については、先行バイオ医薬品を選定療養に加えていくことなど考えられるだろう。
地域フォーミュラリの全国展開については、すでに厚生労働省からまずは都道府県単位での議論の場と候補地域での検討を進めることについて通知が発出されているところ。さらに、保険者努力支援制度において、地域フォーミュラリ国保が策定の会議に参画することが評価につながるようになった。
今後、各地で地域フォーミュラリの策定に向けた協議の場が立ち上がってくることになるだろう。
長期処方・リフィル処方についても明記されている。すでに4月に公表されているKPIを着実に前へ進めていくものとだろう。
医療DX、安全性を確保しながら前へ
今夏にも明らかにされる予定の今後の電子カルテ/情報共有サービスの普及促進計画を待って、具体的な活動が始まる予定だ。また、令和9年度からリリースされる標準型電子カルテ/標準仕様の電子カルテについても今後より詳細な情報が出てくることだろう。
サイバーセキュリティ対策を着実に実施していく上で、クラウド化は重要だ。コストはかかるが、オンプレと比べると対策レベルは高くなる。既存導入施設のクラウド化への移行促進もサイバーセキュリティ対策の上では重要だ。すでに、地域医療情報連携ネットワークや今後始まる電子カルテ情報共有サービスで患者情報をはじめ、すべてがつながり、情報を入手しやすくなりつつある。サイバーせきゅりてい対策は、自院だけのことではなく、つながる他の医療機関、地域全体にも影響を及ぼすものとなっている。
参照:医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第7.0版と医療機関・薬局におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト(令和8年6月版)が公表される
地域住民の健康増進に資する薬局・薬剤師、を原案以降に追加
攻めの予防医療は、現政権の肝いりともいえる取組だといえる。特に、女性の健康課題への対応については、勤労世代が減少していくことを考えると、女性の積極的な労働参加は重要になってくる。安心して働き続けられるように器質性疾患への対応もさることながら、プ入れコンセプションケアといったカップルで今後の人生設計を考える時間と場を作っていくことも重要だ。
また、骨太の方針の原案段階になかった、地域住民の健康増進に資する薬局機能及び薬剤師の果たす役割の強化、という文言は目を引く。地域住民にとってのヘルスケアステーションとしての機能を果たすべく、対人業務の時間を確保していくレギュレーションと収益構造を作っていくことが今後の薬局には求められているといえる。
骨太ではあるかもしれないが、その周りの肉がまだついていない。今後どういった議論が行われ、KPIが設定されていくのかを注目し続けておきたい。